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駅徒歩5分なのに「100万円単位の値下げ連発…」査定時、30代夫婦が後悔した“大誤算”【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

物件探しや売却の場面でよく耳にするのが「駅徒歩〇分だから便利ですよね」「通勤や通学もしやすそうです」といった言葉です。駅までの距離は、確かに分かりやすく、重要な判断材料のひとつです。

購入時だけでなく「将来売るときも有利だろう」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。実際、駅に近いというだけで安心感があり「この立地なら、いざという時も困らない」と判断してしまいがちです。

しかし、その“安心感”が思わぬ誤算につながるケースもあります。

今日は、「駅徒歩5分」という条件に安心しきっていた30代夫婦が、坂や高低差という見落とされがちな要素によって売却に苦しむことになった実例をご紹介します。

「駅近は売りやすい」と信じて疑わなかった30代DINKs夫婦

今回の登場人物は、30代のDINKs(共働き・子どもなし)のAさん夫妻です。

約10年前、共働きで体力にも余裕があった時期に、駅から徒歩5分の戸建てを購入されました。周辺は坂の多い住宅地でしたが、当時は「駅が近いから問題ない」「多少の坂なら、むしろ運動になる」と、大きなデメリットとしては捉えていなかったそうです。

その後、転勤をきっかけに住み替えを検討することになります。売却を考えた際も、夫妻の認識は変わりませんでした。

  • 駅徒歩5分なら、売れないはずがない
  • 条件としては、かなり有利なはずだ

駅までの距離が近いという一点だけで、売却もスムーズに進むと信じていたのです。

査定額は相場通り。でも担当者の言葉に残った“一言”

Aさん夫妻は、複数の不動産会社に査定を依頼しました。

提示された価格は、いずれも周辺相場と大きく変わらない水準です。金額だけを見れば、ひとまず安心できる内容でした。

ところが、ある担当者が、ふとこんな言葉を添えたといいます。

  • 立地自体は悪くありませんが、坂道を気にされる方もいそうですね
  • 実際の反応は、売り出してみないと何とも言えません

その場では、深く気に留めることはありませんでした。駅に近いという強みがあれば、多少の坂は問題にならない。夫妻は、そう考えていたのです。

しかし、売却活動が始まってから、その“含みのある一言”の意味を思い知らされることになります。

内見は入る。でも決まらない…共通して出た“同じ一言”

内見の申込み自体は、決して少なくありませんでした。週末ごとに人は来る。それでも、話は前に進みません。

成約に至らない理由は、ほぼ共通していました。内見後に返ってくる言葉は、いつも同じです。

  • 「思っていたより坂がきついですね」
  • 「高低差が想像以上でした」
  • 「毎日の上り下りを考えると、少し不安です」

特に反応が厳しかったのは、高齢の方や子育て世帯でした。ベビーカーでの移動、買い物帰りの荷物、将来的に体力が落ちたときの暮らしを想像した瞬間、この物件は「候補から外れる存在」になってしまったのです。

土地の“高低差”が、さらに不安を増幅させた

ネックになったのは、坂道だけではありませんでした。道路から敷地までの高低差も、買い手の不安を強める要因になっていきます。

内見者からは、こんな声が上がるようになります。

  • 「造成や擁壁工事(土を支えるために設けるコンクリート構造物の工事)が必要になるのでは?」
  • 「そうなると、建築費がどこまでかかるのか読めませんね」

さらに、土地購入を前提に金融機関へ事前相談をした結果「土地条件を踏まえると、融資は慎重に判断したい」と伝えられたケースもありました。こうしたやり取りが重なるうちに、検討者の姿勢は変わっていきます。

最初から値下げ交渉を前提に話を持ちかけられるようになり、売却はますます厳しい状況へと追い込まれていったのです。

値下げを重ねても売れず、最後に突きつけられた現実

当初に想定していた価格から、まずは数十万円の値下げ。反応が変わらなければ、さらに100万円単位で調整しました。それでも、状況は大きく動きませんでした。

時間が経つにつれ「まだ決まっていない物件」「何か理由があって売れていない土地」そんな印象が、少しずつ市場に広がっていきました。そして現在も、売却には至っていません。

購入した当時には気にならなかった坂や高低差も、買い手の立場に立てば、将来を考えるほど不安材料になります。条件の見え方は、時代や立場によって大きく変わる事実を、売却の過程で突きつけられたのです。

「数字」ではなく「体感」でどう映るかを考える

今回の誤算は、自分たちが気にならなかった条件を、買い手も同じように受け止めると思い込んでしまったことです。住まいに求める価値観は、10年前とは変わっています。老後や体力、日常の動線を重視する人にとって、坂や高低差は無視できない判断材料になります。

売却前には、次の点を整理しておくことが大切です。

  • 想定する買い手層を具体的に考える
  • 坂や高低差がどう見えるかを第三者目線で確認する
  • 弱点になる条件は、価格や戦略に最初から織り込む

「駅徒歩〇分」という数字だけでなく、毎日歩くとしたらどう感じるか。その視点を持つだけで、売却時の後悔は大きく減らせるのではないでしょうか。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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