1. トップ
  2. エンタメ
  3. 15年前、ジュノンボーイで脚光を浴びた“メガネ王子”。不倫夫から改造人間まで…「美しすぎる俳優」とは

15年前、ジュノンボーイで脚光を浴びた“メガネ王子”。不倫夫から改造人間まで…「美しすぎる俳優」とは

  • 2026.6.15
undefined
2013年8月、初写真集『しおのもと。』発売記念イベントを塩野瑛久(C)SANKEI

塩野瑛久はNHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)で一条天皇を演じ、「彫刻のような美しさ」と評された。気品と繊細さをまとった天皇像で、彼の名は一気に広まる。

だが、そこを到達点と見るのは早い。塩野は、つかんだ「美形」を自分から壊しにいく動きの連続だった。特撮ヒーロー、王子、不良、そして天皇。美しさを手にするたび、彼はそれを剥がし、また別の顔を纏い直してきた。

美しい若手という長い助走

塩野は、見た目の良さを早くから期待された俳優だ。第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(2011年)で審査員特別賞およびAOKI賞を受賞後、芸能界入り。2012年のフジテレビ系『GTO』に生徒役の一人として出演し、画面に立ち始める。2013年からのテレビ朝日系特撮『獣電戦隊キョウリュウジャー』ではキョウリュウグリーンこと立風館ソウジを、2018年の日本テレビ系『PRINCE OF LEGEND』では、その名も「メガネ王子」久遠誠一郎を演じた。

整った顔立ちを生かした、美しい若手の役が続く。だが彼は、その型のなかにとどまらなかった。表舞台で広く知られるまでの助走は、思いのほか長い。

静かに崩しはじめる

転機の手前で、塩野は少しずつ自分の像を崩していく。映画『HiGH&LOW THE WORST』シリーズでは、不良グループの一人・小田島有剣を演じた。整った顔の青年が、すごみのある不良になる。王子然とした美しさの、その外側へ踏み出した役だ。

象徴的なのが、2020年から続くテレビ東京系『来世ではちゃんとします』のAくんだ。一流商社に勤める高学歴・高収入のハイスペックなイケメンでありながら、特殊な性的嗜好を抱えた男。完璧に見える外側と、人に言えない内側のギャップそのものを演じる役で、塩野はその落差を嫌味なく成立させた。美しい外見を、内側から裏切らせる。後の「美を壊す」仕事の予兆が、ここにはっきり出ている。

主演作も増えていく。テレビ朝日系の『Re:フォロワー』(2019年)や『不倫をコウカイしてます』(2020年)など、王子然とした美しさの外側へ、静かに足を伸ばしていった。派手なブレイクではない。長い助走の途中で、彼は「美しいだけの人」から少しずつ離れていった。

美が結晶した瞬間

そして2024年、NHK大河ドラマ『光る君へ』の一条天皇である。治世の末期で苦悩を抱える帝を、塩野は気品と内面の繊細さで演じきった。「彫刻のような美しさ」という評は、長い助走の末にたどり着いた一つの結晶だ。

見逃せないのは、絶賛されたのが見た目の美しさだけではなかったことだ。帝の孤独や弱さといった内面まで、塩野は静かに乗せてみせた。美しさと、その奥にある脆さを一人に同居させる力が、ここで証明されている。この年、彼はファッション誌「anan」が選ぶanan AWARDのアクター部門にも選ばれている。

つかんだ美をまた脱ぐ

ところが塩野は、結晶した美に居座らなかった。一条天皇の直後から、彼はその美を壊す方向へ動く。2026年公開の映画『SAKAMOTO DAYS』では、全身に武器を仕込んだ改造人間・鹿島を演じた。なぜ、せっかくつかんだ美しさを自分から手放すのか。おそらく塩野にとって、美形であることはゴールではなく、素材なのだ。

整った見た目は、与えられた便利なアイテムにすぎない。それに寄りかかってしまえば、役者としての伸びしろは止まる。だから彼は、美しい役で評価されるたびに、次はその美を裏切る役へ進む。壊して、また組み立て直す。その繰り返しのなかで、塩野瑛久の表現は少しずつ厚みを増してきた。一条天皇の気品も、改造人間の不穏も、同じ一人の俳優のなかに矛盾なく同居している。

2026年7月スタートの日本テレビ系ドラマ『告白−25年目の秘密−』では、主人公の友人でカフェ店長の相良友也を演じている。秋公開の川上未映子の小説を原作とする話題の映画『すべて真夜中の恋人たち』へも出演。長年、数々の舞台でも主演としてその魅力を発揮している。

美をつかんでは剥がし、また別の美をまとい直す。次にどんな顔で現れるのか、いまの塩野瑛久はまるで予想がつかない。塩野瑛久という俳優の輪郭は、その絶え間ない更新のなかにこそ立ち上がる。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる