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年間30万円が消えていく…「正月に集まったときでいい」と相続を後回しにした50代会社員の末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.31
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

相続の話は、後回しになりがちです。

「正月やお盆に集まったときでいい」

そうしているうちに、何も決まらないまま時間だけが過ぎていきます。ところが、この何気ない先送りがきっかけで、不動産を売ることも、貸すことも、壊すこともできない状態に陥ることがあります。

今日は、家族間で大きな揉め事がなかったにもかかわらず、結果として実家が「動かせない不動産」になってしまった、50代会社員Aさんの実例をご紹介します。

名義は「そのうち決めよう」という空気

Aさんの父親が亡くなったのは、数年前のことでした。実家は地方にあり、相続人はAさんを含めた兄弟姉妹が数名います。

相続が発生した当初、家族間で大きな揉め事はありませんでした。

  • 「誰が住むわけでもないし、急いで決めなくてもいいよね」
  • 「名義の話は、また集まったときにしよう」

そんな言葉が交わされ、相続の話はひとまず先送りになりました。

固定資産税(年間で15万円)については、Aさんが代表して支払っていました。その時点では「とりあえず払えているし、特に困ってはいない」と感じていたといいます。

正月の帰省で、結局何も決まらなかった

Aさんは、年末年始の帰省をきっかけに、相続の話をまとめるつもりでいました。

ところが、いざ正月を迎えると、家の空気は思っていたものと違っていたそうです。

  • 「せっかく集まったんだから、重たい話はやめよう」
  • 「今年は楽しく過ごそう」

そんな雰囲気に流され、相続の話題は誰の口からも出ませんでした。

結局、具体的な話は何一つ進まないまま、正月は終わってしまいます。Aさん自身も、そのときは「また次の機会でいいか」と、自分に言い聞かせて帰路についたといいます。

売ろうとした瞬間、初めて突きつけられた現実

それからしばらくして、実家の様子は少しずつ変わっていきました。

  • 庭の草刈りが身体的負担となる
  • 雨漏りや外壁の傷みが目につくようになる
  • 近隣から管理の徹底を指摘される

こうしたことが重なり、管理の負担がじわじわと増えていきます。

「このまま持ち続けるのは大変だ。いっそ売ろうか」

そう考えて不動産会社に相談したとき、はっきり告げられました。

「相続登記が済んでいない状態では、売却はできません」

その一言で、Aさんは初めて現実を突きつけられます。登記名義が亡くなった父親のままでは、売ることも、貸すことも、何一つ前に進めない。

実家はすでに、自分の判断だけでは動かせない状態になっていたのです。

揉めていなかった兄弟が、少しずつ噛み合わなくなる

兄弟姉妹に連絡を取ると、これまで感じたことのなかった温度差が表に出始めました。

  • 「今は仕事が忙しくて、なかなか時間が取れない」
  • 「売却って、そこまで急ぐ話なの?」
  • 「遠方に住んでいるから、手続きはそっちで進めてほしい」

誰かが強く反対しているわけではありませんが、話は思うように前に進みませんでした。相続登記には、次のような手続きが必要になります。

  • 戸籍の収集
  • 印鑑証明書の取得
  • 遺産分割協議書への実印の押印

そのため、相続人の一人が遠方に住んでいるだけでも書類のやり取りは想像以上に時間がかかります。

話し合いが長引くあいだも、固定資産税や草刈りの手配、応急的な修繕費といった負担は続き、年間で見ると30万円近い持ち出しになっていたそうです。

放置できない状況になって初めて、焦りが生まれた

そんな中でAさんが耳にしたのが、相続登記の義務化の話でした。

相続登記は2024年4月1日から義務となり、相続人は所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を行う必要があります。

なお、制度開始前の相続にも適用され、2024年3月31日以前に相続を知った場合でも2027年3月31日までに登記が必要とされています。正当な理由なく手続きをしなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性もあります。

「すぐに罰則があるわけではない」

そう理解してはいても、このまま何もせずに放置するわけにはいかない。Aさんはそのとき、初めてそう実感したといいます。実家は、管理の手間と出費だけがかかる「動かせない不動産」になっていたのです。

相続は「先送りしないこと」がすべて

このケースで一番の誤算は「揉めていないのだから、急ぐ必要はない」そう思い込んでしまった点でした。

相続不動産は、売るか、貸すか、残すかを考える以前に名義を確定させなければ何も始まりません。そのため、本来は次のような対応が必要でした。

  • 話し合いが円満なうちに相続登記を終わらせる
  • 家族への気遣いと手続きを切り離して考える
  • 「そのうち」ではなく、期限を決めて動く

これができていれば、Aさんの実家は少なくとも「動かせない不動産」になることは避けられたはずです。

相続手続きは、揉めてから進めるものではありません。何も問題が起きていない今こそが、実は一番動きやすいタイミングなのです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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