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「大地震で被害が大きくなる」一級建築士が警告。“築浅は地震に強い”は誤りだった…倒壊リスクがある「住宅」の特徴とは?

  • 2026.1.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「新耐震基準で建てられた家なら、震度7の大地震でも絶対に安全」そんな期待を持つ方は多いでしょう。

しかし、実際には「新耐震=無傷」という誤解があります。なぜなら建築基準法は、命を守るための最低限の基準だからです。本当に安心できる家とは何か?

木造住宅の設計や注意点は?一級建築士 yukiasobiさんの見解をもとに、正しい耐震性の理解と、家選びや設計のポイントを解説します。この記事を読むことで、地震に強い家の見極め方が分かります。

新耐震基準は安心の絶対条件?最低限の安全基準の真実

---多くの人が「今の法律(新耐震基準)で建てられた家なら、震度7でも大丈夫」と思っています。 しかし、一般的な木造2階建て住宅の多くは、ビルやマンションのような厳密な「構造計算」が義務付けられておらず、簡易的なチェック(壁量計算など)だけで建てられているというのは本当ですか? この「4号特例」と呼ばれる法律の仕組みが、大地震の際にどのようなリスクを生むのか教えてください。

yukiasobiさん:

「新耐震で建てられた家なら、震度7でも絶対に安心」と思われがちですが、ここは少し注意が必要です。

建築基準法は、大地震でも“倒壊して命が奪われるリスク”を減らすための最低限の基準であり、「無傷」を保証するものではありません。
そしてご質問のとおり、一般的な木造2階建て住宅では、マンションのような厳密な構造計算が必ずしも求められず、壁の量や金物などをルールに沿って確認する“簡易的な方法(壁量計算など)”で設計されることが多いのが実情です。

ここで関係するのが、いわゆる「4号特例」です。これは、一定規模の木造住宅について、建築確認で構造のチェックが省略される仕組みです。
この仕組みが生むリスクは、「法律に合っていれば必ず強い家になる」というより、設計のミス、構造的な弱点の見落としが起きやすくなる点にあります。例えば、壁の配置のバランスが悪い、金物が不足している――こうした要素が重なると、大地震で被害が大きくなる可能性があります。
なお、2025年4月の建築基準法改正で、この4号特例は縮小されました。今後は、一般的な木造2階建てなどでも、確認申請で構造関係の図書や審査がより求められる方向に変わっています。つまり、制度としては「チェックが入りやすくなる」流れです。

木造住宅の設計次第で変わる地震リスクと注意すべき間取り

---最近は柱や壁が少ない「広々としたリビング」や「大きな窓」、「吹き抜け」が人気です。 デザイン的には魅力的ですが、構造のプロから見ると、これらは「家のねじれ」や「直下率(1階と2階の壁の位置のズレ)の悪さ」につながり、倒壊リスクを高める要因になり得るのでしょうか? 「一見オシャレだけど、地震には弱い家」の特徴を具体的に教えてください。

yukiasobiさん:

結論から言うと、設計のしかた次第でリスクは高まります。

理由はシンプルで、木造住宅は地震に耐えるとき、主に「壁(耐力壁)」が踏ん張るからです。ところが最近人気の間取りは、どうしても壁が少なくなりがちです。特に注意したいのは次のタイプです。

•大きな窓が連続して、壁が取りにくい家
•1階が広いワンルーム、2階は個室で壁が多い家
→1階と2階で壁の位置がズレて、力の伝わり方が悪くなりやすい
•窓や吹き抜けが片側に偏っている家
→揺れたときに建物が“ねじれる”ように動きやすい
•ビルトインガレージなどで、1階が極端にスカスカな家
→1階が弱点になりやすい

ただし誤解してほしくないのは、「広いLDK=地震に弱い」と決めつけるのは間違いという点です。大開口や吹き抜けがあっても、必要な壁を適切な位置に入れ、梁や金物、床の強さも含めてきちんと設計すれば、成立させることは可能です。つまり、ポイントはデザインそのものではなく、“弱くなる条件が重なっていないか”です。

築年数だけじゃない!購入時に見るべき耐震の重要ポイント

---築年数に関わらず倒壊リスクがある木造住宅を見極めるために、住宅購入前や現在お住まいの方が確認すべき最優先のチェックポイントを教えていただけますでしょうか。

yukiasobiさん:

「築浅=安心」と思いたくなりますが、購入前・に見るべきポイントは、築年数だけではありません。優先順位が高いのは次の2つです。

①まずは書類(これが一番確実)
•検査済証があるか(工事完了後に検査を受けているか)
•図面一式が揃うか(平面図・立面図・断面図・構造に関する資料など)
•地盤調査の有無(地盤が弱いと、建物がどれだけ良くても不利になります)
•耐震等級や住宅性能評価があるか(あれば判断材料が増えます)

2025年4月以降に着工した新築では、4号特例縮小後の扱いになるため、構造に関する図書が以前より多くなる方向です。

②基礎・劣化・雨漏り・シロアリ(ここがあると一気に危険度が上がる)
•基礎の大きなひび割れ、床の傾き、建具が勝手に動く
•雨漏りの跡、天井や壁のシミ
•シロアリ被害、床がフワフワする

こうした劣化は、耐震性を一気に下げます。中古購入なら、ホームインスペクション(住宅診断)を入れて、客観的に見てもらいましょう。

正しい耐震の知識で安心できる木造住宅を選ぼう

今回の取材を通じてわかったのは、「新耐震基準で建てられている=絶対に安全」とは限らないことです。建築基準法は倒壊リスクを減らす最低限のルールに過ぎず、設計や材料のバランス次第で耐震性能は変わります。

人気の間取りでは耐力壁が不足しがちですが、適切な配置や補強で安全性は確保可能です。また、築年数だけに頼らず、検査済証や図面類、地盤調査の有無、そして建物の劣化状況を総合的にチェックすることが重要です。

これらを踏まえて、木造住宅を購入または新築する際は、専門家の意見も取り入れつつ、設計や現状をよく確認してリスクを抑えましょう。これからの安心できる住まいづくりの第一歩になるはずです。


監修者:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。