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新築戸建て2年目なのに…倉庫が『ブラックホール』30代主婦が陥った“皮肉な事態”【一級建築士は見た】

  • 2026.2.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「収納は多ければ多いほど安心だと思っていました。なのに、片づけても片づけても、家の中がスッキリしません……」

そう語るのは、新築戸建てに住み始めて2年目のCさん(30代主婦・夫婦+子ども1人の3人家族)です。

間取りの打合せでは「収納力」を最優先。玄関、リビング、階段下、クローゼットにいたるまで、とにかく奥行きのある大容量の収納を確保しました。

ところが、いざ暮らし始めると、「収納はたっぷりあるのに、物が迷子になる」という予期せぬ問題が噴き出しました。

奥が“ブラックホール”になっていく

入居して最初の半年は順調でした。どんな物でも、とりあえず「突っ込めば」部屋が片づくからです。

しかし、奥行きの深い収納はある日を境に、ただの「押し込み倉庫」へと変貌します。

手前に普段使いの物、奥に「たまに使う物」を置いたつもりが、いつの間にか奥は死蔵品だらけ。何が入っているか把握できず、探し物ばかりが増えていきます。「あれ、どこに置いたっけ?」が口癖になり、見つからないから同じ物を買い直す。

収納を増やしたはずなのに、無駄な出費とストレスだけが増えていくという、皮肉な事態に陥ってしまったのです。

失敗の原因は“量”だけで設計してしまったこと

原因は極めてシンプルです。収納の性能は「広さ」ではなく「使い勝手」で決まるからです。

奥行きが深すぎる収納には、共通の弱点があります。

●動作の負荷が大きい
手前の物をどかさないと奥の物が取れない。このひと手間が、整理整頓のハードルを上げます。

●「とりあえず」が積み重なる
出し入れが面倒になると、忙しい時ほど「とりあえず手前に置く」「とりあえず奥へ押し込む」という動きになり、一気に秩序が崩れます。

●「死蔵化」の加速
使用頻度の異なる物が同じ空間に混ざると、情報の密度が上がり、中身を「見える化」できなくなります。

家が片づかない本当の理由は、収納の不足ではなく、「物の回転」が止まってしまっていることにあるのです。

今からできる、現実的な「収納の立て直し」

Cさんのようなケースでは、これ以上収納を増やす必要はありません。大切なのは「奥行きを分割する」という発想です。

1. 「手前」と「奥」を別物として扱う 
一つの大きな空間と思わず、手前は「毎日使うアクティブゾーン」、奥は「季節物や備蓄のストックゾーン」とルールを決めます。これらを決して混ぜないことが鉄則です。

2. ボックスと棚板を駆使する 
奥の物を取り出しやすくするために、引き出し式のボックスを活用します。また、可動棚を活用して高さを細かく調整し、「積み重ね」を徹底的に排除しましょう。

3. 「名もなき場所」をなくすラベリング 
中が見えない深い収納ほど、ラベリングが効果を発揮します。「ここにはこれがある」と家族全員が認識できるだけで、物の迷子は激減します。

収納は“広さ”より“回転率”

Cさんの後悔は、「大容量=正解」という思い込みが招いた盲点でした。

奥行きの深い収納は、うまく使えば強力な味方になります。しかし、設計を単なる「量」だけで決めてしまうと、家の中にブラックホールを作ることになりかねません。

片づく家をつくる鍵は、収納の広さではなく「回転率」です。

取り出しやすく、戻しやすく、中身がひと目で分かること。収納は増やすことより、「回る仕組み」に整えること。これが、新築戸建てで後悔しないための、最適解です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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