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新築戸建て購入も「夜だけ“ゴー…”が止まらない」昼に内見で即決した30代夫婦の落とし穴【一級建築士は見た】

  • 2026.1.21
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「昼に内見したときは静かでした。鳥の声が聞こえるくらいで、『ここなら落ち着いて暮らせる』と思ったんです。でも夜になると、ずっと『ゴー…』って低い音が残って眠れなくて……」

そう語るのは、新築戸建てに住み始めたばかりのBさん(30代女性・夫婦2人暮らし)。

休日の昼に内見して即決。周囲も住宅ばかりで、騒がしい施設も見当たらず「当たりの土地」だと感じたそうです。

ところが入居後、夜になると状況が一変しました。遠くの幹線道路を走る車の走行音、トラックの低いエンジン音が、寝室に届くようになったのです。

窓を閉めても消えない“低音”の大誤算

Bさんがつらかったのは、音の大きさより「消えない感じ」でした。

高い音なら窓を閉めれば和らぎますが、低い音は壁や窓を通り抜けやすく、体にまとわりつくように残ります。寝室で横になった瞬間に気になり始め、寝不足が積み重なっていきました。

「静かな暮らしを買ったつもりが、毎晩“音の確認”から始まる生活になりました」

原因は“昼しか見なかった”ことと、音の入口の見落とし

音は時間帯で変わります。

夜間は交通量が減る一方で、周囲が静まり返るため、遠くの走行音が伸びて届きやすくなります。トラックの配送車や早朝の回収車が動く時間帯も、生活の就寝時間とぶつかりがちです。昼の内見だけでは、この「夜の音の正体」が見えません。

もう一つの盲点は、家側の“音の入口”です。窓の性能だけでなく、換気口や給気口、サッシの隙間など、わずかな弱点から音は入ります。

さらに冬は窓を開けない分、室内が静かになり、相対的に外の音が目立ちやすい。寒い時期ほど「気のせいでは済まない」状態になりやすいのです。

今からできる現実的な対策と、知っておくべき「限界」

まず効果が出やすいのは、寝室まわりの優先改善です。家全体を完璧にするのは難しくても、眠る部屋だけは守れる可能性があります。

窓の防音は、手軽な対策でも変わります。

防音シートで遮音性を高め、隙間テープでサッシの隙間を塞ぐと、外の音をある程度抑える効果が期待できます。

次に、見落としがちなのが「給気口(換気口)」です。壁に穴が開いている以上、そこは音の通り道になります。位置を変えるのは大掛かりな工事が必要で現実的ではありませんが、後付けの部材で対策は可能です。

例えば、給気口に防音性能の高い「防音フード」を被せたり、ダクト内部に「防音スリーブ(消音材)」を挿入したりするだけでも、外からの音は和らぎます。

ただし、ここで一つ覚悟しておかなければならない現実があります。

実は、車の走行音に含まれる「低音」は、現代の住宅技術をもってしても完全にシャットダウンするのが非常に難しい音なのです。

窓のグレードを上げ、給気口の防音を徹底したとしても、音の種類や立地によっては、どうしても振動を伴うような音が残ってしまう場合があります。「対策すればゼロになる」と思い込むのではなく、「いかにストレスを感じないレベルまで抑えるか」という視点が、精神的な平穏を守る上でも重要になります。

そして、これから家を買う人への最大の対策はシンプルです。

夜の時間帯に現地へ行くこと。

平日夜、休日夜、できれば就寝時間に近い時間に立ってみる。短時間でも「低音が残る土地か」は判断材料になります。

音は“現地の昼”では決められない

Bさんの失敗は、家が悪いというより「音は昼に見えない」という落とし穴でした。静かな土地に見えても、夜にだけ現れる音があります。

「対策をしても、完全な無音を作るのは難しい」という音の特性を理解した上で、窓・換気といった入口を一つずつ塞いでいく。

音は“時間差”でやってくる――それが、新築戸建てで起きがちな落とし穴であり、家づくりにおける重要な防衛ポイントなのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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