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22年前、金曜の夜に日本中がときめいた“等身大の恋” 恋愛番組の情景を鮮やかに彩った“素顔の輝き”

  • 2026.2.24

2004年2月。寒さがまだ厳しいものの、どこか春の気配が混じり始める季節。金曜日の夜23時、多くの視聴者がテレビの前で、芸能人同士の“台本のないデート”に釘付けになっていた。

初々しい会話、ぎこちない距離感、そして勇気を出して繋いだ手。そんな甘酸っぱい情景に重なるように、等身大の希望を歌う一曲が流れていたことを思い出す。

hitomi『ヒカリ』(作詞:hitomi・作曲:小幡英之)――2004年2月11日発売

この楽曲は当時の“恋する空気”そのものをパッケージしたような、特別な輝きを放っていた。

カリスマが脱ぎ捨てた“鎧”と、見せた“素顔”

当時のhitomiといえば、ファッションリーダーであり、同性が憧れる“カッコいい女性”の象徴だった。『LOVE 2000』などで見せた、アグレッシブで戦闘的なロックスタイル。あるいは、モデルのように洗練されたビジュアルで時代を牽引する存在。

世間が抱く彼女のイメージは、強く、美しく、どこか近寄りがたいほどのオーラを放つ“カリスマ”そのものであったはずだ。だが、この『ヒカリ』という楽曲で見せた表情は、それまでのパブリックイメージとは少し異なっていた。

肩の力が抜け、攻撃的なビートの代わりに、温かみのあるバンドサウンドが響く。彼女自身の歌声も、語りかけるように柔らかい。

それはまるで、戦うための鎧を脱ぎ捨て、一人の人間としてリスナーの隣に座り直したかのような親密さだった。この時期、彼女は20代後半に差し掛かり、アーティストとしても女性としても、より自然体な表現へと移行する過渡期にあったといえる。

単に流行を追うのではなく、自分の言葉で、自分の歩幅で歩こうとする意志。その変化が、この楽曲の瑞々しい空気感に直結しているのだ。

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2004年、羽田空港内でシークレットライブを行ったhitomi(C)SANKEI

“ハニカミ”が映し出した、リアルな恋のBGM

この曲を語る上で欠かせないのが、TBS系恋愛バラエティ『恋するハニカミ!』の存在だ。

芸能人同士がデートプランを練り、一日限りの恋人として時を過ごす。そこにはドラマのような完璧なセリフはない。沈黙があり、照れ笑いがあり、予期せぬハプニングがある。

視聴者が求めていたのは、作り込まれたフィクションではなく、ふとした瞬間に垣間見える“素”の表情だった。『ヒカリ』は、そんな等身大のデートシーンに寄り添うように流れた。

二人の距離が縮まった瞬間、あるいは別れの時間が近づいた瞬間。この曲が流れると、画面の中の不器用な恋模様が一気にドラマチックに色づいたことを覚えている人も多いだろう。

描かれているのは、確かな約束や永遠の誓いではない。不確かな未来をそのまま受け入れる強さだ。そのメッセージは、番組内のカップルたちだけでなく、画面を見つめる視聴者自身の恋愛観とも深く共鳴した。

先の見えない時代だからこそ、大それた約束よりも、今この瞬間を信じて一歩を踏み出すことの尊さ。hitomiが描いたのは、そんな地に足のついたポジティブさだったのだ。

22年後の今も消えない、心の灯火

あれから20年以上の時が流れ、テレビ番組も、音楽の聴き方も、私たちの生活も大きく変わった。しかし、ふとした瞬間にこの『ヒカリ』を耳にすると、当時の空気感が鮮明に蘇る。それは単なるノスタルジーではない。この曲が持っている“根源的な明るさ”が、今の時代にも通用する普遍的なパワーを秘めているからだ。

ヒットチャートの数字や記録には残りにくいかもしれない。けれど、誰かの記憶の中で、大切な思い出のBGMとして静かに、しかし強く輝き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。