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「土地はあるから大丈夫」そう思っていたのに。再建築不可と知った瞬間、資産が“負債”に変わった相続の誤算【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

相続の話になると「建物は古くても、資産価値の高い土地が残るなら将来は活用できるだろう」と判断してしまう方は、決して少なくありません。

住む予定はない。今すぐ売る必要も感じていない。だから、とりあえず持っておく。一見すると、慎重で無難な選択に見えるかもしれません。

しかし不動産の世界では「何もしない判断」が、時間をかけて大きな誤算に変わることがあります。

今日は「土地は資産」という思い込みが崩れ、相続した不動産がいつの間にか「負の資産」となってしまった実例をご紹介します。

「実家は自分が引き取る」軽い決断の裏にあった見落とし

この話の主人公は、40代の男性Aさん。すでに持ち家があり、相続した実家に戻る予定はありませんでした。

父親が亡くなり、実家(土地と古家)をどうするか兄弟で話し合った際、こんな言葉をかけられます。

「実家はAが引き取ってくれたら助かる」

Aさんは、その場で深く考え込むこともなく了承しました。判断の根拠は、とても単純なものでした。

「建物は古いが、土地が残るなら損はしないだろう」

築40年以上が経過し、傷みが目立つ建物ではありましたが「いざとなれば建て替えれば価値が出る」と、楽観的に考えていたのです。

そのため、相続の段階では次の点を確認していませんでした。

  • 接道状況(敷地が道路にどう接しているか)
  • 再建築の可否(建物を建て替えられる条件を満たしているか)

この「確認しなかったこと」が、後にAさんを大きく悩ませることになります。

「道路に面しているのに…」役所で知らされた再建築不可

数年が経ち、空き家のままにしていた実家は少しずつ問題が目立つようになってきました。

庭木は伸び放題。ポストにはチラシが溜まり、外壁の傷みも一目で分かる状態です。決定打となったのは、台風による一部破損でした。修理の見積もりを依頼した業者から、こんな言葉をかけられます。

「中途半端に直すより、建て替えを検討したほうがいいかもしれませんね」

その言葉をきっかけに、Aさんはハウスメーカーへ相談しました。現地調査に訪れた担当者が何気なく口にした一言が、状況を一変させます。

「前面道路が、建築基準法上の道路かどうか確認が必要です」

Aさんは思わず聞き返しました。

「道路に面しているのに、何を確認するんですか?」

不安を抱えたまま役所で調べた結果、衝撃の事実が判明します。

家の前の道は一見すると道路に見えるものの、法的には道路として扱われていなかったのです。敷地が道路に接している幅(接道)が不足しており、現行の接道義務を満たさないため、原則として建て替えは不可※という条件でした。

「今まで家が建っていたのに、どうして建て替えできないんですか…」

Aさんは混乱し、頭が真っ白になったといいます。“いざとなれば建て替えればいい”という前提が、この瞬間に崩れ落ちました。

※自治体によっては、一定条件を満たせば例外的に建築が認められる「43条但し書き道路(2018年の建築基準法の改正により「43条2項2号道路」に変更していますが、実務では今も旧称のまま使われることがあります)」として扱われるケースもあります。ただし、いずれも事前の確認や申請が必要で、必ず建て替えできるとは限りません。自治体ごとに扱いが異なるため、詳細はお住まいの自治体で確認が必要です。

参照:東京都都市整備局|第43条第2項に基づく認定・許可の取扱い

査定で突きつけられた現実。「土地は資産」ではなかった

再建築ができない以上、Aさんに残された選択肢は多くありませんでした。

  • 老朽化した建物をリフォームして貸し出す
  • 建物を残したまま土地として手放す

しかし、築40年以上の建物を賃貸に出すには、水回りや耐震、内装の改修で数百万円規模の費用がかかります。かといって解体しても、再建築不可の更地は買い手が限られるという現実がありました。

不動産会社の査定では、想定より約500万円低い金額が提示されます。

「土地があるのに、どうしてこんなに安いんですか…」

その疑問に対し、担当者はこう説明しました。

「再建築できない土地は使い道が限られるので、売りにくいです」

このときAさんは、「土地は資産」という前提が崩れたことを実感したのです。

売れない・動かせない・責められる…終わらない後悔

値段を下げれば売れると思っていた実家は、そう簡単には動かず、今も売れ残ったまま。

Aさんのもとには、何も生み出さない負担だけが残ります。

  • 毎年かかり続ける固定資産税
  • 定期的に必要な草刈りや清掃の手間
  • 近隣住民からかけられる「ちゃんと管理してください」という言葉

家族に相談しても、返ってきたのは励ましではありませんでした。

「そんな大事なことを、調べずに相続したの?」

責められる言葉に、Aさんは次第に追い詰められていきます。後になってAさんは、こう振り返ります。

「相続不動産は、立地の良し悪しより先に、建てられるか、売れるか、貸せるか。その条件を確認すべきでした」

“持っているだけ”の不動産が、ここまで重い後悔になるとは、当時は想像もしていなかったのです。

「いつかは活用できるから相続する」が一番危ない

相続不動産で最も危険なのは「土地があるから、いずれ何とかなるだろう」と考えてしまうことです。実際には、相続の前後で次の点を確認していなかったことで、処分しようにもどうしようもできないケースが少なくありません。

  • 再建築が可能か(接道条件を満たしているか)
  • 売却や賃貸が、現実的に成立する条件か
  • 持ち続けた場合、毎年どれくらいの負担が発生するか

「とりあえず相続する」「あとで考える」という判断は、数年後に“どうしようもできない負の資産”として重くのしかかることがあります。相続不動産は、引き継ぐかどうかを決める前に、建てられるのか、売れるのか、貸せるのかを調べておくべきものです。

この順番を間違えないことが、後悔を避けるための最も確実な対策といえるでしょう。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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