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22年前、名盤から放たれた“強気な一曲” 戦国の世と共鳴した“孤高のダンスビート”

  • 2026.2.23

2004年2月。街はまだ冬の寒さに包まれていたが、音楽シーンには熱い風が吹いていた。圧倒的なダンスパフォーマンスと歌唱力で独自のポジションを確立していたBoAが放った3枚目のアルバム『LOVE & HONESTY』。その完成された世界観の中から、シングルとして切り出された一曲があった。

それは、甘いバラードでもなければ、媚びたポップスでもない。どこまでもクールで攻撃的なダンスナンバーだった。

BoA『Be the one』(作詞・作曲:Stephen A.Kipner・David Frank・Nate Butler/日本語詞:Kenn Kato)――2004年2月11日発売

アルバムからのリカットシングルという形でありながら、この曲は単なる「派生作品」には留まらなかった。むしろ、当時の彼女が持っていた“無敵の勢い”を象徴するかのような、鋭利な輝きを放っていたのである。

完璧なアルバムから飛び出した“異質の熱量”

この曲がリリースされる直前の1月、BoAは3rdアルバム『LOVE & HONESTY』を世に送り出していた。

このアルバムは、R&Bからバラードまでを網羅した名盤として、多くのリスナーに愛されていた。通常、アルバムが大ヒットしている最中にシングルを出す場合、ドラマ主題歌になったバラードや、キャッチーなCMソングが選ばれることが多い。

だが、『Be the one』は違った。冒頭から鳴り響くのは、無機質で硬質なビート。そこに絡みつくセクシーかつパワフルなボーカル。それは、「守りには入らない」という彼女の決意表明のようにも聞こえた。

すでにアルバムを持っているファンでさえ、「シングルとして聴くと、また違う顔が見える」と驚いたほど、この曲には一曲で完結する強烈なエネルギーが宿っていたのである。

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2004年、さいたまスーパーアリーナ。初のアリーナツアーで歌うBoA(C)SANKEI

“戦う者”の背中を押すサウンドと歌詞

この楽曲の最大の魅力は、聴く者の心拍数を強制的に上げるような疾走感にある。

作曲を手掛けたのは、海外のクリエイターチーム。洋楽のトレンドを意識したトラックは、当時のJ-POPの中でも一際洗練されていた。編曲を担当した平田祥一郎による、アグレッシブなサウンドメイクが、楽曲に都会的なスピード感を与えている。

そして、そこに載るKenn Katoによる日本語詞が秀逸だ。歌詞の中に並ぶ言葉たちは、迷いや不安を断ち切るような強さに満ちている。

BoAの自立した精神性が、タイトなリズムに乗って鼓膜を揺らす。甘さを排したその歌声は、当時の同世代の女性たちだけでなく、戦うように日々を生きる大人たちの心にも、鋭く刺さったのである。

22年経っても色褪せない“本物”のグルーヴ

この曲は、ゲームソフト『戦国無双』のイメージソングになった。当初、その組み合わせに意外性を感じた人もいたかもしれない。しかし、蓋を開けてみれば、これ以上ないほどのハマり役だった。ゲームの中で描かれる、敵陣を単騎で駆け抜ける爽快感。無数の敵をなぎ倒していくスピード感。それが、『Be the one』の持つ疾走感と完璧にシンクロしたのだ。

あれから22年という月日が流れた。音楽のトレンドは目まぐるしく移り変わり、再生ボタンひとつで世界中の曲に触れられるようになった。しかし、今改めて『Be the one』を聴いても、そこには古臭さが微塵もない。むしろ、K-POPやグローバルなダンスミュージックが主流となった現代においてこそ、この曲の先見性が際立って感じられる。

シンセサイザーの音色、ビートの刻み方、そして何より、一切の妥協を許さないBoAのボーカルパフォーマンス。すべてが「本物」を目指して作られていたからこそ、流行の波に飲み込まれることなく、現在も輝き続けているのだ。

アルバムの中の一曲としても、シングルとしても、そしてゲームのテーマソングとしても。あらゆる角度から、その存在感を証明してみせた『Be the one』。もし今、何かに迷ったり、立ち止まりそうになったりしているなら、この曲を聴いてみてほしい。

22年前の冬、リスナーを鼓舞したそのビートが、きっと今のあなたの背中も、力強く押してくれるはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。