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漫画編集は「作家を売る」仕事!?情熱とテクがぶつかる編集者お仕事マンガ『月刊トリレンマ』の舞台裏

  • 2026.3.5

廃刊目前の零細漫画雑誌の中で、ヒット漫画を出そうと熱意満々の新米漫画編集者・山野井。そこに現れた敏腕編集・夏宮ミハルは、「売れない作品には必ず売れないなりの理由があります」と突き付ける。編集者を“作家を売る仕事”と語る夏宮の仕事ぶりは強烈で――!?

「売れる漫画」を掲げる敏腕編集、その真意とは……?
「売れる漫画」を掲げる敏腕編集、その真意とは……?

ウルトラジャンプで連載中の漫画『月刊トリレンマ』(原作:橿原まどか 作画:タチバナロク)は、漫画家ではなく、漫画家を二人三脚で支える編集者の仕事を描く作品。直接作品を作るわけではない編集者たちはどう戦っているのか?漫画を愛する人にとって、遠いようで身近な存在にスポットを当てた注目作だ。2026年2月19日にコミックス第2巻が発売された同作、原作の橿原まどかさん、作画のタチバナロクさんに、編集が主役の漫画をどんな思いで作り出しているかを聞いた。

『月刊トリレンマ』書影
『月刊トリレンマ』書影

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主役は編集、焦点は“お金”と“メンタル” 新機軸の漫画制作漫画

――原作の橿原さんが「漫画編集者を描きたい」と思ったきっかけは何でしたか?

【橿原まどか】漫画のお仕事を通じていろいろな編集さんとお話させていただく機会があるのですが、その中で「私が作りたいのは作品じゃなくて商品なんですよ」とおっしゃっていた方がいらして、面白い考え方だなと思ったのがきっかけです。

作品が自己実現・自己表現のためのもの、商品が利益を得るためのもの、と仮に定義した場合、漫画ってどちらの側面もあって、しかも結構大きいマーケットになっている……という不思議な産業だなと思って。そこを足掛かりに自分なりにいろいろ考えることがあって、そのモヤモヤが作品として結実したという感じです。

――タチバナロクさんが本作の作画を引き受けたいと思ったポイントは?

【タチバナロク】漫画が好きで漫画家になった者として、漫画制作の裏側の物語というものはいつも魅力的なものなんです。だからといって自分で描くとなると自分の経験以上のことを面白く描くのは難しくて、原作があるなら、漫画制作裏側漫画好きとしてはジャンルのファンとして楽しく関われると思って引き受けたいと思いました。

――本作の設定やキャラクターについて、執筆前から決めていたこと・執筆中に変わったことはありますか?

【橿原まどか】過去にも漫画編集マンガというジャンルにはいくつもの名作があるので、今作では「お金」と「メンタル」にこだわってやってみよう、というのがあります。お金は言わずもがな売上や原稿料、メンタルは作家との信頼関係やモチベーションをどう鼓舞するか、みたいな部分ですね。「どうやって漫画を面白くするか」というクオリティコントロールではなく、その周辺にあるところにスポットライトを当てよう!というアプローチは最初から一貫してありました。

執筆中に変わったこととしては私の中の山野井像です。タチバナ先生がめちゃくちゃかわいいデザインをしてくださり、いい芝居をつけてくださるのでどんどん好きになりました。「でっかい女の子はかわいい」という感覚を理解しました!

――タチバナさんがキャラクターのデザインや作画で意識しているところを教えてください。

【タチバナロク】デザイン面では山野井・夏宮コンビの身長差は意識して考えました。背が高く大柄な山野井がまだ成長途中であること、小柄で身長が低い夏宮が存在感の大きい指南役という、あべこべ感が欲しかったからです。

作画のタチバナさんが「慰められた」本作のシーンは?

――2月に第2巻が刊行されました。ここまでで「ここは特に印象深い」と思う箇所があれば教えてください。

【橿原まどか】7話にある、ナナ猫先生が執筆している様子を1ページまるごと使って描いたシーンです。このシーンは、ナナ猫先生のお話を考え始めた当初からずっと存在していて、作中でもクライマックスにあたる重要なシーンだと思っていたのですが、タチバナ先生が素晴らしい表現をしてくださったおかげで、自分にとってすごく大切なシーンとなりました。

仕事人としてのプライド、鬼気迫るような集中力、積み重ねてきた年月・磨いてきた技術の厚みなど、これまでずっと「善良な好人物」として描かれてきたナナ猫先生の凄みが伝わってくる、とてもいい1ページだと思っています。たくさんの方に読んでいただきたいです。

【タチバナロク】第2話で夏宮が山野井の胸ぐらを掴み「本番ですよ」と言ったシーンです。作家を自己満足の踏み台にするなという夏宮のセリフで、ちょっと慰められた気がしました。好きなシーンなので、結構頑張って描いたシーンでした。

――橿原さんとタチバナさん、それぞれ本作でどんなことに挑戦していますか?

【橿原まどか】今までは4コマ漫画しか連載したことがなかったので、ストーリー漫画というのがまず大きな挑戦でした。「コマ割」って考えれば考えるほど奥が深くて面白い表現技法だな~、と思っています。もうひとつは、物語の中にポップスでいうところの「サビ」を作ることです。今まではプロット(筋書き)のツイスト(ひねりやどんでん返し)に自分の興味が集中していたのですが、ドラマを作る上では絶対に感情的な山場が必要だということに気づきまして。ただ、理性とアイデアで詰めていくプロットに対して、「サビ」は自分も感情を使わないと全然描けない!という難しさもあり、試行錯誤の毎日ですね。

【タチバナロク】何もかもが挑戦です。自分では思いつかない展開・セリフ・キャラクターに毎話対峙して乗り越えていく感じがしています。頂いた原作のネームを一度噛み砕いて如何に自分の絵で元の雰囲気や意図を残して見せれるか…絵が足を引っ張ってはならないと、挑戦と実験の連続です。

――この作品を通じて、読者に伝えたい“感情”や“メッセージ”を教えてください。

【橿原まどか】人を動かすとはどういうことか?というのが自分の根源的な問いとしてあり、それを読者の方と共有できたら嬉しいなと思っています。

人を動かすためにはどういう手段が有効か?という問いは、その人のそもそもの人間観を炙り出すものだと思うんですよね。作中で夏宮さんや山野井が「漫画家」という他者を動かすために悪戦苦闘するのですが

それに対して「このやり方いいな」とか「いやいや、もっといい方法があるよ」だとか、もし心が動かれたことがあったらぜひお伺いしたいです!

【タチバナロク】作画の面で伝えたい感情は、真剣さや本気度です。タイプは違えど、主要キャラクターたちは各々のスタンスで真剣に漫画に向き合ってるので、人物それぞれの表情や行動の強弱はあれど、真剣さはどの人物も大きく熱いって、読者の皆様に伝われば幸いです。

――最後に、本作品をどんな人に読んで欲しいですか?

【橿原まどか】お仕事をがんばっている方、これからがんばりたいと思っている方、自分はもうがんばりたくないけどがんばっている人は応援したいよ~、という方に読んでいただけたら、きっと何か刺さる部分があるんじゃないかな?と思っております。ぜひぜひ、読んでいただけたら嬉しいです!

【タチバナロク】好きなことを頑張ってるけど、上手くいかない、でも諦めたくないそんな人に読んでほしいです。そんな感じの子が頑張る漫画なので……ぜひ。

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原作:橿原まどか 作画:タチバナロク

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