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「行きすぎた軽量化」に長野県警が異例の警告。山岳遭難救助隊が教える"削ってはいけない“冬山装備リスト

  • 2026.1.14
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

近年、登山の軽量化が注目を集めています。荷物を軽くして危険箇所を素早く抜けるという考え方は、リスク回避の手段として有効です。しかし、行きすぎた軽量化が命取りになるケースがあります。

長野県警察山岳遭難救助隊が2026年1月12日、X(旧Twitter)で「行きすぎた軽量化」に警鐘を鳴らし、話題になっています。

「体力作りがおろそかになっていませんか?」救助隊が投げかけた問い

長野県警察山岳遭難救助隊が行った投稿では、八ヶ岳のバリエーションルートを例に、「必要な物を携行できないのであれば、登る山・ルートのレベルを下げるべき」と明言。ツェルト・予備バッテリー・防寒具など、最低限必要な装備の携行を呼びかけています。

軽量化して危険箇所を素早く通過する考え方自体は否定していませんが、そのための「体力作り」や「必要装備の携行」がおろそかになっていないか、という重要な指摘です。

なぜこれほど危険なのでしょうか。

長野県が発行する「登山Safety Book」によれば、冬山では吹雪、寒冷、雪崩など厳しい自然条件に直面します。特にバックカントリーでは、天候急変による視界不良、装備不足による行動不能、低体温症のリスクが常に存在します。

冬山登山に必要な装備とは

長野県警察本部が発行する資料「バックカントリーで遭難しないために」では、以下の装備を必ず携行するよう呼びかけています。

雪崩対策

  • ビーコン
  • プローブ
  • ショベル
  • エアバッグ等

ハイクアップ装備

  • クライミングスキン(シール)
  • スノーシュー等

現在地確認装備

  • GPS
  • 携帯電話
  • 地図
  • コンパス等

緊急時対応装備

  • 携帯電話の予備バッテリー
  • ヘッドランプ
  • 防寒着
  • エマージェンシーシート
  • ビバーク装備
  • 非常食等

「登山Safety Book」では、例えば八ヶ岳連峰について「稜線付近は北西風が強く、凍結した斜面や岩場が連続します。確実な技術としっかりとした冬山装備が必要」と明記。チェーンスパイクだけでなく、必ずアイゼンも携行すること、特に南八ヶ岳では簡易的なものではなく、12本爪のアイゼンが必要だと指摘しています。

また、八ヶ岳連峰は強風のため凍傷リスクが非常に高い山域であり、スマートフォンを使用する際はタッチペンを使用するなど手袋を外さない工夫も推奨されています。

道迷い、雪崩、立木衝突…長野県内で多発する遭難の実態

長野県内では、十分な経験や準備のないまま安易にバックカントリーへ飛び出し、道迷いや雪崩などにより遭難する事案が多発しています。

主な遭難の原因は以下の通りです。

●道迷い・行動不能
事前に地形やコースの確認をしていない、GPSなどを所持していない、他人のシュプールを頼って現在地が分からなくなる、技量不足により身動きが取れない、ハイクアップ装備がなく登れない

●立木への衝突・転倒
ゲレンデ感覚で自分の技術や体力を超えるコースに入り立木に衝突したり、転倒して負傷

●雪崩
自分で発生させた雪崩に巻き込まれるだけでなく、仲間や他のスキーヤーが発生させた雪崩に巻き込まれる

バックカントリーは自己責任ですが、遭難すれば救助側にも雪崩や悪天候などのリスクが高い上、行方不明になった場合は残された家族にも大きな負担となります。

「装備の重さは命の重さ」共感広がる登山者たちの声

今回の投稿に対し、SNS上では以下のような声が寄せられました。

「事故は一定確率で起きる。救助までの数日を耐える装備は手放せない」「雪山では技術・体力・装備・知識のどれか一つでも欠ければ、たちまち窮地に陥る」といった装備の重要性を指摘する声や、「ツェルト入ってない人が多い。ハイレベルの山をやってる人は必ず入っている」「装備の重さは命の重さ」という意見が目立ちました。

また、「夏も冬も、最低でも一晩耐えられる装備は必ず持っていく」という実践的なアドバイスや、「重くなっても簡単に張れるテントが良い」といった実用面での意見も見られました。

さらに、「軽視して冬山登山する人はやめてほしい。救助にあたる方々やそのご家族の思いを考えると申し訳なく思う」という、救助隊への配慮を求める声も多数寄せられています。

自分の実力を見極め、安全な登山を

長野県警察山岳遭難救助隊の投稿は、登山の軽量化というトレンドに対し、本質的な問いを投げかけています。「必要な物を携行できないのであれば、登る山・ルートのレベルを下げるべき」というメッセージは、登山者一人ひとりが自身の体力と技術を見極め、安全な登山を心がけることの重要性を改めて示しています。

軽量化は手段であって目的ではありません。本当に大切なのは、必要な装備を確実に携行できる体力を身につけること、そして自分の実力に見合った山を選ぶことです。冬山では、装備の重さが命を守る重さになるのです。


参考:
長野県警察山岳遭難救助隊(@NAGANO_P_M_R)公式Xアカウント
「登山Safety Book 冬山山岳情報 令和7年」(長野県)
「バックカントリーで遭難しないために」(長野県警察本部 山岳安全対策課)
「信州の冬山、バックカントリーを楽しむ皆様へ」(長野県)