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「WBCを流せない野球居酒屋」の絶望。無断上映は最大1000万の罰金も…侍ジャパンを“合法的”に映す方法は

  • 2026.3.5
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

2026年大会の開催が近づくWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。大会期間中は、試合をきっかけに人が集まり、居酒屋やスポーツバーで中継を流す光景を思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、2026年大会はNetflixが日本国内での独占配信となる予定です。これまでのようにテレビ中継を流す感覚で、個人契約のNetflixアカウントを店内で使用した場合、法律上問題はないのでしょうか。著作権侵害と判断された場合、どのような責任が問われる可能性があるのかも気になるところです。

本記事では、著作権法に詳しい弁護士・寺林智栄さんに、2026年WBC中継を飲食店で上映する際に生じ得る法的リスクと、現状で考えられる対応の考え方について話を聞きました。知らずに違反してしまう事態を避けるため、いま押さえておきたいポイントを整理します。

Netflix独占配信のWBC中継、店内で流したら著作権侵害?

---Netflixが放映権を持つWBC中継を、飲食店が個人契約のアカウントで店内に上映することは問題ないのでしょうか?

寺林智栄さん:

「Netflixが放映権を保有するWBC中継を、野球居酒屋などの飲食店が権利者の許諾なく店内上映した場合、著作権法上いくつかの問題が生じ得ます。まず、WBC中継は映像著作物として保護されており、店舗という公衆の出入りする場所で上映する行為は『公衆送信』や『上映』に該当します。家庭内視聴を前提とした配信契約を店舗営業に利用すれば、契約違反にとどまらず、著作権者の上映権(著作権法22条の2)侵害となる可能性があります。

さらに、営業目的で集客に利用すれば、営利目的性も明確であり、差止請求や損害賠償請求の対象となり得ます。悪質な場合には刑事責任が問題となる余地もあります。

店舗での上映には原則として別途の業務用契約や明確な許諾が必要であることに注意すべきです。」

無断上映の罰則は? 刑事・民事の両面から解説

---もし無断で店内で上映してしまった場合、どのような法的責任(刑事・民事)が問われる可能性があるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「Netflixが放映権を有するWBC中継を無断上映し、著作権侵害と判断された場合、刑事・民事の双方で責任が問われるリスクがあります。

まず刑事面では、著作権法119条1項により、上映権侵害について『10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれの併科』という重い法定刑が定められています。法人営業として行われた場合には両罰規定(同法124条)により、店舗運営会社にも罰金刑が科される可能性があります。もっとも、著作権侵害罪は原則親告罪であり、権利者の告訴が前提となります。実務上はまず警告や、以下に述べる差止請求がなされ、それでも是正されない場合に刑事手続へ進むという流れが一般的です。

民事面では、著作権法112条に基づく差止請求や、114条に基づく損害賠償請求が想定されます。損害額は、通常受けるべき利用料相当額や不当利得を基礎に算定されることが多く、営業目的で集客に利用していた場合には高額化する可能性もあります。加えて、信用毀損による営業上の不利益も無視できません。」

合法的にWBCを店内上映する方法はある? 2026年大会の特殊事情

---2026年WBC中継を飲食店が合法的に店内上映する方法は、現在あるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「WBCの2026年大会はNetflixが日本国内で独占配信権を持つ形となり、従来のようなテレビ局経由の放映がなくなっているという特殊な状況にあります。

このため、飲食店が店内で合法的にWBC中継を上映したい場合、一般的な個人用アカウント契約での視聴だけでは不十分です。通常、飲食店やスポーツバーがスポーツ中継を流す際には、権利者(放映権を持つ事業者)との『商用ライセンス契約』を締結し、店内放映の許諾を得る必要があります。たとえば、サッカーやプロ野球の中継を流すスポーツバーでは、個人契約ではなく業務用契約を結ぶのが一般的です。

しかし、今大会のWBCについては、Netflixの広報が飲食店からの問い合わせに対して、個人利用のみを想定したサービスであり、商用利用の環境は提供していない(=商用ライセンス契約を結べない)という回答が出ているとの報道もあります。これにより、飲食店が合法的に中継を店内上映すること自体が現実的に困難なケースが指摘されています。

したがって、合法的に店内上映したい場合には、(1)Netflix以外の権利を管理する団体や配信事業者と商用契約を得る方法、あるいは(2)公式に認められたパブリックビューイング施策への参加や、別途権利処理が可能な大会関連映像の利用枠を利用することなど、権利者との明確な合意・契約関係を確保する必要があります。個人契約アカウントを店内で使うような形では商用利用とみなされ、著作権上問題が生じるおそれがある点に注意すべきです。」

2026年WBC、飲食店は「流せない」可能性も? 権利確認は必須

個人契約のNetflixアカウントを使用して上映することは、著作権侵害という重いリスクを伴う可能性があります。

現状、Netflixが商用ライセンス契約を提供していないとの情報もあり、飲食店が合法的にWBC中継を店内上映すること自体が極めて難しい状況です。もし無断上映が発覚すれば、罰金や懲役といった刑事責任、差止請求や高額な損害賠償といった民事責任の両面で追及されるおそれがあります。

今後の動向に注視するとともに、安易な上映は避け、権利者からの明確な許諾が得られない限りは、店内でWBC中継を流さないという慎重な姿勢が賢明と言えるでしょう。


監修者:寺林智栄 2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。