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50万円安くなるなら…中古住宅を即決した30代夫妻→「数百万の違約金」を払うことになった“意外な盲点”

  • 2026.1.30
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

引越しや転勤、子どもの進級などが重なると「この時期までに住まいを決めなければならない」という期限に追われ、冷静な判断が難しくなります。とくに不動産の繁忙期である1〜3月は、「今動かないと良い物件は出ませんよ」と言われ、その言葉に背中を押される方も少なくありません。

今日ご紹介するのは、住宅ローンの特約期限を十分に確認しないまま契約を進めた結果、思いもよらず違約金を支払うことになったご夫婦のケースです。

一見するとよくある住まい探しの話ですが、ほんの小さな見落としが、大きな代償につながっています。

転勤と繁忙期。「3月入居」に縛られた家探し

登場するのは30代の共働き夫婦、Aさん夫妻です。小さなお子さんが1人おり、ご主人の転勤をきっかけにマイホーム購入を考え始めました。

賃貸の更新時期や保育園の関係から、3月中に入居できることが条件でした。初めての持ち家購入で不安もありましたが、時期は不動産の繁忙期。気づけば、落ち着いて比較する余裕がないまま、物件探しが進んでいきます。

そんな中、駅からの距離や立地条件を優先して見つけた中古住宅を内見した際、売主側から次のように声をかけられました。

「ほかにも検討している方がいます。今日決めていただけるなら、50万円値引きしてお渡ししますよ」

価格が下がるという具体的な提示に、Aさん夫妻の気持ちは一気に傾きました。

「ここを逃したら、もう同じ条件の物件は出てこないかもしれない」

そう感じた二人は、迷う時間を持たないまま売買契約へと進んでしまいます。

ローン特約は付いていた。でも「期限」を深く見ていなかった

売買契約は住宅ローンを利用する前提で進められ、ローン特約(住宅ローンが借りられなかった場合に契約を白紙に戻せる条項)もきちんと付いていました。ただし、このローン特約には大きく分けて、次の2つの考え方があります。

  • 解除条件型:一定の期限までにローンが承認されなければ、契約は自動的に白紙になるタイプ
  • 解除権留保型:期限までに「解除します」と意思表示をしなければ、契約はそのまま有効になるタイプ

Aさん夫妻の契約は、後者の解除権留保型でした。つまり、期限内に動かなければ、ローン特約は使えなくなる契約だったのです。

事前審査も問題なく通過しており、Aさん夫妻は「これで大丈夫」と安心していたといいます。ただ、その安心感の裏で、ひとつだけ見落としていた点がありました。それが、ローン特約の期限です。

契約書をあらためて確認すると、融資承認を得る期限は売買契約から2週間と定められていました。一般的には1ヶ月前後に設定されることが多く、決して余裕のある期間とはいえません。

それでも夫妻は「事前審査は通っている」「多少遅れても問題ないだろう」と考え、この期限を深く意識しないまま手続きを進めてしまいました。

「数日遅れるだけ」が命取りになった瞬間

本審査の段階に入ったところで、想定していなかった確認事項が発生しました。金融機関から、次のような追加対応を求められたのです。

  • 勤務先に関する詳細な確認
  • 既存の借入状況についての補足資料

事前審査では問題がなかったため、Aさん夫妻にとっては想定外でした。その影響で審査は長引き、気づけばローン特約の期限が目前に迫っていました。

それでも夫妻は、売主に期限延長を申し出ることはしませんでした。

「あと数日で結果は出るはず」「今さら延長をお願いするのは申し訳ない」

そう考えているうちに、ローン特約の期限は何事もなく過ぎていきます。

そして、その後に出た金融機関の判断は、住宅ローン否決。しかしこの時点で、ローン特約はすでに失効しています。もはや、ローンが通らなかったことを理由に、契約を白紙に戻すことはできませんでした。

白紙解除できず、数百万円の“違約金”を払うことに

契約を続けるには、売買残金(売買契約時に支払った手付金を差し引いた残りの代金)を支払う必要がありました。しかし、住宅ローンが否決された以上、その金額を現金一括で用意することは現実的ではありません。

手付解除の期限を過ぎていたため手付解除ができず、Aさん夫妻が選ばざるを得なかったのは、買主都合による契約解除でした。その結果、違約金として数百万円を売主に支払うことになります。

「あと1週間、期限を延ばしてもらえていれば…」

そう悔やんでも、契約は覆りませんでした。住まい探しは振り出しに戻り、転勤に合わせて組んでいた入居スケジュールも大きく狂います。精神的な負担だけでなく、家計にも深い傷を残す出来事となったのです。

急いで決める前に、引き返せる条件を確認しよう

このケースで本来すべきだった対応は、決して難しいものではありませんでした。ローン特約の期限が切れる前に、売主と期限延長について協議し、合意書を取り交わすこと。それだけです。

住宅ローンを利用する個人の不動産売買では、融資が受けられなかった場合の取り扱いを重要事項説明書や売買契約書に明記することが義務付けられています。ローン特約は、買主を守るための大切な仕組みです。ただし、その効力が発揮されるのは、定められた期限内に限られます。

不動産取引で本当に優先すべきなのは、「早く契約すること」ではありません。万が一のとき、きちんと引き返せる状態にあるか。その条件が今も有効かどうかを、常に確認し続けることです。

焦りが強くなるほど、人は一番大切な安全装置を見落としがちになります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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