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シマエナガの大好物は?人気者になったのは、あの赤ちゃんに似ていたから!? 北海道の野生動物を撮影して約40年のカメラマンが解説

  • 2025.12.13

シマエナガは、なぜ「かわいい」の?

北海道の自然や野生生物を撮影し始めて約40年!インスタグラム「北海道3大かわいい動物」プロジェクトを主催している、@ami_papaによる、シマエナガ特集記事の後編です。

前編の記事では、シマエナガと出会うコツについてお伝えしましたが、この記事ではシマエナガのカワイさのヒミツ、さらにはちょっとした「シマエナガ・トリビア」などについてお話しさせていただきたいと思います。

この記事の内容
・シマエナガは、なぜ「かわいい」の?
・シマエナガの大好物は
・人気者になったのは、あの赤ちゃんに似ていたから!
・シマエナガは、アクロバティック!?
・シマエナガは、冬でも水浴びが大好き!
・エナガとシマエナガと、眉毛ちゃん

シマエナガは、なぜ「かわいい」の?

Sitakke
撮影:yetikt さん

さてさて、シマエナガは、なぜかわいいのでしょうか?
皆さまは、どうお考えになるでしょう?

雪の降る中にいる、真っ白な鳥だから、だけではないでしょうし、小さな体を温めるために、モフモフにふくらんでいるから、だけでもないようです。

何と言っても、正面から見たときの、何ともたまらない、目と口のバランス…そして、ちょっと首をかしげるお得意のポーズ…そのあたりに心を惹かれてしまうような気がします。

心理学では、丸い顔・大きな目・小さな鼻や口といった特徴を「赤ちゃん型(ベビースキーマ)」と呼び、人間が本能的に、「守ってあげたい」「かわいい」と、感じてしまうのだと言います。

シマエナガはまさに、丸い頭と、顔の中心部に寄った黒い目、小さなくちばしという「赤ちゃん型の条件」をかなり満たしている存在。

そこに、ちょこまか動く子どもっぽさ、群れでくっつく姿が加わることで、人間の「かわいいスイッチ」を連打してくるわけです。
でもなぜ、シマエナガだけが、そんな顔をしているのでしょう?ここから先は、やや個人的な見解も含まれますが…。

シマエナガは、カエデの木から染み出る樹液(じゅえき)や、木の実なども食べますが、いちばんの大好物は「小さな虫」で、そこが多くの鳥とはちょっと違う部分です。

草食動物は、あたりを広く見渡せるように、目が、顔の横に近いところについている場合が多いです。
そちらのほうが、視野が広く、天敵が現れたらすぐに、逃げることができるからです。

しかしながら、その顔を正面から見ると、どうしても、目と目が離れてしまっていて、「赤ちゃん型」とは違ったタイプの顔です。(それはそれで、かわいいと思うのだけれども…)

虫が大好物なシマエナガは、虫を捕まえやすいための目、つまり「正面に並んだ目」になっていて、そのことで小さな虫の素早い動きに対応でき、虫との距離感もはっきりとつかめます。
正面に目が2つ並んでいて、しかも顔が真っ白ですから、「赤ちゃん型」になっちゃうのでしょう。

そして、目が2つ並んでいるために、他の鳥と比べると「視野が狭い」シマエナガは、あたりに天敵がいないかどうかを、常に確認しなければなりません。

しかし目だけを動かすことができないので、首をかしげるようにして、天敵がやって来る「上の方」を常に気にしている、というのが、「首かしげポーズ」の理由なのかなーと想像します。

Sitakke
撮影:taso.aya さん

しかしながら、カメラ目線でニッコリと微笑んで、絶妙な角度で首をかしげている写真を見ると、「こうしていると、いちばんかわいらしく見えるからやってるだけよ!」と言われている気もしてきますねー、やっぱり。
まあ、相手は「妖精」なので、本当のことは分かりませんね…。

「樹液(じゅえき)」が大好物

Sitakke
撮影:hiro_hokkaidou さん

冬の厳しさがピークを終え、ときどき気温がプラスになり始めると、イタヤカエデなどの木から、樹液(じゅえき)がしみ出し始めます。

樹液は、たくさん集めて煮つめていくと、あの甘〜い、メープルシロップになります。
シマエナガたちは、この樹液が大好き!

特に、昼の間にしみ出した樹液が、夜になって凍り、「つらら」のようになることがあります。

これを見つけたら、シメたもの!
きっとシマエナガたちが、次々とやって来るので、「つらら」の近くに隠れて、待っていましょう。

運が良ければ、10〜15分おきくらいに、シマエナガの群れがやって来て、「つらら」にかじりついたり、樹液が染み出た木に顔をくっつけて、まるでカブトムシかクワガタのように、夢中になって吸いまくるのを見ることができます。

Sitakke
撮影:kariyushi.route58 さん

たまに、口のまわりが黄色っぽくなっているシマエナガを見かけることがありますが、それは、ちょっと前まで、樹液に吸いついていた証拠です。

木から落ちた「樹液のつらら」を、試しになめてみたことがあるのですが、ごくごくほんのりとした甘みを、やっと感じたくらいで、天然のメープルシロップと言っても、想像していた甘さはありませんでした。

それでもシマエナガたちにとっては、長い冬がもうすぐ終わる合図でもある樹液は、森からのとっても大切な、プレゼントに違いありませんねー。

シマエナガが人気者になったのは、アザラシの赤ちゃんに似ていたから!

Sitakke
小原玲さん

日本で初めてのシマエナガの写真集「シマエナガちゃん」が出版されたのは、2016年のこと。
写真家・小原玲さんによるものです。

もちろん、その写真のシマエナガは、すべて北海道で撮影されたものです。

小原さんは、報道写真家から動物写真家に転身し、1990年に「アザラシの赤ちゃん」の写真集を出版して、日本中に「アザラシの赤ちゃんブーム」を巻き起こしました。

Sitakke

しかし、地球温暖化のせいか、カナダのアザラシ繁殖地に流氷がまったく現れず、アザラシの赤ちゃんの撮影へと出かけることができない年がありました。

ちょっと落ち込みぎみで、鶴居村のサンクチュアリで、タンチョウの写真を撮影していた小原さんに、こんな声をかけたのは、札幌在住のカメラマン・北川譲さん。
「アザラシの赤ちゃんに、顔がそっくりな鳥が北海道にいます、撮ってみませんか?」と。

小原さんとシマエナガの物語は、こうして始まりました。

小原さんは、かつて一世を風靡(ふうび)した写真週刊誌の専属カメラマンでした。

湾岸戦争やソマリア内戦の現場で数々のスクープをモノにしたスゴ腕と、狙いを定めたら「何が何でも撮る!」粘り強さと、大胆な行動力で知られた、天才的なカメラマンです。

週刊誌創刊からの盟友の「不肖」こと宮嶋茂樹カメラマンから聞いた話だと、逮捕されてパトカーで護送される犯人や、疑惑政治家の乗った車への、小原さんの正面からの突撃はすさまじく、これ以上粘ったら、パトカーに轢(ひ)かれそうになると、パトカーのボンネットに乗っかって、写真を撮り続けることもしばしばあったのだそう。
当時のあだ名は「ボンネット乗りの小原」…。

シマエナガの写真集のために、雪景色にカモフラージュした全身白い衣装に身を包んでみたり、「この景色をバックにシマエナガを撮りたい!」と思ったら、日の出から日が暮れるまで、冷え込んだ森の中に座り続けるなど、まだシマエナガの情報が少ない時代に、かわいらしいシマエナガ満載の写真集を出版するのには、とても大変な試行錯誤がありました。

Sitakke

小原さんは、いつもこうおっしゃっていました。
「最初は『かわいい』っていう気持ちで良いんです。『かわいい』って感じる気持ちは、理屈抜きで心を動かされる、とても強い思いです。ですから『かわいいは最強』なんです。『かわいい』から始まった気持ちは、『だから守りたい』っていう思いに変わっていきます。それが森や環境を守る行動につながっていくのだろうと私は思っています」

小原さんは、北海道でエゾモモンガを追いかけていた年に、体調の不良を感じ、2021年11月17日、末期の肺がんのため亡くなってしまいました、まだ60歳でした。

私どもの、インスタグラム「北海道3大かわいい動物プロジェクト」も、小原さんの「北海道のかわいい動物たちを守りたい」という願いから生まれ、小原さんから受け継いだ、北海道の身近な動物たちを愛する心を、多くの人たちに広げたいという思いを込めて、発信を続けさせていただいています。

シマエナガは、アクロバティック!?

シマエナガの長いシッポは、ただ単に長いだけではなく、彼らが生きていく上でとても大切な役割をしているようです。

シマエナガの大好物は、虫。
空中を飛んでいる小さな虫を追いかけ回して、空中で停止したり、急に飛ぶ方向を変えたりと、かなりアクロバティックな動きをしながら、小さな虫を次々と捕まえます。

そのアクロバティックな動きに役立つのが、シッポです。
シマエナガの長いシッポは、パッとひらくと、かなりの面積になって、まるで3枚目の羽のようです。

勢いよく飛んできて、急ブレーキをかけるときなどは、2枚の羽のほか、長いシッポも思いっきり開いて、全身で風の抵抗を受けるパラシュートや、船やボートの舵(かじ)のような働きをしています。

Sitakke
撮影:kazyida さん

あと特徴的なのは、足の使い方。
「ニシキギ」という、秋の終わりに小さな赤い実をつける木があるのですが、シマエナガはその実が大好き。

その実を食べるときに、足を使ってその実をつかみ、口に運んで食べるのです。
まるで、人間が、リンゴにかじりついているよう。
他の鳥が、足でつかんだ食べ物を、そのまま口に運ぶのをあまり見たことがありません。

まだまだ不思議がいっぱいな、とってもスゴいシマエナガ…、でもときどき、顔の上に長いシッポが重なり「チョンマゲ」のように見えることがあって、お侍さんのようになっちゃうこともあるのですが。

Sitakke
撮影:nature_birds.4u さん

冬でも水浴びが大好き!

鳥たちが水浴びをするのは、よく知られた話だと思いますが、シマエナガはほかの鳥たちが水浴びをしないようなとっても寒い日や、多少の吹雪の中であっても水浴びを欠かしません。

冬でも凍らない、浅い水たまりで、そこに斜めに、水へと入っていけるような枝があるところがベスト。

Sitakke
撮影:koichi_kotani さん

1本の枝に、ズラリととまって、順番に水浴びをする姿は、なんともかわいらしく、また、このときばかりは1か所に数分単位でとどまっていることもあり、このようなシーンに出会うことが出来たら、本当にラッキー。

おそらく水浴びすることで、羽毛を常にふかふかにしておかないと、羽と羽の間に、空気を貯め込んでふくらみ、寒さをしのぐことができなくなるので、本当はイヤなのだけれども、冷え込んだ日でも、ガマンして水に入っているのかもしれません。

水浴びのあとは通常、近くの枝にとまり毛づくろいをしてカラダを乾かすので、そのときもまた、じっくりと観察できるチャンスです。

水浴びの直後のシマエナガは、体が濡れていて、モフモフとはまったく対照的な姿なのですが、それもまたかわいらしいのです。

Sitakke
撮影:too_vov2020 さん

シマエナガの通り道には必ず水場がありますので、見つけることができたら、ラッキーですね。

水浴びをするのは、ごちそうをいっぱい食べて体力を回復した、午後に多い気がします。

エナガとシマエナガと、眉毛ちゃん

シマエナガのシマは「島」、つまり「北海道」を意味しています。
だから、シマエナガは「北海道に住んでいるエナガ」ってことです。

本州に行くと、大きさも、鳴き声も、行動もほぼ同じだけれども、顔だけがちょっと違う、エナガがいます。
エナガは、顔に、黒い「眉毛」のような模様があるのが大きな特徴です。

Sitakke

・「まゆげっぽい黒が入る 」→ エナガ
・「白い顔でまん丸 」→ シマエナガ

ただし、黒い「眉毛」が特徴のエナガは、ごくまれですが、苫小牧や函館など、北海道の南部にも生息しています。

Sitakke
撮影:isobo さん

さらに話はちょっとややこしくなるのですが、エナガも、シマエナガも、生まれてすぐのときは、いずれも目のまわりが黒っぽい模様で、ほとんど区別がつきません。

Sitakke
シマエナガのヒナ 撮影:icchy37 さん

ここからは想像なのですが、雪が多い場所では、真っ白のほうが天敵に見つかりにくいので、黒い眉毛のあるエナガよりも、オトナになったときに顔が真っ白なシマエナガの方が、生き残る可能性が高いため、長い時間の中での「自然の摂理」として、顔の白いシマエナガが、北海道に多く存在するようになったのではないだろうか?などと思ったりします。

あるとき、エナガでもない、「うっすらとした眉毛」のあるシマエナガが話題になったことがあります。

Sitakke

ある地域で暮らす、10羽くらいの群れに、1羽だけ、眉毛があるシマエナガがいるのです。すぐに愛称が決まりました…当然ですが「眉毛ちゃん」と。

「眉毛ちゃん」は、子どものころの黒みが、まだ残っている(人間で言えば、まだオシリが青い?)状態なのでは?とか、それとも、ごくわずかに北海道にもいるエナガと、シマエナガのハーフなのでは?など、いくつかの仮説が浮かびますが、まあ、我々おじさんたちが色々考えても答えは出ません。

でもこの「眉毛ちゃん」…良く見ると、なんともかわいらしく見えてくるではありませんか!
で、この「眉毛ちゃん」を知る仲間うちで、「眉毛ちゃんを探せ!」的なプチブームが、起こりました。

しかし、「眉毛ちゃんを探せ!」は、決して楽ではありません。
何しろシマエナガは、広いエリアを移動する鳥です。
まずはその群れを探して、その中から「眉毛ちゃん」を探し出して、写真を撮る!

しかも、雪が積もる林の中を、足もズボズボで探し回るのですから、おじさんたちの体力は消耗しまくりです。

それなのに、そんな苦労をもおそらく知らない「眉毛ちゃん」は、一瞬のポーズを決めては、ヒラリと、再び林の奥へと優雅に飛び去って行くのです。

「まっ、眉毛ちゃん、ちょ、ちょっと待って〜っ!」
おじさんたちの悲鳴が、深雪の林に響きます。

Sitakke
撮影:sakumaama87 さん

たくさんの方に、生のシマエナガを見ていただきたい、という気持ちで書き始めたこの文章も、ずいぶんと長くなってしまいました。

冬の終わりには、シマエナガの群れは解消され、ペアになった2羽が、仲むつまじい姿を見せてくれ、春には、シマエナガの子育てが始まります。
ここにも、お話ししたいドラマがたくさんあるのですが、それはまた次の機会にしますね。

どうぞ、「雪の妖精」こと、冬のシマエナガとのステキな出会いがあることを、お祈りいたします。

◆前編:シマエナガに出会うには?場所や鳴き声、上級編まで 北海道の野生動物を撮影して約40年のカメラマンが解説

◆文:インスタグラム「北海道3大かわいい動物」プロジェクト事務局 / ami_papa
1987年からカメラマンとして北海道の自然や野生生物の撮影を始める。アメリカのイエローストーン国立公園やカトマイ国立公園、デナリ国立公園での取材も経験。2020年から「北海道3大かわいい動物」プロジェクトを主催し、InstagramやSitakkeの記事で発信しています。

◆編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は記事執筆時(2025年12月)の情報に基づきます。

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