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「リフォームすれば貸せる」と言われた築45年戸建て。800万円かけても入居者が決まらなかった相続地獄【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.27
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皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

親の家を相続したときに、

「思い入れがあるので壊したくない」
「せっかくなら新しい人に使ってもらいたい」
「相続したのだから活かしたい」
「直せばまだ住めるはず」

そんなふうに考えた経験がある方は、決して少なくないと思います。ちまたでは「空き家をリフォームして貸せば不労所得になる」といった情報を目にすることもあり、前向きな選択肢のように感じてしまうものです。

しかし、その判断が、後から引き返せない借金地獄の始まりになることがあるのも事実です。

今日は「リフォームすれば貸せる」という言葉を信じ、約800万円をかけたにもかかわらず入居者が決まらなかった、ある相続物件の実例をご紹介します。

相続したのは、郊外にある築45年の戸建て

相談に来られたのは、30代の女性Aさん。数年前にお母さまが亡くなり、郊外にある築45年の戸建てを相続されました。

物件は市街地から離れた場所にあり、生活利便性は決して高いとは言えません。

  • 最寄り駅までは徒歩30分以上
  • 近くにスーパーや学校が少ない環境

それでもAさんは、当時をこう振り返ります。

「もともと不動産投資に興味があって。売るよりも、貸して家賃収入にしたほうがいい気がしたんです」

相続した家を“資産として活かしたい”という思いが、Aさんの判断の出発点でした。

「フルリフォームすれば十分貸せますよ」

複数の不動産会社に相談する中で、Aさんの背中を押したのは、ある担当者の言葉でした。

「築年数は確かに古いですが、水回りをすべて替えて内装をきれいにすれば、十分貸せますよ」

提案されたのは、いわゆるフルリフォームです。

  • 屋根や外壁の塗装
  • キッチン・浴室・トイレの全面交換
  • 壁・床の全面張り替え

提示された見積額は、約800万円。手元の資金だけでは足りず、リフォームローンの利用もあわせて勧められました。

「家賃収入で返せますから」

その一言に、Aさんは大きな疑問を抱くことなく、話を進めてしまったそうです。

工事中から始まる「出ていくだけのお金」

工事が始まった直後から、Aさんの前には厳しい現実が広がっていました。収入はまだ一切ないにもかかわらず、固定資産税の支払いとリフォームローンの返済だけが、確実に重なっていきます。

入居者が決まらない限り、家賃収入はゼロ。それでも毎月、お金だけが出ていく。Aさんは、自分に言い聞かせるようにこう思っていました。

「大丈夫。ここまでリフォームして、こんなにきれいになるんだから。完成すれば、きっとすぐに借り手が見つかるはず」

その期待だけを支えに、募る不安とフラストレーションを抱えながらも、Aさんは工事期間を何とか乗り切ろうとしていたのです。

内見は来る。でも、決まらない

リフォームが完了し、あらためて募集を開始しました。室内は見違えるほどきれいで、写真の印象も悪くありません。実際、内見は数件入りました。

しかし、どの内見でも返ってくる言葉は似通っていました。

「部屋はきれいですね。でも、家賃が少し高いです」
「悪くはないけれど、立地が気になります」

家賃を下げれば決まる可能性はあります。ただし家賃を下げてしまうと、リフォームローンの返済や固定資産税、将来の修繕費をまかなえないことがはっきりしました。周辺の家賃相場をあらためて調べて、Aさんはようやく気づきます。

「築45年の戸建てであっても、入居希望者からは近くの築浅アパートや新築マンションと同じ目線で比べられている」という現実に。

「築年数の壁」は、リフォームでは超えられなかった

Aさんが強く実感したのは、築年数そのものが、入居者から敬遠される要因になっているという現実でした。内装をいくら新しくしても、建物の根本は変えられません。

  • 古い耐震基準で建てられていること
  • 断熱性能が低く、住み心地に不安が残ること
  • 現代のニーズに合いにくい間取り

Aさんは当時を振り返り、こう漏らしました。「貸す前提で話を進めてしまって、売ることになった場合のことを何も考えていなかったんです…」

「貸せる家」でも、「借りたい家」ではなかった

相続した家を前にすると「活かしたい」「無駄にしたくない」という気持ちが先に立ちがちです。しかし、不動産は思い入れだけで成り立つものではありません。「リフォームすれば貸せる」という言葉は、あくまで可能性にすぎません。

  • 実際に借りたい人がいるのか
  • 貸せなかった場合にどうするのか

そこまで考えて初めて、判断材料がそろいます。

Aさんの物件は、最終的に当初想定していた家賃よりも低い賃料で、ようやく借り手が付きました。空室が続くよりはましでしたが、その家賃ではローン返済と固定資産税を支払うと赤字になります。

不足分を補うため、Aさんは仕事をかけもちする生活に変わったそうです。「不労所得」を目指したはずが、実際には労働を増やす結果になってしまいました。

相続不動産は、選択を誤ると、資産ではなく家計を圧迫する負担に変わることがあります。

勢いで進む前に少し考える時間を取り、その家をこの先どうするのか、貸せなかった場合や売ることになった場合まで含めて考えてみるように心がけましょう。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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