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27年前、日本中が“同じ愛を別の角度から見た”実験的ラブソング 人気者2人が仕掛けた“分岐する恋”

  • 2026.1.12
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2001年撮影、TBS「日本レコード大賞」 ネイルピアスをしながら「日本レコード大賞」を受賞した浜崎あゆみ(C)SANKEI

27年前、もし同じ「愛」を、まったく違う方法で差し出されたら、あなたはどちらを選んでいただろうか。

1999年の春。街には新しい元号を前にした高揚感と、どこか落ち着かない空気が同時に流れていた。CDショップの試聴機からは、似たようでいて、どこか決定的に違う“LOVE”が聞こえてくる。それは、1つの楽曲が2つの人生を歩き始めた瞬間だった。

浜崎あゆみ&つんく『LOVE〜since 1999〜』(作詞・作曲:つんく)――1999年4月14日発売

2人の名前が並んだ、その意味

この曲は、浜崎あゆみとつんくによるデュエットソングとして世に出た。フジテレビ系ドラマ『セミダブル』の主題歌として制作され、放送開始とともに楽曲の存在感も一気に広がっていく。

1999年当時、浜崎あゆみは若い世代を中心に絶大な支持を集め、時代の空気を体現する存在になりつつあった。一方のつんくは、シャ乱Qでの成功を経て、プロデューサー、ソングライターとして強い影響力を持っていた。

すでに完成された人気者同士が、対等な立場で向き合ったデュエット。それ自体が、当時としては異例であり、大きな話題性を持っていた。

同じ曲なのに、まったく違う景色

『LOVE〜since 1999〜』の最大の特徴は、楽曲そのものが「分岐」している点にある。

シングルのA面としてリリースされたのは、浜崎あゆみバージョンでは『LOVE〜Destiny〜』。作詞は浜崎あゆみ自身が手がけ、楽曲全体はバラードとして再構築されている。旋律の流れや構成も、感情の余白を大切にしたものへと姿を変えた。

一方、つんくは同年4月28日に、つんくwith 7HOUSE名義で『LOVE〜抱き合って〜』をリリース。こちらはヒップホップ色の強いダンスサウンドへと大胆に変貌し、歌詞だけでなくメロディ自体にも大きな変更が加えられている。

同じ“LOVE”を起点にしながら、アプローチも質感も、まるで別の楽曲のように響く。この試みは、当時のJ-POPシーンでも極めて珍しいものだった。

2曲目に置かれた、デュエットという距離感

興味深いのは、2人のデュエットがどちらの作品でも「2曲目」に収録されている点だ。

表題曲として前面に押し出すのではなく、少し奥まった位置に配置されたデュエット。そこには、主役はあくまでそれぞれの表現であり、出会いは補足線で描くという、慎重な距離感が感じられる。

デュエットでありながら、依存しない。共演でありながら、同化しない。そのバランス感覚こそが、このプロジェクトを単なる話題作で終わらせなかった理由だろう。

ロングヒットが証明した受け止められ方

浜崎あゆみバージョンは、ランキング初登場1位を記録し、結果的に60万枚を超える売り上げを達成するロングヒットとなった。

当時すでに確立されていた彼女の人気に加え、ドラマとの相乗効果、そして“別の顔を持つ同名曲”という仕掛けが、聴き手の関心を長く引き留めた。

一方で、つんく側のバージョンも、プロデューサーとしての彼の柔軟性や遊び心を示す作品として、強い印象を残している。同じ時代、同じテーマを扱いながら、ここまで違う音楽的結論を提示できた例は多くない。

ひとつの愛が、ふたつの答えを持った時代

『LOVE〜since 1999〜』は、単なるデュエットソングではない。それは、J-POPがまだ実験を許されていた時代に生まれた、ひとつの挑戦だった。同じ素材を使いながら、異なる感情、異なるリスナーに向けて開かれていた構造。

どちらが正解でもなく、どちらも不正解ではない。愛は視点によって形を変えるという、ごく当たり前で、しかし音楽ではあまり語られてこなかった事実を、この楽曲は静かに示していたのかもしれない。

1999年の春に差し出された2つの“LOVE”。それぞれの聴き手が、自分なりの距離で受け取ることを許された、少し特別なラブソングだった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。