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「たった5mm」で180万円もの想定外のコストが発生する場合も。新車の購入時、機械式駐車場でよくある“盲点”

  • 2026.1.23
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

クルマの購入を検討する際、車種や価格選びの陰で、意外なほど見落とされがちな重大な要素をご存じでしょうか。それは、購入したクルマを保管する場所、すなわち駐車場の現実です。

日本の駐車場事情と検討しているクルマのサイズとのギャップにより、契約直前に「入らない」と判明したり、納車後に「窮屈すぎて停められない」と痛感したりするトラブルに直面してしまうことがあるのです。

本記事では、クルマ選びの満足度を左右する最大の盲点である駐車環境とコストの関係について、専門家の視点から紐解いていきます。

駐車場で詰む人が続出?クルマは置く場所で9割決まるという現実

新しいクルマを手に入れる瞬間。それは、いくつになっても胸が高鳴る特別なイベントではないでしょうか。

週末のアウトドアや、都心へのドライブデート。広がる妄想は尽きませんが、契約書にサインをするその前に、少しだけ冷静になって確認していただきたいことがあります。それは、愛車が帰るべき場所、つまり駐車場の環境についてです。

まさか、自宅や契約済みの駐車場に入らないわけがない。そう思われるのも無理はありません。しかし、そのほんの少しの油断こそが、後のカーライフを窮屈にしてしまう最大の要因になり得るのです。カタログのスペック表には載っていない、しかし所有するうえで避けては通れない切実な問題について、ここから具体的な事例を交えて見ていきましょう。

たった5mmで月3万円の増額?駐車場難民の金銭的リアル

まず目を向けたいのが、駐車場事情が家計に与えるダイレクトな影響です。特にマンションにお住まいの方にとって、この問題は切実かもしれません。

多くの方が、車両の購入予算を組む際、車両本体価格やローンの月額についてはシビアに計算されることと思います。しかし、駐車場の規格を確認せずにクルマを選んでしまうと、その緻密な計算が根底から崩れる恐れがあります。

例えば、マンション敷地内の機械式駐車場の使用料が月額2万円だったとしましょう。当然、家計のシミュレーションもその金額で組んでいたはずです。しかし、いざ契約の段になって、欲しいクルマの全幅が1,855mmだと判明したとします。

ここで問題になるのが、機械式駐車場のパレット幅は1,850mmが上限であるケースが少なくないという事実です。たった5mm。わずかな差ですが、機械は融通を利かせてはくれません。結果として、そのクルマに乗るためには、敷地外の月極駐車場を借りざるを得なくなります。

そして、もし近隣駐車場の相場が、ハイルーフや大型車対応で月額5万円だとしたらどうでしょうか。差額は毎月3万円にもなります。これは年間で36万円もの出費増となり、さらに5年間の所有期間で計算すると、実に180万円もの想定外のコストが発生することになるのです。

180万円あれば、クルマのグレードを上げることも、家族で何度も豪華な旅行に行くこともできたはずです。入らなければ外で借りればいいという安易な判断は、実質的なローン負担を跳ね上がらせるリスクを孕んでいるのです。

目的地に着いてからが地獄。30分間も空車を探して彷徨う徒労

金銭的なコストだけでなく、クルマのサイズと駐車場のミスマッチは、貴重な時間をも奪っていく可能性があります。

週末、お気に入りのクルマで都心へドライブに出かけたと想像してみてください。目的地は港区や渋谷区のおしゃれな商業施設。しかし、現地に到着してからが本当の試練の始まりかもしれません。

都心部の駐車場、特に古いビルに併設された機械式タワーパーキングなどは、対応サイズが全高1,550mm以下や、全幅1,850mm以下に制限されている場所が依然として多いのが現状です。

空車の表示を見て入り口に向かったものの、係員に「そのサイズは入りません」と断られてしまうことも。仕方なく次の駐車場を探しますが、そこも満車かサイズNGとなることがあり得るのです。

実は筆者である私自身も、過去に都内で駐車場が見つからず、30分以上もハンドルを握りながら冷や汗をかいてさまよった経験があります。目的地は目の前にあるのに、クルマを降りることができないもどかしさは相当なものです。

助手席のパートナーやお子様も、最初は会話を楽しんでいるかもしれませんが、駐車場探しが長引くにつれて車内の空気は重くなりがちです。せっかくの休日なのにという焦りは、ドライバーにとって大きなストレスとなるでしょう。

大きなクルマは快適な移動を約束してくれますが、いざクルマを降りようとした瞬間、都市部ではその大きさが仇となるシーンがあることも、心に留めておく必要がありそうです。

大型ショッピングモールでも油断禁物。ドアが開かない日常のストレス

自分は都心には行かないし、郊外のショッピングモールがメインだから大丈夫と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、広大な平面駐車場であっても、サイズの大きなクルマ特有の悩みはついて回ります。

駐車場の広さは、国土交通省の「駐車場設計・施工指針について」で車両ごとに指針が出ています。それによると、普通自動車1台あたりの駐車スペース(駐車マス)は、長さ6.0m、幅2.5mが標準とされています。

一見、十分な広さに思えますが、ここに全幅1900mmを超えるような最新の輸入車や大型SUVを停めるとどうなるでしょうか。左右に残されたスペースは、単純計算でそれぞれ30cm未満しかありません。

このわずかな隙間でドアを開けて乗り降りするのは、至難の業です。身体を無理にねじって降りる姿はあまりスマートとは言えませんし、何より、強風の日や荷物を持っている時、隣のクルマにドアをぶつけてしまうドアパンチのリスクに常に怯えることになります。

結局、入り口に近い便利なスペースは諦め、ガラガラに空いている遠くのエリアにポツンと停めることになるかもしれません。雨の日などは、その距離が余計に億劫に感じられることもあるでしょう。憧れの大きなクルマを買ったはずが、日常の買い物がなんとなく不便になった。そんな小さなストレスの積み重ねが、所有満足度を徐々に下げてしまう要因になることもあるのです。

「車庫証明」が取れても安心できない? 書類には載らない“ドアが開かない”現実

最後に、クルマ購入の手続きで避けて通れない、車庫証明についても触れておきましょう。

ご存じの通り、車庫証明は保管場所のサイズがクルマのサイズを上回っていなければ交付されません。そのため、証明書が無事に発行されたということは、理屈の上ではその場所にクルマが収まることを意味します。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。車庫証明の審査基準は、あくまで数字上で収まっているかどうかがメインであり、実際に人間が乗り降りできるか、スムーズに出し入れできるかといった使い勝手までは考慮されないことが多いのです。

その結果、書類上はクリアして無事に納車されたものの、いざ自宅の駐車場に入れてみると、左右の余裕がほとんどなく、運転席側のドアが開けられないという事態が起こり得ます。

毎回の駐車で神経をすり減らしながら壁ギリギリまで幅寄せをし、センターコンソールをまたいで助手席側へと移動して降りなければならない……そんな窮屈なルーティンを強いられるケースも実際に耳にします。これは、物理的には入っていても、実用面では大きな負担だと言わざるを得ません。

書類が通れば安心、ではなく、毎日ストレスなく使えるかという視点を持つことが何より大切です。

置く場所から逆算する賢い選び方

クルマ選びというと、どうしてもスペックやデザイン、そして車両価格にばかり目が行きがちです。しかし、クルマは走っている時間よりも、停まっている時間の方が圧倒的に長い乗り物です。

だからこそ、そのクルマをストレスなく保管できるか、出し入れできるかという環境とのマッチングは、エンジン性能や燃費と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素といえるかもしれません。

もし、今気になるクルマがあるのなら、ディーラーへ行く前に、ご自宅の駐車場やよく行くスーパーの駐車枠を、一度確認してみてはいかがでしょうか。意外と狭いな、この段差は厳しいかもといった気づきが、将来の数百万円の損失や、毎日のストレスを防ぐための最大の防御策になるはずです。

置く場所から逆算してクルマを選ぶ。それは決して消極的な選び方ではなく、長く愛車と付き合っていくための、賢く現実的な第一歩なのです。


出典:駐車場設計・施工指針について(国土交通省)


ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。