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22年前、国民的パンクバンドが放った“究極の肯定ソング” 9年越しに「異例シングル化」されたワケ

  • 2026.2.24
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「Sha la la」という、意味を持たないその音の羅列が、なぜこれほどまでに胸を震わせるのだろうか。

22年前の2004年、街中から毎日のようにそのメロディが流れていた。テレビCMをつければ、赤いロゴと共にその歌が聞こえ、映画館に行けば、白黒のヒーローがその歌を背負って戦っていた。

しかし、多くの人が気づいていただろうか。その楽曲が、実は1995年に産声を上げていたことを。そして、その陽気なメロディの裏側に、ひとりの天才が直面していた“深い絶望”と、そこからの“劇的な救済”の物語が隠されていたことを。

↑THE HIGH-LOWS↓『日曜日よりの使者』(作詞・作曲:甲本ヒロト)――2004年2月11日発売

9年の時を経て“再発見”された名曲

この曲がシングルとしてリリースされたのは、2004年2月11日のことだ。だが、時計の針を少し戻す必要がある。本来この曲は、1995年10月に発売された彼らの1stアルバム『THE HIGH-LOWS』のラストを飾る収録曲として世に出たものだった。(1996年に3rdシングル『スーパーソニックジェットボーイ』のカップリングとしてもリリースされている)

それがなぜ、9年もの時を経てシングルカットされたのか。きっかけは2000年代初頭、Hondaの企業CM「Do you have a HONDA?」キャンペーンに起用されたことだった。さらに2004年には、哀川翔主演の映画『ゼブラーマン』の主題歌にも決定。

冴えない日常を送る中年男がヒーローとして覚醒していく映画のストーリーと、この曲が持つ「肯定感」が完璧にシンクロし、異例のシングル化が実現したのである。当時、すでにバンドは活動後期に入っていたが、この曲はまるで新曲のように、2004年の日本に浸透していった。

シンプルだからこそ響く“肯定の音”

この曲を語る上で欠かせないのは、そのあまりにもシンプルな構成だ。

コード進行は驚くほど単純で、ロックンロールの基本に忠実だ。だが、この曲の真髄は、サビの歌詞が「Sha la la」というスキャットがメインである点にある。言葉ではないからこそ、そこには聴き手のあらゆる感情が入る余地がある。悲しい時には悲しみに寄り添うように、楽しい時には喜びを増幅させるように。

甲本ヒロトの歌声は、パンクロックの鋭さを持ちながらも、この曲においてはどこか牧歌的で、包容力に満ちている。どこか遠くへ連れて行ってほしいと願うその声は、現実逃避のようでありながら、実は「明日また生きていくための休息」を求めているようにも響く

攻撃的なビートで戦うのではなく、アコースティックギターの音色と共に、肩の力を抜いて歩き出す。そんな“許し”の波動が、この曲には充満しているのだ。誰にでも訪れる「どうしようもない孤独」や「気だるい日曜日」を、無理に励ますのではなく、ただ横で一緒に笑い飛ばしてくれるような温かさがある。

時代を超えて響く“救済のアンセム”

2004年のシングル化以降、この曲はスタンダードナンバーとしての地位を不動のものにした。HondaのCMで見せた「楽しさ」の象徴としての側面と、映画で見せた「再起」の象徴としての側面。その両義性が、幅広い層に支持される要因となった。

特筆すべきは、この曲が特定の世代やジャンルを超えて愛され続けていることだ。結婚式のBGMとして、あるいは旅立ちの歌として、さらにはスポーツの応援歌として。場面を選ばず人々の心に寄り添うのは、この曲が「強さ」ではなく「優しさ」でできているからだろう。

シングル発売から22年、曲の誕生から数えれば30年以上が経った今も、この曲は色褪せない。仕事に疲れた夜、人間関係に傷ついた夜、どうしようもない孤独に襲われた夜。ふと口ずさむ「Sha la la」は、いつだって私たちを肯定してくれる。

「頑張れ」と背中を叩くのではなく、「そのままでいいよ」と隣に座ってくれるような優しさ。それこそが、時代が変わっても決して古びることのない、『日曜日よりの使者』が持つ魔法の正体なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。