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神社の『お守り』フリマアプリで“高額転売”…SNSでは物議「罰当たり」「信じられない」→弁護士「処罰することはできない」

  • 2026.1.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

神社で授かった人気のお守りが、フリマアプリで定価の何倍もの高値で取引されている──。そんな光景が話題になり、SNSでは「神様を商売道具にするなんて罰当たりだ」「信じられない」「法的に取り締まれないのか」との声が寄せられています。

しかし、倫理的に「アウト」に見えるこの行為、法律の専門家の目から見ると、意外にも「直ちに犯罪とは言えない」という現実があります。では、どこまでがセーフで、どこからが逮捕もあり得る「ブラック」な領域なのでしょうか?

今回は、ネット上の法律問題に詳しい寺林智栄弁護士にインタビュー。「個人の転売はなぜ罪に問えないのか」「組織的な“転売ヤー”を追い詰める法律はあるのか」、そして「詐欺罪になる決定的なライン」について、感情論抜きで法的に解説していただきました。

「バチが当たる」だけでは裁けない

---世間からは「罰当たり」と猛批判されていますが、法律の専門家から見て、自分でお金を出して授かったお守りを、フリマアプリで高値で売る行為は「犯罪」になるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「自分でお金を出して授かった御朱印やお守りを、フリマアプリで転売する行為そのものが、直ちに犯罪になるとは限りません。

日本の刑法では、「転売が不道徳である」「罰当たりである」といった価値判断だけで処罰することはできず、あくまで構成要件に該当するかどうかが問題になります。

まず、詐欺罪や窃盗罪には通常該当しません。自分が正当に取得した物を売っている以上、「他人の財物を欺いて奪った」「盗んだ」という要件は満たさないからです。また、古物営業法も、反復継続して営利目的で取引を行う場合を除き、個人が単発で売却する行為まで直ちに規制するものではありません。

もっとも、犯罪になり得るケースが全くないわけではありません。
例えば、実際には参拝していないのに「現地で授かった本物の御朱印です」と虚偽の説明をして高値で売れば、詐欺罪が成立する可能性があります。また、寺社が明確に「転売禁止」と表示しているにもかかわらず、組織的・大量に転売を繰り返すような場合には、業法違反や民事上のトラブルに発展する余地もあります。」

転売ヤーなら逮捕できる? 大量購入・継続販売で抵触する可能性がある「古物営業法」の壁

---個人が不要になったものを売るのではなく、初めから「転売目的」で神社を回り、大量のお守りを出品している場合、「古物営業法違反(無許可営業)」に問える可能性はありますか?

寺林智栄さん:

「転売目的で神社を回り、お守り等を大量に仕入れて継続的に出品している場合、古物営業法違反(無許可営業)に問われる可能性はあります。

古物営業法は、「古物」を営利目的で、反復継続して売買・交換する行為を規制しています。ポイントは①古物に該当するか、②営業に当たるか、の2点です。お守りや御朱印は、一度授与された時点で「使用の有無にかかわらず、取引を通じて再流通する物品」と評価される可能性があり、一般論としては古物に該当し得ます。

次に「営業」に当たるかですが、これは単発の処分行為では足りず、最初から転売を目的として多数取得し、フリマアプリで継続的に販売している場合には、営利性・反復継続性が肯定されやすくなります。実際、警察実務でも、仕入れの動機、出品数、販売頻度、利益額などを総合的に見て「実質的に商売かどうか」が判断されます。

もっとも、現実には御朱印やお守りの転売について、古物営業法違反として摘発される例は多くありません。宗教的性質の強さや少額取引であることから、直ちに刑事責任を問われるハードルは高いのが実情です。ただし、「転売ヤー」と同様の手法で組織的・大量に行えば、行政指導や捜査の対象になるリスクは否定できません。」

偽物や「効果の保証」はアウト? 詐欺罪や商標法違反になる境界線

---神社側も「転売禁止」を掲げて対策していますが、もし転売ヤーが偽物を作って売ったり、効果効能を誇張して(例:「絶対宝くじが当たる」など)売ったりした場合、詐欺罪や商標法違反になるラインはどこでしょうか?

寺林智栄さん:

「「本物であると誤信させる偽物の販売」や「事実でない効果効能を断定的にうたって販売する行為」は、刑事責任を問われる可能性が高い行為です。ここは単なるグレーゾーンではなく、明確に「アウト」になり得るラインと言えます。

まず詐欺罪(刑法246条)との関係です。詐欺罪が成立するためには、①人を欺く行為、②錯誤に基づく処分行為、③財産的損害が必要です。例えば、実際には神社で授与されていない偽物のお守りを「由緒ある○○神社の正規品」と説明して販売すれば、虚偽説明によって購入者を欺き、金銭を支払わせているため、詐欺罪の構成要件を満たす可能性が高いでしょう。また、「絶対に宝くじが当たる」「必ず病気が治る」など、客観的に保証できない効果を断定的に表示して販売する行為も、購入者の判断を誤らせる虚偽説明として詐欺に該当し得ます。

次に商標法違反です。神社名やロゴ、特徴的な図柄が商標登録されている場合、これと同一又は類似の標章を、許可なく商品や広告に使用すれば、商標権侵害となる可能性があります。特に、偽物に正規神社名を表示して販売する行為は、「出所混同」を生じさせる典型例で、刑事罰の対象になることもあります。

さらに、表示内容によっては景品表示法違反や、民事上の不法行為責任を問われる余地もあります。」

「不道徳」と「違法」は別問題。法規制が難しいからこそ、買う側のモラルが問われる

「神聖なものを転売するなんて許せない」という感覚は、多くの日本人に共通するものです。しかし寺林弁護士の解説によれば、日本の刑法はあくまで「構成要件」に基づいて判断されるため、感情論だけで処罰することはできません。

今回のポイントを整理すると、以下の3点になります。

  1. 個人の転売は原則「適法」 自分の所有物を売る行為自体は、倫理面はさておき、直ちに犯罪にはなりません。
  2. 「業(なりわい)」とみなされればリスクあり 転売目的で大量に仕入れ、継続的に販売している場合は「古物営業法違反」に問われる可能性があります。
  3. 「嘘」をついたら犯罪 偽物を本物と偽ったり、「絶対当たる」と効果を保証したりする行為は、詐欺罪などの重い罪になります。

法律で完全に取り締まることが難しい以上、この問題の解決は「買う人がいなくなること」に尽きるのかもしれません。 「現地に行けないから」と安易にアプリで購入する前に、それが本当にご利益のある行為なのか、一度立ち止まって考えてみる必要がありそうです。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始する。Yahoo!トピックスで複数回1位を獲得。読んだ方にとってわかりやすい解説を心がけています。