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「老後2000万円あれば安心」は間違いだった。物価高で崩壊する“老後プラン”…FPが明かす「本当に必要な貯蓄額」とは?

  • 2026.1.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「老後に2000万円必要」と言われた『老後2000万円問題』。ニュースでも大きく取り上げられ、多くの人が将来の資金について不安を抱きました。しかし最新の家計調査では、その不足額は大幅に減少し、「1200万円問題」として新たな見方が示されています。

とはいえ、物価上昇や医療費の増加など、老後のお金に関する課題はいまだに多く残されています。この記事では、最新データを踏まえた老後資金の実態と、これから何を意識すべきかについて、金融機関勤務の現役マネージャー 中川 佳人さんの見解をもとにわかりやすく解説します。

「老後2000万円問題」は今どう変わった?

---かつて話題になった「老後2000万円問題」とは、どんな問題で、最新の状況はどう変わっているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「2024年に発表された家計調査では、かつての『老後2000万円問題』は、『1200万円問題』へと縮小しています。

最新データを基に見直すと、老後に必要とされる資金の捉え方は、当初のイメージから変化してきていることが分かります。

もともと『老後2000万円問題』の根拠は、2017年の家計調査でした。

当時の高齢夫婦無職世帯では、毎月の赤字が約5.4万円とされ、その不足が30年間続くと約2000万円になる、という試算が示されました。この計算結果が象徴的に切り取られ、老後に不足する資金の目安として広く認識されるようになったのです。

一方、2024年の家計調査では、高齢夫婦無職世帯の実収入は月約25.3万円、支出は約28.7万円となり、月々の赤字は約3.4万円まで縮小しています。この水準が30年続いた場合の累計不足額は約1200万円程度となり、平均像だけを見ると、従来の2000万円という数字は大きめだったと再評価できます。

ただし、この結果をもって『2000万円は不要』と判断するのは注意が必要です。

家計調査はあくまで平均値であり、物価上昇や医療・介護費、住居費、ゆとりある生活費までは十分に反映されていません。そのため現在は、『老後資金=一律2000万円』ではなく、年金収入や支出水準、老後期間を踏まえて、個別に設計する考え方へと整理が進んでいます。」

物価上昇と医療費の影響で「一律の必要額判断」は難しい

---物価上昇が続く中、老後資金として2000万円では不足すると考えられる具体的な理由と、現在のインフレ率を踏まえた適正な貯蓄目標額を教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「2024年に発表された家計調査では平均的な不足額は縮小していますが、物価上昇が続く現在の環境では、老後資金を『2000万円で足りるかどうか』と一律の金額で判断すること自体が難しくなっています。

物価が上昇すると、同じ生活水準を保つために必要な支出は年々増えていきます。

一方で、公的年金はマクロ経済スライドの影響により、物価ほどには増えません。その結果、年金収入と生活費の差は徐々に広がりやすくなります。さらに、医療や介護の自己負担、住まいの修繕費など、高齢期に発生しやすい支出も見逃せません。

こうした状況を踏まえると、老後資金対策は『いくら貯めるか』だけで完結させるのではなく、『どう生きるか』とセットで考える必要があります。

特に重要なのは、できるだけ長く働き続けられるスキルを身につけておくことです。収入を得られる期間が延びれば、資産の取り崩しを遅らせることができます。

あわせて、健康を維持することも重要な老後対策です。健康であれば医療・介護費を抑えられるだけでなく、就労や社会参加の選択肢も広がります。これからの時代は、金額を固定するよりも、変化に対応できる生活基盤を整えることが、現実的な老後準備につながると言えるでしょう。」

老後資金づくりの第一歩は「家計の見える化」から

---物価高が続く今、老後資金を準備するにはまず何から始めるべきでしょうか?

中川 佳人さん:

「物価高が続く今、老後資金づくりの最初の一歩として最も大切なのは、毎月の支出を正確に把握し、収入の範囲内で生活できる家計を作っておくことです。

将来に備えていくら貯めるかを考える前に、まずは『収入の中で生活ができているか』を確認することが、老後不安を減らす出発点になります。

その理由は、インフレ下では生活コストが上がり続ける一方で、収入や年金が同じペースで増えるとは限らないからです。支出の全体像が見えないままでは、節約も資産形成も的外れになりやすく、結果として将来の備えが不十分になる恐れがあります。まずは家計が黒字か赤字かを把握し、無理のない生活水準を知ることが重要です。

具体的には、家計簿アプリなどを活用して日々の支出を可視化し、食費や光熱費など、物価高の影響を受けやすい費目を確認します。そこで大切なのは、極端に切り詰めることではなく、収入の中で生活が成り立っているかを確認する視点です。

そのうえで、インフレへの備えとして、余剰資金を株式などの資産に投資することも重要です。家計を整えたうえで少しずつ運用を取り入れる。この積み重ねが、インフレにも対応しやすい家計をつくり、老後の選択肢を広げてくれるでしょう。」

老後資金は固定数字でなく、自分らしい生活設計から

老後に必要なお金は一律ではなく、人それぞれの生活スタイルや収入、健康状態によって大きく異なります。

2024年の最新調査からは、昔言われた「2000万円問題」は平均で見るとやや大きく見積もられていたことが分かりましたが、物価上昇や医療費増加などが今後の家計を圧迫する可能性は依然として残ります。

大切なのは、固定した目標額にとらわれず、まずは「収入の範囲内で黒字家計をつくること」から始めることです。その上で、健康を維持しつつ、働き続けるスキルを磨き、資産運用も少しずつ取り入れることで、変化に強い老後の生活基盤を築くことができます。

今日からできることは、毎月の支出を正確に把握し、無理のない生活水準を知ること。これにより、老後の資金計画が立てやすくなり、不安も和らぐでしょう。老後のお金は「いくら必要か」ではなく「どう生きたいか」を軸に考える時代になっています。今から自分らしい備えを始めましょう。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance)

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている"