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30年前、大人気アニメ主題歌から鳴り響いた“本格ロック” “セクシーさ”で60万ヒットしたワケ

  • 2026.1.12

うるう年だった1996年2月。夜の街はまだ雑多で、ネオンも音楽も、今よりずっと生身だった。ロックは飾るものではなく、鳴らすものだったし、かっこよさは理屈ではなく感触で判断されていた。

そんな時代の空気を、そのままパッケージしたような一曲がある。考える前に身体が反応する。理屈を挟む余地がない。ただ、かっこいい。

THE YELLOW MONKEY『Tactics』(作詞・作曲:吉井和哉)――1996年2月29日発売

テレビアニメのエンディングとして流れながら、この曲は“作品に寄り添う音楽”という枠を軽々と飛び越えていった。

最初からトップギアで鳴るロック

『Tactics』は、THE YELLOW MONKEYにとって13枚目のシングル。この時点で彼らは、すでに勢いのあるロックバンドだった。だからこの曲には、助走も説明もない。

イントロから鳴っているのは、ためのない推進力だ。ドラムは迷わず前に出て、ベースは腰を落としてリズムを引っ張る。ギターは装飾ではなく、曲そのものを動かすエンジンとして機能している。この曲に「静」の時間は存在しない。ずっと走っている。しかも、余裕たっぷりに。

吉井和哉のボーカルも同じだ。感情を溜め込むのではなく、最初から全開のテンションを保ったまま進んでいく。声は前に出ていて、聴き手を置き去りにしない。むしろ、ぐいぐい引き込んでいく。

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1997年、埼玉県・西武球場でライブをおこなったTHE YELLOW MONKEY(C)SANKEI

セクシーさを“勢い”で成立させるバンド

THE YELLOW MONKEYのセクシーさは、湿度や間で作られるものではない。『Tactics』で鳴っているのは、勢いそのものが色気になるロックだ。

リズムが止まらないから、身体が勝手に揺れる。テンポが落ちないから、考える前に気持ちが上がる。この曲のセクシーさは、観察するものではなく、巻き込まれるものだ。

だからこそ、この曲はロックファンだけのものにならなかった。フジテレビ系テレビアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の初代エンディングテーマとして流れたとき、その疾走感と艶は、アニメの世界観を壊すことなく、むしろ強度を与えていた。

エンディングなのに、温度が下がらない。むしろ、次の回が始まるまでの空気を支配してしまう。

その異様な存在感が、『Tactics』を特別な一曲にしている。

『JAM』と並んだからこそ見えた“攻めの顔”

このシングルは、『JAM』との両A面としてリリースされた。社会性やメッセージ性が強く前面に出た『JAM』に対して、『Tactics』は感覚のロックだ。

だが、軽いわけではない。

むしろ、理屈を排したぶん、バンドの身体性がむき出しになっている

この2曲を並べたことで、THE YELLOW MONKEYが「語れるバンド」であり、同時に「鳴らせるバンド」でもあることが、はっきりと示された。

結果として、このシングルは60万枚を超えるセールスを記録する。だが、この数字以上に重要なのは、多くの人が“かっこよさ”を感覚で覚えてしまったという事実だろう。

今も身体に残る、90年代のロックの手触り

『Tactics』は、懐かしさで聴く曲ではない。今聴いても、音が若い。勢いがある。迷いがない。90年代半ば、ロックバンドが持っていた“無敵感”。それを、理屈抜きで鳴らしていた時代の感触が、この曲にはそのまま残っている。

だから30年経っても、色褪せない。思い出としてではなく、今でも普通に、かっこいいロックとして鳴る。『Tactics』は、THE YELLOW MONKEYが最も“ロックバンド然としていた瞬間”を切り取った一曲だ。そしてそれは、今も変わらず、聴く者の身体を揺らし続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。