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二世帯なら助け合えるはずだった。生活費と修繕費で揉め続け、家族がバラバラになった同居の末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

家づくりを考える場面で、こんな言葉をかけられたことはないでしょうか。

「親と一緒に住めば安心だよ」「土地があるんだから、そこに建てればいいじゃない」

子どもの進学や、将来の親の介護が現実味を帯びてくる40代前後になると、二世帯同居は前向きで合理的な選択に見えがちです。土地代がかからず、家族で助け合える。そう考えるのも無理はありません。

しかし実際の現場では、良かれと思って選んだ同居が少しずつ家族の歯車を狂わせていき、気づいたときには「家族がバラバラになっていた」という結末を迎えるケースもあります。

今日は、そんな二世帯同居が思わぬ方向へ進んでしまった実例をご紹介します。

「土地はあるから建てればいい」その一言から始まった二世帯計画

10年ほど前、知り合いの住宅メーカーから聞いた話です。

相談に来られたのは、40代男性のAさん。お子さんは中学生で、進学費用や将来の親の介護について考え始めた時期でした。そんな中、両親から次のような提案を受けたといいます。

「この土地があるんだから、二世帯で家を建てよう」「一緒に住めば、お互い助け合えるでしょ」

土地代がかからない分、建物にお金をかけられる。子育ても手伝ってもらえる。Aさん夫婦にとって、その話は現実的で前向きな選択に思えました。

こうして夫婦は、建築費約3,500万円の二世帯住宅を新築します。住宅ローンはAさん(夫)名義、土地は両親名義のままという形でした。

土地や建物の名義をこのままにするのか、それとも変更するのか。将来的には売却するのか、生活費を誰がどこまで負担するのかについても「細かいことは住み始めてから決めればいい」と考え、十分に話し合わないまま計画は進んでいきました。

「細かいことはあとで」──生活費の曖昧さが火種になる

同居を始めたばかりの頃は、表面上は穏やかでした。

ところが、数ヶ月も経たないうちに、少しずつ空気が変わり始めます。問題になったのは、毎月の生活費でした。電気代、水道代、食費について、誰がどこまで負担するのかが決まっていなかったのです。実際の暮らしは、こんな状態でした。

  • 日中は両親が在宅で、エアコンの使用時間が長い
  • 電気代は世帯を分けず、一括で請求される
  • 食事は一緒の日と別々の日が混在し、食費の線引きが曖昧

そのたびに「今回はあなたたちが払ってよ」「いや、次はそっちでしょ」そんなやり取りを重ねるうちに、支払いの場面そのものが気まずくなっていきました。

最初は些細な違和感でも、積み重なるうちに不満へと変わり、家族の間に確実な溝をつくっていきます。

修繕費が引き金になり、関係は決定的に崩れた

決定的だったのは、建物の修繕を巡る問題でした。給湯器の不具合や外壁、共有部分の補修が重なり、修繕費の見積もりは約120万円に膨らみます。

このとき、Aさんの両親の口から出た一言が、状況を一変させました。

「土地を提供しているんだから、家の修繕費はそちらで払うべきでしょ」

これに対し、夫婦も黙ってはいられません。

「建物の費用はほとんどこちらが負担している」「折半するのが普通ではないか」

しかし、そこから話はかみ合わなくなります。修繕費の話は感情のぶつかり合いに変わり、冷静な話し合いはできなくなっていきました。

やがて、妻とAさんの母は口をきかなくなり、食事も完全に別々に。夫婦の間でも「そもそも同居を選んだ判断が間違っていたのではないか」と責め合うようになっていったのです。

売るに売れない二世帯住宅

別居や売却も検討しましたが、現実は思った以上に厳しいものでした。

  • 二世帯住宅は一般的な住宅より買い手が限られる
  • 土地が両親名義のため、夫婦だけで売却を決められない

話し合いの末、両親はそのまま住み続け、夫婦と子どもが先に家を出て、賃貸マンションへ引越す形になります。

住宅ローンは残ったまま。そこに家賃が加わり、ローンと家賃の二重負担が始まりました。家計は一気に余裕を失い、生活の見直しを迫られることになります。

「助け合えるはずだったのに、どうしてこんなことになったんでしょうか…」

そう漏らしたご主人からは、以前のような覇気は感じられなくなっていたそうです。

二世帯同居で“やっておくべきだったこと”

二世帯同居がうまくいくケースも多くあります。ただし、今回のケースには、見過ごされがちな共通点がありました。

  • 生活費や光熱費、修繕費について負担の決め方を曖昧にしたまま同居を始めた
  • 土地や建物の名義、権利関係をはっきりさせないまま建築を進めてしまった
  • 家族だから大丈夫と考え、第三者を交えずに話を進めてしまった

本来であれば、同居を決める前に次の点を整理しておく必要がありました。

  • 費用負担のルールを、口約束ではなく書面で決めておく
  • 将来売却する場合や、住み替える場合の扱いを事前に決めておく
  • うまくいかなかったときに、別々に暮らす選択肢を残しておく

二世帯住宅は、家族関係が良好であり続けることを前提とした住まい方です。今はうまくいっているから大丈夫という判断が、数年後に大きな誤算につながることもあります。

家は、本来、暮らしを支えるためのものです。家族関係を壊す引き金にならないよう、事前の準備を怠らないことが大切です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。