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2025年ベスト級大傑作!1960年代の「性別適合手術」をめぐる裁判を描いた映画『ブルーボーイ事件』

  • 2025.12.11

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」 『ブルーボーイ事件』

story 1965年、五輪景気真っ只中の東京。警察は戸籍は男性のまま性別適合手術を受けたブルーボーイと呼ばれる女性達を摘発するために、施術した医師を逮捕・起訴する。そんななか、その医師の手術を受けたサチ(中川美悠)のもとに、医師の弁護士・狩野(錦戸亮)が現れ、証人として裁判に出廷を願い出るのだが……。

監督・脚本:飯塚花笑/出演:中川未悠、中村中、イズミ・セクシー、山中崇、錦戸亮 ほか/配給:日活、KDDI/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー © 2025「ブルーボーイ事件」製作委員会

★傑作好きの皆様へ★

頭おかしいといわれてもおかしくない数の映像作品を観ていても、まごうことなき傑作、と思う作品は、年に1〜2作。多くても5作くらいしかないもんで。今年公開の傑作はほぼ出揃ったかな……と思っていた初秋、ガツーンときましたわ。『ブルーボーイ事件』。公開されるまで黙ってないといけないこともあったのでしんみりしておりましたが、公開スクリーンが激減し始めたのでパワープッシュします。
1965年、性移行に関するあらゆること(身体的、戸籍など)を変えず、女性装で売春をするブルーボーイと呼ばれる人たちがおりました。そんなある日、彼女らの性移行手術やホルモン投与をしていた婦人科医が逮捕・起訴。弁護士の狩野は証人として医師の世話になっていたブルーボーイたちに証言台に立つように求め……というところからお話が始まります。
 
本当にあった事件をもとにしているとは! という驚きと、当時の生き生きした当事者のライフスタイルにも驚き、びっくり2乗。これな、この映画のもとになった事件の裁判記録から着想を得ただけあって、あたしもテレビや本でしか知らなかった当時の性的マイノリティの人たちの生の声がグッサグサぶっ刺さったんですよ。特に「20歳過ぎたらみんな自殺だわね」っていうセリフ、トランスウーマンに限らずマジだったんすよ。いや、あたしも20歳くらいのころに二丁目に出入りするようになって、そりゃもう楽しかったんですが、飲みにいらしている諸先輩方からは、「あたしら隠花植物なんだから、目立たずひっそり」とかこういった絶望の言葉を幾度となく聞いており(ちなみに30年ちょい前の話ですが、ブルーボーイ事件の元ネタ資料にもこういうのがあった、と監督からうかがいました)。
 
映画の舞台は60年代で、あたしが聞いたのは90年代初頭。時代は変わって今では、自分の個性を大事にすることが幸福への一歩で、その幸福への道は誰かが妨げちゃダメっていうのがよきこと、と、ようやく変わってきたけど……いや、変わってない人もまだ多いし、それで幸せになれない人もいるよね、とこの映画を見たら気づいていただけるはずなんですわ。しかもですわ、劇中のトランスウーマンを演じているのは、中川未悠さんを含めほぼ全員が当事者。実話がベースのフィクションの中にちゃんとリアリティがあるのよ〜。こんな映画、そうそう出てこない。というか、マジ早く劇場行って!

主人公サチとパートナーの篤彦。篤彦さんがむちゃくちゃ優しくていいのよ。

弁護士の狩野さん。裁判中にトランスジェンダーのことを猛勉強して挑みますが、ちょっと付け焼き刃なところも当時のリアルでよき!

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