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「変動金利は低いから」と年0.975%を信じた結果…月3万増の先に待っていた“逃げ場のない地獄”【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.20
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅ローンを検討する場面で、「今は低金利ですから変動金利で問題ありませんよ」と説明を受けたことがある方は多いのではないでしょうか。とくに、老後を見据えた住み替えや買い替えでは「毎月のローン支払いで無理はできない」「できるだけ堅実に進めたい」という思いが強くなりがちです。

ところが実際には、堅実な判断が数年後に家計を静かに追い詰めていくケースを少なからず目にします。

今日は、変動金利を選んだことで老後の資金計画が少しずつ崩れていった50代夫婦の実例をご紹介します。

老後を見据えた「正しいはずだった」住み替え判断

今から8年ほど前、私のもとに、当時50代前半のAさん夫婦から住み替えの相談がありました。

お子さんはすでに独立し、これからは夫婦2人での生活。築20年を超えた戸建ては、階段の上り下りや日々の管理が負担になりつつあり、利便性を重視してマンションへの住み替えを検討されていました。

住み替えの進め方自体はごく一般的で、無理のない計画です。

  • 戸建てを売却し、その資金を購入に充当
  • マンション購入に合わせて住宅ローンを組み直す
  • 老後を見据え、管理負担の少ない住環境を選ぶ

Aさん自身も、「老後に向けた前向きな整理」と受け止めていました。この時点では、誰が見ても誤った判断には見えなかったのです。

「ここ数年、金利は上がっていません」その一言で選んだ変動金利

当時は、長期にわたる金融緩和の影響で低金利が続いており、住宅ローンの説明はどこでも似たような内容でした。

「変動金利は今、とても低い水準です」
「実際、選ばれている方の多くが変動金利です」
「固定金利より、毎月の返済額を抑えられます」
「当面、大きく金利が上がる可能性は高くありません」

実際、Aさん夫婦が選んだ変動金利は年0.975%。月々の返済額も想定の範囲内で、家計には一定の余裕がありました。

Aさん夫婦も「ここ数年、金利はほとんど上がっていない」「この先もしばらくは大丈夫だろう」と考え、老後に無理を残さない判断ができたことで安心して入居します。しばらくの間、その判断を疑う理由はありませんでした。

しかし、問題はその先にあったのです。

少しずつ進む利上げ。嫌な予感は現実になっていった

最初の利上げで増えた返済額は、ごくわずかでした。明細を見た瞬間、Aさんの頭をよぎったのは言葉にしづらい小さな違和感です。

「また上がるかもしれないな…」

そう感じつつも、「数千円程度なら問題ないだろう」と自分に言い聞かせ、生活を変えることはありませんでした。ところが利上げは、一度きりでは終わりません。

半年ごとに繰り返され、少しずつ、しかし確実に返済額は増えていきます。気づいたときには金利は1.25%まで上昇し、住宅にかかる毎月の負担はトータルで2〜3万円近くになっていました。

「この先も、同じペースで払い続けられるのだろうか」

そんな考えが、ふと頭から離れなくなっていったそうです。

「何のために住み替えたんだろう…」

Aさんは、そう自問する日が増えていったといいます。

逃げ場を失った「変動金利」という固定費

返済額が増え始めたあと、Aさん夫婦は固定金利への借り換えを考えました。少しでも負担を固定できないか、真剣に検討したのです。

しかし、その時点では金利条件はすでに悪化していました。

さらに「年齢」「残っているローン期間」などの条件も重なり、借り換えは現実的な選択肢にはなりませんでした。

売却することも考えましたが、提示された査定額は想定より低く、その価格で売ると住み替えを前提に立てた家計が成り立たなくなります。結局、選べる手段は「今の家に住み続けること」だけでした。

金利差は1%にも満たない数字です。それでも、人生の後半に入った家計にとっては、その差が毎月の負担として重くのしかかります。

最大の誤算は、「金利が上がること」を前提に考えていなかったこと。変動金利は、いつの間にか調整のきかない固定費に変わっていたのです。

住み替え世代が見落としやすい、住宅ローン判断の落とし穴

このケースで本来考えておくべきだった視点は、決して難しいものではありません。

  • 金利が上がった場合の返済額を事前に試算しておく
  • 「今払える金額」ではなく「将来も無理なく耐えられる金額」で判断する
  • 固定金利と変動金利の両方を組み合わせる「ミックスローン(借入額の一部を固定金利、一部を変動金利で借りる方法)」を視野に入れる

変動金利そのものが悪いわけではありません。問題になるのは、「金利が上がったあと、どうするのか」を決めないまま選んでしまうことです。

住宅ローンは、契約した瞬間に終わる話ではありません。完済するまで、何十年も家計に影響を与え続ける契約です。

「今なら大丈夫」という言葉だけで判断すると、数年後、暮らしに余裕を持たせる選択が取りにくくなることがあります。だからこそ、金利が上がった場合も想定したうえで、冷静に判断してほしいと思います。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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