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『空港の備品プラグ』抜いてスマホ充電した人の“末路”…私的な利用は犯罪になる?→弁護士「発覚すれば警察の捜査対象に」

  • 2026.1.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「外出先でスマホの充電が切れそう!」そんな時、目の前のコンセントを無断で使うのは、実は重大な法的リスクを伴います。

たとえ電気代が数円程度でも、法的には「電気窃盗罪」に問われる可能性があるのです。本記事ではベリーベスト法律事務所 齊田貴士弁護士が、黙示の承諾の境界線や、緊急時の「緊急避難」の可否について詳しく解説します。

「ご自由にお使いください」がない場合は犯罪?法的判断の3つの境界線

---『ご自由にお使いください』という表示がないコンセントを使用した場合、法的には直ちに『電気窃盗(刑法235条・245条)』にあたるのでしょうか? それとも、開放的な場所にあることで『黙示の承諾(使っても良いだろうという暗黙の了解)』があったと判断される余地はあるのでしょうか? 罪に問われるかどうかの法的な境界線(判断基準)を教えてください。

齊田 貴士さん:

「電気窃盗罪に問われるかどうかは、行為者に不法領得の意思を含む電気窃盗の故意が認められるか否かに加え、施設管理者ないしコンセントの所有者の承諾(黙示の承諾を含む。)があったと法的に評価できるのか否かが判断基準になると思います。

そして、承諾(黙示の承諾を含む。)の有無は、以下の点を総合的に考慮して判断されると思います。

1.コンセントの設置場所や管理状況
例えば、誰でも自由に出入りできる共用スペースか、特定の関係者しか出入りできない場所か。「ご自由にお使いください」という使用に関する表示の有無など

2.施設管理者ないし所有者の態様
例えば、長時間にわたり多くの人が使用しているにもかかわらず黙認しているのか、注意しているのかなど

3.使用の態様、利用者の立場
例えば、短時間の充電・電力消費か、長時間の充電・電力消費か。利用者は施設の正規利用者か、通りすがりの第三者かなど。」

被害額1円でも警察が動く?「微罪処分」と「逮捕・送検」を分ける悪質性

---スマホ充電による電気代は極めて少額(数円程度)ですが、それでも施設管理者側が被害届を出せば、警察は動く(逮捕・送検される)ものなのでしょうか? 微罪として処理されるケースや、逆に『金額に関わらず法的責任を厳しく追及される』悪質なケース(常習性や長時間占有など)の違いについて教えてください。

齊田 貴士さん:

「被害の程度がごくわずかでも、電気窃盗は犯罪であるため、施設管理者側が被害届を出すなど発覚すれば警察の捜査対象になります。

ただし、①被害額が少額であること、②前科が無いこと(初犯)、③示談や被害弁償が行われていること、④行為者が自分の罪を認め反省し、再犯のおそれが低いこと、⑤身元引受人や監督者がいるといった事情があれば、微罪処分として処理される可能性があります。
なお、微罪処分は、警察が上記の要素などを個別具体的に総合考慮したうえでなされるあくまで例外的な処分であり、ある要件が充足されれば必ず微罪処分になるというわけではないため注意が必要です。
現金2円のさい銭泥棒(神戸地判平18.3.14)や時価160円相当の食品の盗み食い(東京高判昭60.10.14)で窃盗罪が成立したケースも存在します。

他方で、常習性が認められたり、無断で盗用したことが明らかであるにもかかわらず「やっていない」と否認したり、長期的に盗み続けるなど、悪質な場合には逮捕される可能性があります。実際、延長ケーブルを長くつなぎ合わせて隣接している住宅の外壁に設置されたコンセントへと接続し、7か月にわたって電気を無断盗用し、逮捕されたケースがあります。

「英語表記が小さすぎた」などの理由で、契約が無効(または取り消し)になるケースは前述②のとおり、観光客側に重過失がなければあり得ると思います。」

「航空券が出せない!」緊急事態なら無断充電も許される?緊急避難のハードル

---例えば『充電がないと航空券が表示できず、飛行機に乗れない』といった切迫した状況下での無断充電は、法的な『緊急避難(刑法37条)』として違法性が阻却される(罪にならない)可能性はあるのでしょうか? それとも、モバイルバッテリーを買うなどの代替手段がある以上、緊急避難は認められないのでしょうか?

齊田 貴士さん:

「結論からいうと、緊急避難が認められない可能性が高いと思います。

緊急避難が成立するための要件の中に、1.自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する危難が現存していること、または間近に迫っていること、2.危難を避けるためにやむを得ずに行った行為であること、すなわち、その行為以外に危難を避けるための方法がなく、他にとるべきより侵害性の低い手段が存在しないこと(補充性)という要件があります。

まず、1.について、航空券が表示できないこと、飛行機に乗れないことといった単なる事実上の不利益が、「生命、身体、自由又は財産に対する危難」とまでいえるかというと疑問です。

また、2.について、例えば、以下のⅰ~ⅲのように、より侵害性の低い他の代替手段が存在することも踏まえると、緊急避難の要件は充足せず、一般的には緊急避難は認められない可能性が高いと考えます。

・モバイルバッテリーを購入する
・空港内の有料・無料の充電サービスを利用する
・航空会社のカウンターに事情を説明し、提示方法を相談する、紙の搭乗券を発行してもらうなどの対応を求める、もしくは許可を得て必要最小限充電させてもらう」

わずかな電力でも「窃盗」は窃盗。マナーとルールの遵守が身を守る

公共の場での無断充電は、設置状況や利用者の立場によって「電気窃盗罪」が成立する可能性が十分にあります。たとえ航空券が表示できないといった窮地であっても、代替手段がある限り「緊急避難」として認められるのは困難です。わずかな電力だからと安易に考えず、許可を得るか、正規の充電サービスを利用することが不可欠です。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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