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32年前、硬派な美学が貫かれた“荒ぶるエレガンス” テレビの喧騒を鮮やかに切り裂いた“至高のロックナンバー”

  • 2026.2.24

1994年の日本は、どこか冷ややかな現実が社会を覆い始めていた。テレビを付ければ、メディアの裏側やスキャンダルを暴くドラマが人々の視線を釘付けにし、情報の奔流が街をせき立てていた。そんな時代の空気を突き破るように、一人の男が放った強烈な美学が、冬の夜を鮮やかに彩った。

吉川晃司『Rambling Rose』(作詞・作曲:吉川晃司)――1994年2月21日発売

自らの音楽をストイックに追求し、孤高のロックアーティストとしての地位を盤書のものにしていた彼が、19枚目のシングルとして世に送り出したのがこの曲である。派手なヒットチャートの数字以上に、その音像は当時のリスナーの記憶に深く、そして鋭く刻み込まれることとなった。

喧騒の中で際立つ、孤高のダンディズム

この楽曲が放つ最大の魅力は、聴き手の背筋を一瞬で伸ばさせるような「圧倒的な品格と野生の共存」にある。

吉川晃司自身が作詞・作曲を共に手がけたこの作品には、彼という表現者が持つ特有のダンディズムが凝縮されている。当時の音楽シーンは、親しみやすさを強調したポップスが主流となりつつあった。しかし、彼はその流れに背を向けるかのように、重厚なビートとソリッドなギターサウンドを前面に押し出してきた。

イントロから響き渡るハードなギターのリフは、まるで都会の夜を切り裂くナイフのような鋭利さを持っている。そこに重なるのは、吉川晃司にしか出し得ない、野性的でありながらどこか貴族的な気品を感じさせるボーカルだ。

中音域の厚みと、高音域で見せる狂おしいほどの艶。それらが混ざり合い、独自のグルーヴを生み出している。

「ただ激しいだけではない、抑制された大人の余裕」

それこそが、多くのファンを魅了してやまない、この曲の核心なのだ。

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吉川晃司-2004年撮影(C)SANKEI

ドラマの裏側に灯った、青白い情熱

『Rambling Rose』というタイトルが示す通り、この曲には棘を持つバラのような、美しくも危うい魅力が宿っている。

この曲は当時、日本テレビ系ドラマ『ザ・ワイドショー』の主題歌として起用された。テレビ局の報道現場を舞台に、虚実入り混じる情報の嵐を描いた本作のエンディングにおいて、この曲が流れると、その瞬間に空気が一変したのを思い出す。

ドラマという「虚構と現実が交錯する世界」のシビアな余韻の中で、吉川晃司の放つ非日常的で硬派なサウンドは、一種の清涼剤であり、同時に強烈な意思表示でもあった。編曲には、日本を代表するプロデューサーの吉田建が名を連ねている。シーンの精鋭たちが集結して作り上げたサウンドは、30年以上が経過した今聴いても、全く色褪せることのない強度を誇っている。

時代に流されず、自分を貫くという美学

1994年という年は、音楽業界にとっても大きな転換期であった。デジタル技術を駆使したサウンドが台頭し、誰もが口ずさめるようなキャッチーなメロディが街中に溢れていた。そんな中で、吉川晃司が選んだ道は、あくまでも「生」のエネルギーを重んじるロックンロールであった。自らの肉体を楽器の一部として捉え、ステージで躍動する彼の姿が重なるような、剥き出しのパッションがこの一曲には込められている。

今、改めてこの曲を聴くと、あの頃の冷たく澄んだ冬の空気感が鮮明に蘇ってくる。流行は瞬く間に過ぎ去り、ヒットチャートの顔ぶれも様変わりした。それでも、吉川晃司という男が刻んだロックの魂は、この『Rambling Rose』という一曲の中に、今も熱を帯びたまま封じ込められている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。