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25年前、時間が止まった夜に放たれた“再起動の一曲” 沈黙を破って走り出した“静かな覚悟”

  • 2026.1.12

2001年2月、夜の街は今よりも少しだけ暗く、テレビの光がやけに強く感じられた。携帯電話から着信音が鳴るたびに、日常がほんの少し揺れた時代。音楽は“次へ進むための合図”として、今以上に重たい意味を持っていた。そんな空気の中で、静かに、しかし確かな存在感をもって帰ってきた曲がある。

My Little Lover『shooting star 〜シューティングスター〜』(作詞・作曲:小林武史)――2001年2月28日発売

派手な復活劇ではない。大きな声で宣言するわけでもない。それでもこの曲は、止まっていた時間を、もう一度前へ進めるだけの力を秘めていた。

沈黙の先に選ばれた新作

『shooting star 〜シューティングスター〜』は、My Little Loverにとって13枚目のシングルにあたる。マイラバとしてはおよそ2年ぶりの新作リリースだった。この“空白”は、単なる制作期間ではない。My Little Loverというユニットそのものが、立ち止まり、形を問い直していた時間でもある。

90年代を通して、彼らはJ-POPの中心にいた。透明感のある歌声と、都会的で洗練されたサウンド。その成功体験があるからこそ、次の一歩は容易ではなかったはずだ。

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2015年、2零周年アルバム『re:evergreen』野発売記念ライブを行ったMy Little Loverのakko(C)SANKEI

走り出すために、音は多くを語らない

この曲の最大の特徴は、勢いよりも“持続”に重きを置いたサウンド設計にある。冒頭から前へ進むリズムはあるが、過剰な高揚や劇的な展開はない。小林武史によるサウンドは、あくまで冷静で、均整が取れている。

音数は抑えられ、メロディは直線的。それでも聴き手の耳を離さないのは、全体に流れる“止まらない感覚”があるからだ。

akkoのボーカルも同様に、感情を誇張しない。強く押し出すことも、過度に溜めることもない。そのフラットさが、かえってこの楽曲にリアリティを与えている。走り続けることの覚悟は、叫ばなくても伝わる。この曲は、そうした姿勢を音で示している。

ドラマの幕開けに置かれた理由

『shooting star 〜シューティングスター〜』は、日本テレビ系ドラマ『FACE〜見知らぬ恋人〜』のオープニング・テーマとして使用された。物語が始まる瞬間に流れるこの曲は、視聴者に感情を説明するのではなく、“空気を整える”役割を担っていた。

ドラマの内容と同様に、すれ違いや不確かさを孕んだ世界観。その入口として、この曲の持つ直進性と抑制された熱量は、極めて相性が良かった。

流れ星は、一瞬でも確かに残る

25年が経った今、この曲を聴き返すと、当時の派手なトレンドとは距離を置いた佇まいが、かえって新鮮に響く。立ち止まった経験があるからこそ、前に進む音は強くなる。そんな普遍的な感覚を、この13枚目のシングルは静かに教えてくれる。

流れ星は一瞬で消える。だが、その瞬間を見た記憶は、長く心に残る。『shooting star 〜シューティングスター〜』もまた、そうした“記憶の中で走り続ける一曲”なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。