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「冬のボーナスで頭金を入れたから安全」だと思っていた。諸費用と税金を甘く見た結果、赤字になった50代夫婦の誤算【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

家を買うとき、多くの方がまず気にするのは「住宅ローンはいくらまで払えるか」ではないでしょうか。月々の返済額が今の家計に収まっていれば「無理はしていないから問題ない」と感じやすいものです。

とくに、まとまった頭金を用意できた場合は、その安心感から判断が甘くなりがちです。しかし実際には、マンション価格だけで返済シミュレーションを行い、諸費用まで含めて考えていないケースも少なくありません。

今日は、「お金は十分に準備したつもりだったのに、引っ越した直後から家計が赤字に転じてしまった夫婦の実例」をご紹介します。

決して無理をしない「はず」だった住み替え計画

50代前半のAさん夫婦は共働き世帯。子どもはすでに独立し、長年暮らした郊外の戸建てから老後を見据えて駅近のマンションへ住み替えを考え始めました。

「老後のために、これまで堅実にお金を貯めてきました。身の丈に合わない無理はしないつもりです」

冬のボーナスを使って数百万円の頭金も準備。Aさんはネット上の住宅ローンシミュレーションを使い、購入予定のマンション価格をもとに返済額を試算。表示された月々の返済予定額を見て「これなら問題ない」と感じていました。

しかし、試算していたのは「マンション購入価格」だけを前提にした数字でした。諸費用を含めた総額までは、まだ深く意識されていなかったのです。

見落としていた「諸費用込み」の返済シミュレーション

住宅ローンの本審査を申し込む段階で、Aさん夫婦は改めて購入にかかる費用の説明を受けました。マンション価格とは別に必要になるのが、次のような諸費用です。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 所有権移転登記費用(不動産の名義を売主から買主へ変更する費用)
  • 抵当権設定登記費用(住宅ローンを担保する抵当権を設定するための費用)
  • 火災保険料
  • 住宅ローンの事務手数料(金融機関に支払うローン契約・事務手続きの費用)

いずれもマンション購入には欠かせない費用で、多くは住宅ローンに含めることができます。

ただしその分、借入総額は増え、毎月の返済額も確実に上がります。諸費用を含めた借入額で返済シミュレーションをし直すと、月々の返済額は、当初想定していた金額よりも一段重い数字になっていました。

それでも住み替えの話はすでに具体化しており、この時は立ち止まって考え直す余裕がありませんでした。その判断が、後になって家計にじわじわと影響を及ぼすことになります。

入居後に実感した、ローン返済と管理費の重さ

住宅ローンの支払いに加え、毎月欠かさず発生するのが管理費や修繕積立金です。それぞれは想定していた金額でも、重なることで家計への影響は想像以上でした。

家計簿をつけ直してみると、住居にかかる支出等の合計が収入をわずかに上回り、毎月、数千円単位の赤字になっていることが分かりました。

当初「老後のために、これまで堅実に貯めてきました。今回は身の丈に合わない無理はしないつもりです」と話していたAさん夫婦は、結果として無理を前提にした生活を余儀なくされることになったのです。

頭金よりも大切なのは「残るお金」と「増える固定費」

Aさんご夫妻のケースで見落とされていたのは「頭金をいくら入れたか」という点ではありませんでした。本当に重要だったのは、次の視点です。

  • 諸費用まで含めた借入額で、毎月いくら返済することになるのか
  • ローン以外に、管理費や修繕積立金など、毎月どれだけ固定費が増えるのか

たとえ頭金が十分にあっても、返済シミュレーションがマンション価格だけを前提にしていれば、実際の暮らしとのズレは簡単に生まれてしまいます。

Aさんご夫妻も、「払えるかどうか」だけを基準に判断していました。その結果「住宅ローンの返済」「管理費・修繕積立金」を合算した住居費が想定を超え、毎月赤字になる家計へと変わってしまったのです。

家は「買えるかどうか」で選ぶものではありません。「買ったあとも、同じ生活水準を保てるか」を基準に考える必要があります。

頭金の金額だけに安心せず、諸費用を含めた借入総額と、毎月増える固定費をすべて並べてみること。そのひと手間が、住み替え後の暮らしを守る分かれ道になります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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