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『持ち家』と『賃貸』…老後はどっちが幸せ?→お金のプロが明かす、「資産価値」だけではない“意外な結論”とは

  • 2026.1.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

老後の住まいを「持ち家」にするか「賃貸」にするか。これは人生後半のライフプランにおいて、最も大きく、かつ悩ましい選択の一つです。一般的には資産価値やトータルコストといった「金銭的な損得」で比較されがちですが、住まいは毎日の生活の基盤であり、精神的な幸福度とも密接に関わっています。

本記事では、金融機関勤務の現役マネージャーであり1級FPの中川佳人さんにインタビュー。数字だけでは測れない「心の安定」や「生活の質」という観点から、それぞれの選択がもたらすメリット・デメリットを深掘りします。また、多くの人が陥りやすい資金計画の落とし穴や、後悔しない決断を下すために確認すべき「自分軸」の見つけ方について解説していただきました。

「拠点の安心感」か「変化への身軽さ」か。精神面から見る住まいの選択

---老後の住まい選びにおいて、経済的な損得だけでなく、精神的な安定や生活の質という観点から、持ち家と賃貸それぞれの幸福度を左右する要因は何でしょうか?

中川 佳人さん:

「老後の住まいにおける幸福度は、持ち家か賃貸かという形式そのものではなく、『拠点があることによる安心感』と『変化に対応できる身軽さ』のどちらを重視するかによって大きく左右されます。

持ち家は、長く住み続けられる場所があることで将来への見通しが立ちやすく、地域とのつながりや『自分や家族の居場所』を持つ充足感が精神的な安定につながります。また、年齢とともに身体機能が変化した場合でも、手すりの設置や段差解消など、自分の判断で住まいを改修できる点は安心材料です。一方で、老朽化への対応や管理責任、将来の相続をどうするかといった課題が、心理的な負担になるケースもあります。

賃貸は、建物の維持管理から解放され、健康状態や家族構成の変化に応じて住み替えができる柔軟性が魅力です。ただし、高齢期には入居を断られる不安や、住み続けられるかどうかの不安を感じやすい点には注意が必要です。

老後の住まい選びでは、経済的な損得だけで判断するのではなく、自分にとっての『心の安定』がどこにあるのかを見極めることが重要です。将来起こり得る不安やリスクを具体的に想定し、自分や家族にとって幸せな選択はどちらかを考える視点が、納得感のある選択につながります。」

「持ち家=資産」の思い込みは危険? 老後資金を考える際に見落としがちなコストと誤算

---老後資金を考えて「賃貸のまま貯蓄を増やす」「中古マンションを購入してローンを組む」といった選択をする際、見落としがちな落とし穴や誤算はありますか?

中川 佳人さん:

「老後資金を考えて住まいを選ぶ際に見落としがちな誤算は、持ち家を無条件に『資産』と捉え、所有に伴う継続的なコストやリスクを十分に織り込まない点にあります。

住宅購入は生活のための選択である一方、経済的には不動産という資産を長期保有する行為です。持ち家は資産になると考える方が多いですが、多くの不動産は購入後に価値が下がっていくケースも少なくありません。また、『ローンが終われば住居費は不要になる』という考えは誤解です。実際には、固定資産税や管理費、修繕積立金といった支出はローン完済後も続きます。

特に中古マンションでは、管理費や修繕積立金だけで毎月数万円の負担が生じることもあり、金利上昇や災害リスク、住み替えにくさといった点も購入後の落とし穴になりやすいです。

一方で、賃貸のまま貯蓄を増やす場合は、初期費用や維持費を抑えやすく、資産形成の面では有利にはたらくことが多いでしょう。しかし、『家を買いたかった』『子どもが帰る家を作ってあげたかった』といった感情面の問題は解消されないこともあります。賃貸を選ぶ場合は、金銭面だけでなく、自分や家族の価値観と照らし合わせて選択することも大切です。

住宅費は人生の中で最も大きな支出の一つです。家計が破綻しないよう金銭的な観点で選択することを基本にしながら、自分や家族の価値観も考慮し、後悔のない選択を心がけましょう。」

迷った時に整理すべき優先順位

---老後の住まい選びで迷っている方が、まず最初に確認すべき「自分にとっての優先事項」の見極め方を教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「老後の住まい選びで迷っている方が、まず確認すべき優先事項は、『経済的な合理性』と『人生の満足度』のどちらを重視したいのか、その軸を明確にすることです。

住まいにおける正解は一つではなく、年齢や家族構成、これからどのような老後を送りたいかによって大きく変わります。数字だけを見れば、持ち家は必ずしも有利とは限らず、経済的には不動産という資産を長期間保有する行為になります。一方で、所有することで得られる安心感や愛着、理想の空間で暮らす満足感は、数字では測れない価値です。こうした『数字』と『感情』を整理しないまま検討を始めると、判断がぶれやすくなります。

見極め方としては、まず両者を切り分けて考えることが大切です。将来のお金の不安を減らし、身軽な生活を重視したいのであれば、住み替えの自由度が高い賃貸を選ぶ考え方が価値観に合いやすいでしょう。反対に、多少コストがかかっても、自分らしい住まいで暮らすことが人生の充実につながるのであれば、予算の範囲内で住宅を購入することも選択肢になります。

老後の住まい選びでは、まず自分がどのような暮らしに幸せを感じるのかという人生の指針を言葉にすることが出発点になります。その上で、資産価値や維持費といった数字の現実を一度整理し、将来にわたって家計に無理が生じないかを確認することが、後悔しない住まい選びにつながります。」

「数字」と「感情」の両面から、自分らしい老後の形を描く

老後の住まい選びにおいて、万人に共通する唯一の正解はありません。中川さんが指摘するように、持ち家には「居住の安定と安心」がある一方で、終わりのない維持コストや管理リスクが伴います。対して賃貸は「資金と移動の自由」があるものの、高齢期の契約不安や「自分の城」を持てない寂しさを感じることもあります。

重要なのは、経済的な損得勘定だけで決めるのではなく、「自分がどのような暮らしに幸せを感じるか」という価値観を明確にすることです。その上で、現実的なコストやリスクを冷静に計算し、家計が破綻しない範囲で選択すること。この「感情」と「数字」のバランスを整理することこそが、納得のいく老後への近道となります。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。