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「遺体は雪の中で見つかった」何があったのか?証言が食い違う… 札幌の舞台『納谷版~藪の中』見どころレポ

  • 2025.12.14

真冬の札幌。雪の中で遺体が見つかった。
警察はそれを事故死と判断するが、「あの日」を知るはずの人たちは、それぞれの証言が食い違っていく…。

札幌の「ジョブキタ北八劇場」で上演中の舞台『納谷版~藪の中』。
さっぽろアートステージ舞台芸術部門「札幌劇場祭Teater Go Round(TGR)2025」で、大賞を受賞しました。さらに武山弘役を演じた柴田智之さんが俳優賞を受賞しています。

Sitakke

HBCアナウンサーとSitakke編集部でつくる、「HBC演劇エンタメ研究会」(略してエンケン)から、Sitakke編集部IKUが、舞台の見どころを3つのポイントでご紹介します。

ストーリー

真冬の札幌、吹雪の夜。
とある飲み屋の周年パーティーで、ある騒動が起こる。
数日後、そこに居合わせた一人が遺体で発見される。警察はそれを事故死と判断するが…。

それぞれが持つ「あの日の記憶」。
それは語る者によってどこか食い違い、
視点がぼやけ、証言は互いに矛盾していく。
誰もが語り、誰も同じことを語らない。

果たして真実はどこにあるのか?
事実を突き止めることはできるのか?
真実と事実が、幾重にも交錯する・・・。

芥川龍之介が『藪の中』に描いた“証言の迷宮”が、
現代社会においてどこにでも起こりうる人間関係とシンクロする。
真実は、それぞれの言葉の中に
事実は、藪の――。## 見どころ①事実が見えてきたと思ったら、また「藪の中」へ

舞台は、芥川龍之介の『藪の中』を、脚本/演出をつとめる納谷真大さんが、演劇として現代版にアレンジして創り上げています。

芥川龍之介の『藪の中』は、ある殺人事件を巡って、関係者たちがそれぞれ異なる証言をするという形で物語が展開され、何が真実であるのかが分からず、読者に深い問いを投げかける文学作品です。

それは現代社会でも起こりうるのではないか…。
札幌の飲み屋の人間模様を描き、まったく新しい現代版としながらも、『藪の中』と通じる深いテーマを感じさせる舞台です。

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常連客が楽しく盛り上がる、飲み屋の周年パーティー。
笑顔あふれるひとときですが、突然、ある騒動が起こります。

そのとき、「あれ?どうしてこうなったんだっけ?」と小さな違和感が生まれます。

数日後、パーティーに参加していた一人が、遺体となって発見されます。
何があったのか?あの日を知る関係者がそれぞれに記憶を語り始めます。

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それが少しずつ、ずれていくのです。
さっき聞いた話と違う、と思ったり、見ただけではわからなかった関係性が判明したり…。

複数人の証言を組み合わせて、やっと事実に近づいたと思ったら、また違う証言が浮かび、矛盾が生まれ、どんどんと藪の中へと入っていくような感覚になります。

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本当は何があったのか…。
ストーリーに引き込まれるうちに、深いテーマ性がにじみ出てきます。

見どころ②同じシーンのはずが違って見える、その理由

舞台上では、周年パーティーの「あの日」が、それぞれの記憶に基づいて繰り返されます。
同じ場面、同じやりとりのはずなのに、少しずつずれていく…。言葉が変わることもありますが、言葉にしなくても、先ほどはなかった意味ありげな間や視線が生まれ、複雑な関係性が見えてくる瞬間があるのです。

それを可能にするのが、キャストの演技力です。
観客に一度見たはずの記憶を揺らがせ、書き換えさせるほど、まったく違った表情を見せます。

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たとえば、舞台の序盤、写真左側で笑っている内崎帆乃香さん。何のわだかまりもない、純粋無垢な笑顔に見えます。

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舞台後半…誰を、どんな感情で見つめたら、こんな表情になるのでしょうか…。

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笑顔でリラックスしているように見える、小林エレキさん。仲のいいメンバーに囲まれて、楽しく飲んでいるように見えます。

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それがこう…。

この表情の変化を見るだけで、いったい何があったのか、心の中に何を隠していたのか、気になってきませんか?

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キャストそれぞれが語りだすたびに、それぞれの表情が変わり、伝わるものが変わっていくことが、大きな見どころです。

ダブルキャストで、上演日時によって同じ役を違う人が演じていることもあるので、見比べてみるのも楽しいかと思います。

見どころ③舞台が回る!

キャストの表情だけでなく、舞台全体の表情も変わっていきます。

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舞台装置も豪華で、舞台全体が「回ります」。
観客に飽きる暇は与えさせずに、まったく違うシーンに一瞬で大きく場面転換できるのです。

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照明や音響の効果で世界観はガラッと変わります。
映像表現も使いながら、視覚的にずっと楽しめる舞台作品となっています。

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『納谷版~藪の中』は、札幌の「ジョブキタ北八劇場」で上演されています。
残る日程は、12月24日から28日までの7回です。

『納谷版~藪の中』

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日程

12月24日(水)午後6時半~
12月25日(木)午後1時半~/午後6時半~
12月26日(金)午後1時半~
12月27日(土)午後1時半~/午後6時半~
12月28日(日)午後1時半~

※開場は開演30分前 ※チケット受付開始は開演45分前

場所

ジョブキタ北八劇場(北海道札幌市北区北8条西1丁目3番地「さつきた8・1」2階)

チケット

ご予約の際は、予約フォームにある注意事項をご確認ください。

【全席自由】
・一般:5000円
・U-25:2000円
・中学生以下:1000円

※前売当日共通
※未就学児入場不可
※U-25(25歳以下)、学生の方は当日受付にて【身分証明書】をご提示ください
※車椅子でご来場の方は事前に劇場までご連絡ください

キャスト(ダブルキャストあり)

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●五十嵐みのり
●内崎帆乃香
●小林エレキ
●坂口紅羽
●明逸人
●山野久治
●小西麻里菜

●大田黒ヒロタカ
●神成悠平
●菊地颯平
●柴田智之
●納谷真大

※各キャストの出演回は、ホームページからご確認ください。

※朗読劇『羅生門』(HBCアナウンサー堰八紗也佳・堀内大輝出演)は、11月29日、12月6日の上演で終了しています。

※北八劇場は、「芥川龍之介『藪の中』をベースに創作しています。作品中に、性暴力を想起させる描写や暴言・悲鳴などが含まれます。不安を感じる方は、ご観劇前に劇場までお知らせください」と呼びかけています。

◆HBC演劇エンタメ研究会

◆文:Sitakke編集部IKU

◆撮影:クスミエリカ

※掲載の内容は記事執筆時(2025年12月)の情報に基づきます

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