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「不倫する人の思考パターン」は犯罪者のそれと似ている

  • 2025.12.18
不倫する人の思考パターンは犯罪者に似ている / Credit:Canva

芸能人の不貞行為に関する報道は後を絶ちません。

身近な人が不倫をしていた、なんてこともあるでしょう。

欧米の多くの国では一般的に犯罪ではないものの、された側は深く傷つき、した側も大きな代償を負うことがあります。

では、不倫に踏み切るとき、人の頭の中では何が起きているのでしょうか。

アメリカのアラバマ大学(The University of Alabama)の研究者らは、自己申告で不倫をしたと認める人の投稿を犯罪学の理論で読み解きました。

その結果、彼らの「不倫を選ぶ動機」「見つからないための工夫」「罪悪感を薄める正当化」が、犯罪者の思考パターンと似た形で現れることを示しました。

この研究は2025年11月5日付の学術誌『Deviant Behavior』に掲載されました。

目次

  • 不倫する人は犯罪者と同じ思考パターンを持つと判明
  • 不倫する人は、どんな思考パターンを持つのか

不倫する人は犯罪者と同じ思考パターンを持つと判明

犯罪学は法律違反だけを扱う学問だと思われがちですが、社会の中で「なぜ人は害のある行為を選び、それをどう正当化するのか」を説明しようとする枠組みでもあります。

研究チームが不倫に注目したのは、それが犯罪と重なる部分を持つからです。

たとえば、不倫は、当事者にとってのなんらかの見返りがあり、相手に大きな害を与え、発覚すれば社会的・個人的に重大な結果を招き得ることなどです。

こうした経緯により、研究者たちは「不倫をした人は、犯罪者のように考え、行動するのか」という問いを立て、犯罪学で使われてきた3つの理論を当てはめて検証しました。

研究チームは匿名掲示板の「Talk About Marriage」と「Surviving Infidelity」から、不倫をしたと自己申告する投稿を集めました。

読み取れる情報の濃さを優先し、本文とコメントを含めて250語を超える投稿に限定したうえで、最終的に81人分を分析対象にしました。

内訳は男性64人、女性17人で、犯罪統計でしばしば見られる男女差に合わせる意図で男性を多めに含めた構成でした。

研究者は文章を精読し、3つの理論に関係する内容を丁寧に整理して、共通する思考と行動のパターンを抽出。

その結果、不倫はストレスや不満への対処として語られやすく、同時に発覚を避ける工夫と自分を許すための正当化が組み合わさって現れやすいことが示されました。

つまり、不倫する人の思考パターンは、犯罪者のそれと似ていることが分かったのです。

では、不倫する人は、具体的にどんな思考パターンを持つのでしょうか。次項で詳しく見ていきます。

不倫する人は、どんな思考パターンを持つのか

まずストレイン理論の観点では、不倫が苦しい状況や嫌な感情をしのぐための行動として語られる場面が多く見られました。

投稿の中で引き金として挙げられたのは、職場のストレス、金銭面の不安、家庭の負担といった生活上の圧力でした。

また、関係の中の問題も同じくらい強く関わっており、親密さの欠如や性的な不満が続く状況が、不倫を後押しする形で語られていました。

さらに研究が示したのは、不倫が古いストレスを消すどころか、二重生活の不安や罪悪感、発覚の恐怖といった新しいストレスを生みやすい点です。

そして、その新しいストレスから一時的に逃れるために、かえって不倫が続いてしまうような循環が語られていました。

次に、不倫する人は、「発覚したときの不利益を避けるために行動を細かく調整する」ことも分かりました。

例えば、使い捨ての電話や秘密のメールを使う、知り合いに会いにくい場所で会うなど、発覚の確率を下げる工夫が挙げられています。

さらに、家ではいつも通りを装ったり、むしろ配偶者に前より優しくしたりして、疑いの芽を摘もうとする語りも見られました。

場合によっては、相手の直感を揺さぶって「気のせいだ」と思わせるような言い方、いわゆるガスライティングに踏み込んだ例も語られていました。

発覚が近づいたり発覚後になったりすると、今度は結果の深刻さを小さくする方向に戦略が変わり、軽い内容だけを認めて核心を隠すような告白の仕方が確認されています。

最後に、不倫をした人は、「自分は悪い人間ではない」と思い続けるための正当化を使っていることも分かりました。

よく見られたのは責任の否認で、特に男性の投稿では、生物学的な欲求といった形で本能の問題として語る例がありました。

被害者の否認としては、配偶者が冷たい、性を拒むといった語りで相手を悪者に置き、自分の行動をやむを得ない反応に見せる形が見られました。

また、バレなければ害はない、告白しないのは相手を守るためだ、という理屈が使われています。

ここで興味深いのは、隠蔽の工夫が進むほど相手が気づかない状況が保たれ、「誰も傷ついていない」という自己正当化が強まりやすい点です。

これらは全て、犯罪加害者の思考パターンと似たものです。

もちろん、この研究にも限界はあります。

オンライン掲示板の自己申告に基づく質的研究であるため、すべての不倫当事者にそのまま当てはめられるとは限らず、投稿者の身元や語りの真偽を確かめられないのです。

それでも、この研究の意義は、不倫を道徳の話だけで終わらせず、ストレス、リスク管理、自己正当化という要素に分けて、人が一線を越えるときにどんな語りが組み立てられやすいかを見える形にしたところにあります。

また、犯罪学の理論は犯罪だけでなく、合法でも人を傷つける行為にも同じ骨格が現れ得ることを示し、犯罪者の隠蔽や正当化を理解する手がかりにもなり得ることが分かりました。

参考文献

The thought processes of cheaters closely resemble those of criminals, study suggests
https://www.psypost.org/the-thought-processes-of-cheaters-closely-resemble-those-of-criminals-study-suggests/

元論文

Examining Infidelity Through Strain, Restrictive Deterrence, and Neutralizations
https://doi.org/10.1080/01639625.2025.2584194

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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