パン好きエディターが太鼓判！　今年大注目のパン屋の「パネットーネ」5選【2025】

日本のクリスマスにいちごのショートケーキが欠かせないように、イタリアのクリスマスの定番お菓子が「パネットーネ」。リエヴィト・マードレと呼ばれるサワードウ（発酵種）を用いて、卵とバターをたっぷり使ったリッチな生地に、ドライフルーツを混ぜ込んだ、ミラノ発祥の発酵焼き菓子。乳酸発酵由来の心地よい香りや、ふんわりとしてなめらかにほどける食感が食べる人を魅了している。パン好きエディターSATOKOがこの冬に食べた数々の「パネットーネ」の中から、今年味わうべき注目の５店舗をご紹介。

【TAK BAGERI MEL】パネットーネ クラシコ

「タック バゲリ メル」は九州新幹線の終点、鹿児島中央駅から電車で20分ほどの住宅地にある人気のパン屋さん。クロワッサンやフィリングたっぷりの総菜パンなどがずらっと並ぶ店内で、ひときわ存在感を放っているのが、オーナーシェフの上原力さんが特に力を入れているパネットーネ。

「酵母種の管理が大変」「生地が安定しない」「生地が思うように膨らまない」などなど……。熟練した技術を持つパン職人さんたちが口をそろえるほど作るのが難しいと聞いていたパネットーネだけど……。

「シンプルなお菓子ですが、納得のいくパネットーネを焼き上げるまで何度も失敗を繰り返しましたね」という上原さんは、パネットーネの国際大会にも出場した実力の持ち主。それでも「今でも生地と格闘してますよ」というほどだから、その難易度の高さは想像以上！

上原さんの焼くパネットーネは、伝統的かつ世界大会基準をベースにしたスタイル。自家製のリエヴィト・マードレを用い、じっくりと時間をかけて育て上げた生地は、ぷにっと弾力がありつつ、ぷるるんと繊細にほどける口どけが特徴です。

乳酸発酵由来の心地よい香りにドキッ！

そして、なんといっても感激するのが、生地からあふれ出す香り。乳酸発酵由来の甘酸っぱさと、複雑で芳醇な香りにオレンジの爽やかさとバターのリッチさが重なりあうことで、厚みのある香りが生まれます。口に入れたあとにもその余韻は長く続き、それだけで、もう気分はうっとり。

さらにバニラビーンズの甘さがあとを追いかけてきます。次から次へと押し寄せる香りの波。発酵がもたらす豊かな風味と、上質な余韻を心ゆくまで楽しんで欲しい一品です！

「タック バゲリ メル」はクリスマスだけでなく、通年でパネットーネを販売。専用のギフトボックスもあるので、ギフトにも最適。お取り寄せもできるので、ぜひチェックしてみて!

「パネットーネ クラシコ」 ¥4,320（500g ボックス入り）

タック バゲリ メル
住所／鹿児島県鹿児島市武岡4-20-1
電話／099‐298‐5966
営業時間／7:30～18:00
定休日／月、日曜
Instagram／＠tak_bageri_mel
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【C'EST UNE BONNE IDÉE!】パネットーネ チョコラータ

『エル・グルメ』のパン特集でもおなじみ、東京・自由が丘と神奈川県の向ヶ丘遊園にお店を構える「セテュヌ・ボンニデー」。毎年、11月から年明けに登場するのが、ドライフルーツ入りのプレーンとチョコレートが入った2種類のパネットーネ。

「数年前から作り始めたのですが、発酵種がうまく発酵しなかったり、生地が膨らまなかったりと、トラブルが結構あるんですよ。本当に扱いにくい生地なんですよね」というシェフの有形泰輔さんはどこか楽しそう。

有形さんはカンパーニュやバゲットの製法や配合を日々微調整しながら、おいしさを追求。そんな“学者タイプ”ともいえるパン職人だからこそ、パネットーネの製法研究にも余念がありません。長時間かけて発酵させる伝統的な製法を守りつつも、「材料を投入する順番を変えたら、生地がより柔らかくなり、しっとり感も長続きするんです！」と語ります。

毎年新しい発見があるどころか、作るたびに新たな気づきがあるからパネットーネ作りはやめられないというから、その探究心にただただ脱帽するばかり。

フレッシュなカカオの香りが特徴！

「セテュヌ・ボンニデー」のパネットーネはもっちりしつつ、弾力のある食感が特徴の国産小麦、ゆめちからがベース。そこにリエヴィト・マードレ、バター、卵黄、自家製のオレンジペーストにバニラペーストなどを加えた生地は風味豊かでふんわり、口どけなめらかなエアリーな食感。

さらに、フェアトレードされたベトナム産チョコレート「ショコランテ・60デイズ・ベトナム」をプラス。カカオが収穫されてから60日以内にチョコレートへと仕立てられるため、フレッシュなカカオの香りとベリー系の味わいが際立ちます。そこにカカオニブのポリッとしたほろ苦さと食感がアクセントとして加わり、そのまま食べても、軽くトーストしてアイスクリームやホイップクリームを添えても、よりいっそうおいしく味わえます。

また、「セテュヌ・ボンニデー」のマスコットである「パネットーネねこ」のイラストが描かれた、ギフトボックスもキュート。中にはパネットーネねこが主役のストリーが綴られたミニ冊子（なんとイラストとストーリーはスタッフさん作というからびっくり）も入っていて、読めば思わず心がほっこりします。

パネットーネは年明け1月中旬まで自由が丘店と向ヶ丘遊園にて販売。

「パネットーネ チョコラータ」 ￥6,048

セテュヌ・ボンニデー 自由が丘店
住所／東京都目黒区自由が丘2-15-7 1Ｆ
電話／03-6421-1725
営業時間／10:00～19:00
定休日／火・水曜
Instagram／＠cestune_bonneidee_jiyugaoka
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【dough‐ist】湯種パネットーネ

東京・笹塚に店を構える「ドウイスト」は、店頭に並ぶすべてのパンに湯種を加えることで生まれる、もちっとした独特の食感が人気のお店。そんな店だから「もしかしてパネトーネにも湯種を入れているのでは？」と思ったら……予感的中！

リエヴィト・マードレを使い、元種の継ぎ足しと発酵を数回繰り返す基本製法を踏襲しつつ、生地に湯種を50％近く加えるのが川原さん流。「これはもう“ジャパネットーネ”と新しい名前をつけてもいいかもしれませんね」というほど、独自の進化を遂げています。

川原さんのパネットーネ作りはまず粉、バター、素焚糖を合わせてシュー生地のような“バター湯種”を作り、卵黄で伸ばすところからスタート。そこにリエヴィト・マードレやこうじ種などを加えて中種を仕込み、さらに卵黄やバターを重ねてミキシング。幾度の発酵を経た生地は、コンベクションオーブンで温度と湿度を細かく調整しながら、じっくり30分ほどかけて焼き上げます。

ここまで繊細な工程を重ねるからこそ生まれる、奥行きのある香りとしっとりとした食感。湯種という和の技法をパネトーネに掛け合わせた、その唯一のアプローチに川原さんの探求心が光ります。

こうじも入った、まさにジャパネットーネ！

発酵と熟成を重ねて焼き上げた生地は、口に入れた瞬間、シュワシュワと溶けるように消えていきます。種を加えた生地ならではの水分保持力も相まって、しっとりしながらも軽やか。

そこにこうじ由来のフローラルな香りがふわりと広がり、上品な香りの余韻が続きます。ごろっと入ったオレンジピールとレーズンの甘酸っぱさがアクセントとなり、味のリズムを生むのも魅力。さらに生地のトップには、アーモンドプードル・卵白・砂糖を混ぜ合わせたマカロナード生地を上掛け。焼き上がりとともに表面がひび割れ、ザクザクとした香ばしい食感が加わることで、しっとりした生地とのコントラストが際立ちます。

ひと口ごとに食感と香りが変化し、思わずもう一切れ手が伸びてしまうような楽しさがあります。

クリスマス以降の販売予定。詳しい日程などはSNSをチェックして。

「湯種パネットーネ」 ￥4,500

ドウイスト
住所／東京都渋谷区笹塚3-12-5 ホワイトハウス 1F
電話／03-4400-4182
営業時間／10:00～19:00（売切れ次第close）
定休日／月・火（祝日営業）
Instagram／@doughist.sasazuka
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【boulangerie bottira】パネトーネ・バナナ

こちらも、ひと口食べた瞬間に「ジャパネットーネだなぁ」と思った、大阪・相川で連日大行列の「ブーランジェリー ボッチラ」のパネットーネ。

バナナはフィリングとして入れているのかな？と思ったら、なんとバナナを湯種にしているというではないですか！ 作り方は伝統的なパネットーネの作り方とは異なりますが、シェフの高見豊弘さんらしいマニアックな技の連発で、食べる前から期待値がぐんぐんと上がります。

そもそもあまり聞いたことがないバナナ湯種は高見シェフのオリジナルで、バナナと砂糖、オリーブオイルを一緒に炊いてトロッとしたペースト状して甘さを引き出したもの。さらに「中種を溶かして使いたかった」という、パネットーネ作りではあまり聞かない製法にまたしても「なになに？」と前のめりに。

その意味するところは、国産小麦のゆめちからをベースに卵黄、ヨーグルト、3種類の酵母、みりん、水などを加えてトロトロの生地にし、それを発酵させるということ。ポーリッシュ法は中種と作り方はほぼ同じなのですが、より水分量が多いため、生地が柔らかく、発酵が進みやすいという利点があり、風味豊かで軽やかな生地に焼き上がります。

南国っぽさ漂う、濃厚な風味

バナナをたっぷり加えたパネットーネは、まず最初にバナナの香りと甘さが口いっぱいに広がり、そのあとをローズマリーの青い香りが優しく追いかけていきます。「バナナの青さにつながる香りを加えたかった」と高見さん。

フィリングにはドライバナナ、有機サルタナレーズン、伊予柑ピール、柚子ピールといった和の柑橘を組み合わせることで、オレンジとは異なる爽やかさが加わり、甘いだけではないピリッとしたシャープさが全体の味を引き締めます。

グラサージュにはザクザクと刻んだヘーゼルナッツとカカオパウダーを合わせ、トップにしっかりとした香ばしさとコクを持たせています。カカオパウダーのほろ苦さがバナナの甘さと絶妙なバランスを奏で、フィリングの柑橘の爽やかさとも重なって、味に奥行きをプラス。

しっとり、なめらか食感は格別で、南国風の芳醇な香りも魅力的。コーヒーや紅茶と合わせて味わうのはもちろんですが、南国感にあわせてラム酒を加えた生クリームをトッピングすると、もう最高でした！

「パネトーネ・バナナ」は通年の販売予定。詳しくはSNSをチェックして。

「パネットーネ」（１/４カットでの販売）￥648

ブーランジェリー ボッチラ
住所／大阪府吹田市南高浜町6-28
電話／06-6383-7118 （13時〜16時・営業日のみ受付）
営業時間／10:30～16:00 （売切れ次第閉店）
定休日／月・火・水曜
Instagram／@boulangerie_bottira
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【Olivier Rain】パネットーネ ソーテルヌ

お茶の名産地として知られる福岡県八女市に店を構える人気パン屋「オリビエレイン」。オーナーシェフの田中雅也さんは将来、蒸留所を作りたいと語るほどのお酒好きで、お酒のおいしさと味をしっかり効かせた攻めたパンも数多く手がけています。

そんな田中さんが焼くパネットーネはいったいどんな味なのだろう、と前から気になっていました。実はこの夏、冬虫夏草を使った、田中さんのパネットーネを食べる機会に恵まれたのですが、その香りの豊かさにびっくり。「これは冬のパネットーネが気になるぞ！」と思っていたところに、またしても強烈な一品が届きました。

フォルムはあくまでシンプル。しかし直径は17㎝近くとかなりのビッグサイズで、手に持つとずっしり重い存在感があります。生地には、弾力とボリュームを引き出すゆめちからと、力強い風味を引き出すミナミノカオリをブレンド。さらに、仕込み水には地元神社の一角から湧き出る湧水を使うというこだわりぶり。

発酵種に加え、麹と生クリームを発酵させて作る“生クリーム酵母”を組み合わせ、生地に複雑な香りとミルキーな厚みをプラス。この緻密な素材の合わせ技に驚きを隠せませんでした。

香りで魅了する、福岡発のパネットーネ

ビッグサイズゆえ、50分ほどかけて焼き上げた生地はキメが細かく、“サクシュワッ”とした食感です。そして特筆すべきは、その香りの豊かさ。

貴腐ワインに漬けて戻した貴腐マスカットレーズンは、白桃を思わせる甘く甘美な香りを放ちます。パネットーネをカットした瞬間、「桃が入っているの？」と思うほど、ふわりと甘い香りが立ち上ります。

フィリングはあえてレーズンのみという潔さ。そこにダージリンでコンポートした柚子皮を忍ばせることで、ほのかな苦みが加わります。さらにトップには木の芽のパウダーをひとつまみパラッと。それだけで、甘いだけではない大人の味わいへと引き上げています。

お酒好きの田中さんらしい、香りと味を絶妙に重ね合わせたパネットーネは「オリビエレイン」のパンがデザインされたオリジナルボックス入りで、贈り物やギフトにもぴったり。もちろん、一年間がんばった自分へのご褒美にもしたくなる一品です（笑）。

販売は12月中旬からなので、詳細はSNSをチェックして！

「パネットーネ ソーテルヌ」（800g）￥4,500
箱代別 ￥250

オリビエレイン
住所／福岡県八女市吉田133
電話／0943-43-0994
営業時間／10:00～ 売り切れ次第閉店
不定休
Instagram／＠rainolivier
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