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「開放感のはずが、一日中カーテンを閉める羽目に…」注文住宅で“窓を増やしすぎた”30代女性の後悔【一級建築士は見た】

  • 2026.2.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「引き渡しの時は開放的で感動したのに、実際に住んでみると、落ち着いてソファに座っていられないんです……」

そう語るのは、注文住宅を建てたAさん(30代女性・夫婦+子ども2人の4人暮らし)。

SNSで憧れた「南面いっぱいの大開口」を実現し、リビングを光あふれる空間にしたはずでした。

ところが、入居してすぐに思わぬ壁にぶつかります。それは、「外を通る通行人や隣家からの視線」でした。

前面道路を歩く人とふと目が合う。隣の家の2階からリビングが丸見えな気がする。

一度気になり始めると、明るさよりも「見られている」というストレスが勝り、結局、昼間から厚手のレースカーテンやロールスクリーンを閉め切る生活になってしまったのです。

窓を増やしたのに、外を拒絶して暮らす大誤算

Aさんの誤算は、「窓が大きい=明るくて快適」という一点のみで設計を進めてしまったことにあります。実際の土地に立ったときの「視線の角度」を計算できていませんでした。

●通行人の目線
道路とリビングの床に高低差がない場合、歩行者の目線がダイレクトに室内へ入り込みます。

●隣家の生活動線
隣の家の勝手口や2階の窓と正対してしまうと、お互いに気まずい思いをすることに。

結果として、開放感を得るために作った大きな窓が、皮肉にも「プライバシーを守るために一日中カーテンを閉めなければならない壁」と化してしまいました。

カーテン越しにしか外を感じられない生活は、思い描いていた理想とはかけ離れたものでした。

原因は“窓の量”ではなく“配置の戦略不足”

問題は「窓が大きいこと」自体ではありません。窓の価値は、単体ではなく「周辺環境との位置関係」で決まるからです。

Aさん宅の場合、以下の「視線のガード」が不足していました。

●外構によるブラインド効果
窓の大きさに合わせて、外からの視線を物理的に遮るフェンスや植栽の計画が後回しになっていた。

●「高さ」の活用
採光のために大きな掃き出し窓を選んだが、実は「高窓(ハイサイドライト)」であれば、視線を遮りつつ空の光だけを安定して取り込めた。

窓だけを先行して大きくし、外構との連動を甘く見たことが、今回の「視線地獄」を招いた大きな要因です。

今からでも遅くない「視線ストレス」の解消法

すでに完成してしまった家でも、視線のコントロールは可能です。「カーテンを閉めっぱなし」から卒業するための改善案を提案しています。

●外構の追加整備(フェンス・植栽)
視線がぶつかるポイントをピンポイントで隠す。完全に塞ぐのではなく、隙間のあるルーバーフェンスや常緑樹を選ぶと、圧迫感なく視線を切ることができます。

●窓まわりの工夫
日中、外から見えにくいミラーレースや、上下を自由に開閉できるプリーツスクリーンへの変更。特にスクリーンの下部だけを閉めれば、空の光を取りつつ足元の視線をカットできます。

また、これから設計する方への鉄則は、「窓は引き算で考える」こと。

大きな掃き出し窓を一つ作るより、視線が抜けない位置に中型の窓を分散させたり、高窓を採用したりする方が、結果として「カーテンを開けて過ごせる時間」が圧倒的に長くなります。

開放感は「視線を気にせずくつろげて」こそ

Aさんの家は、大きな窓を作ったことで、逆に「外を意識しすぎる生活」を強いてしまいました。

窓は「景色を取り込むもの」であると同時に、「外との距離を測る装置」でもあります。

通行人の目や隣家の視線に怯えながら過ごす空間に、真の開放感はありません。「どこまで見せて、どこから隠すか」。この境界線を明確に引くことが、カーテンに頼らずに光を楽しむ家づくりの絶対条件です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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