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32年前、お茶の間が“思わず脱力”したコミックソング クォーターミリオンを記録した“毒と遊び心の一曲”

  • 2026.2.24
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「32年前の冬、テレビから流れるあの不思議なフレーズに首を傾げなかった?」

1994年。まだ、お茶の間の中心にはいつもテレビがあった時代だ。家族で囲む食卓の向こう側には、常に圧倒的な熱量を持つバラエティ番組が存在していた。そんな中、1990年代のテレビ文化を象徴するコンビが、またしても「大真面目な悪ふざけ」を世に放つ。

とんねるず『フッフッフッってするんです』(作詞:秋元康・作曲:後藤次利)――1994年2月24日発売

その楽曲は、どこか奇妙で、それでいて一度聴いたら耳から離れない不思議な魔力を持っていた。

黄金コンビが仕掛けた“うたのおにいさん”の擬態

1990年代前半のとんねるずといえば、出す曲すべてが社会現象になるような勢いを持っていた。そんな彼らが今作で挑んだのは、教育番組に登場する「うたのおにいさん」のような、徹底して明るく、そしてどこか不気味なほどの清潔感を装ったスタイルだった。

この楽曲は、当時絶大な人気を誇っていたフジテレビ系列のバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』のオープニングテーマにもなった。前作までの『ガラガラヘビがやってくる』や『がじゃいも』といった、子供たちの心を掴むキャッチーな路線を継承しつつも、今作にはより巧妙な仕掛けが施されていた。

制作陣には、もはや説明不要の黄金タッグである秋元康と後藤次利が名を連ねている。彼らが作り上げたのは、表面的には子供向けソングの体裁を取りながら、その実、大人がニヤリとしてしまうような毒や風刺をたっぷりと含んだ「二層構造」の楽曲だった。

石橋貴明と木梨憲武の二人は、端正な身のこなしで「フッフッフッ」と軽やかに歌い上げる。しかし、その爽やかな歌声に乗せられたメッセージには、人間の本質を突くような鋭い視線が隠されていた。この「ギャップ」こそが、とんねるずというアーティストが持つ最大の武器であり、お茶の間を熱狂させた正体だったのだ。

緻密に計算された“違和感”という中毒性

楽曲の魅力を語る上で欠かせないのが、後藤次利による中毒性の高いメロディとアレンジだ。どこか行進曲のような規則正しさを感じさせつつ、当時の最先端のポップスとしてのクオリティが同居している。単なるコミックソングの枠に収まらない「音の厚み」が、この曲を単なる一発ネタに終わらせない説得力を与えていた。

さらに、南流石が手がけた振付が、視覚的なインパクトを決定づけた。誰でも真似できるシンプルさがありながら、どこか滑稽で、それでいて洗練された動き。テレビ画面の中で全力で踊る二人の姿は、当時の子供たちにとってのヒーローであり、大人たちにとっての最高のエンターテインメントだった。

彼らは徹底して「ふざけることのプロフェッショナル」であることを、一分の隙もないパフォーマンスで証明してみせたのだ。その結果として、今作は25万枚を超えるクォーターミリオンのセールスを記録する。楽曲そのものが持つ「妙な心地よさ」が、日本中の購買意欲を刺激したといえるだろう。

時代の熱気を閉じ込めた“最後のアナログな遊び”

1994年という年は、音楽業界においてもデジタル化が加速し、タイアップ至上主義が強まっていった時期でもある。そんな中で、自分たちの番組から流行を作り出し、お茶の間を巻き込んでいくとんねるずの手法は、まさにテレビがもっとも元気だった時代の象徴だった。

『フッフッフッってするんです』というタイトル一つとっても、今振り返れば何の説明にもなっていない。しかし、当時の私たちはその「意味のなさ」の中に、最高の贅沢と遊び心を感じ取っていた。言葉にできないワクワク感が、あの頃のテレビには確かに宿っていたのだ。

この曲を聴くと、当時のブラウン管から放たれていた眩い光や、翌日の学校で誰かが真似をしていた風景が鮮やかに蘇る。それは、単なる懐古趣味ではなく、私たちがかつて共有していた「共通の言語」のようなものだったのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。