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新型『フォレスター』、なぜ「今年の1台」に? 派手なEVでもスポーツカーでもない。選考委員を唸らせたワケ

  • 2025.12.19
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)を受賞したスバル・新型フォレスター。その年に発売された数ある新型車の中で、なぜ選考委員は派手なEVやスポーツカーではなく「実直なSUV」を選んだのでしょうか。

その理由は、選考委員が「誰にでも勧められる完成度」「加害者にさせたくない安全意識」と評した“クルマとしての本質の高さ”にありました。激戦のSUV市場で、この受賞が持つ意味を解説します。

「結局、どのSUVを買えば後悔しないのか?」

RAV4、CX-5、エクストレイルなど、実力派がひしめくミドルサイズSUV市場は、選択肢が多すぎて迷いが生じやすい激戦区です。

そんな中、一つの決定的な「答え」が出されました。 その年(前年の11月1日から当年の10月31日まで)に発売された新型車の中から代表となる1台を決める「2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」において、新型フォレスターが栄冠に輝いたのです。

なぜ、他にも多くの先進的な新型車がデビューする中で、一見するとキープコンセプトにも見えるフォレスターが選ばれたのか?

その理由は、実際に票を投じた選考委員たちのコメントを紐解くと見えてくる「カタログ数値を超えた“良心”」にありました。

数値競争ではなく、感性領域の「バランス」

フォレスターの受賞理由は、何か一つの飛び抜けたスペックではありません。「走り」「快適性」「実用性」といった、クルマに求められる全要素を極めて高い次元でまとめ上げた点にあります。

ある選考委員は授賞式で、その選出理由をこう語っています。

「特別にとんがったコーナリング性能があるわけではないですが、バランスよく誰が乗っても普通に気持ちよく乗れる。そこの作り込みの良さをすごく評価しました」

また、別の選考委員も「静粛性、効率、乗り心地の良さ。そういったもののバランスが良く、真面目に進化したという印象」と評しています。

奇をてらったギミックではなく、ハンドルを握った瞬間に感じる「素直な動き」や「静かさ」。RAV4のようなデザインのインパクトや、エクストレイルのような電動駆動の先進感とはまた違う、「クルマとして徹底的に磨き上げられた使い勝手の良さ」こそが、プロの厳しい目によって「今年のNo.1」に選ばれた最大の理由です。

「スバルの個性」と「燃費」の奇跡的な両立

もちろん、技術的なハイライトもあります。新開発のストロングハイブリッド「S:HEV」です。トヨタのシステムを活用しながらも、スバルのアイデンティティである「機械式AWD(プロペラシャフト)」を組み合わせた点に、多くの選考委員がエンジニアの意地を見出したのではないでしょうか。

「ハイブリッドの今後の可能性を感じました。今まではハイブリッドといえばトヨタばっかりみたいなところがあったんですが、スバルの個性が残りつつ、燃費を必ずしも追わなくてもいいという余裕を感じました」

燃費効率だけを優先するなら、四駆システムはもっと簡略化できたはずです。しかし、フォレスターはそれをしませんでした。 その結果、燃費を向上させつつも、雪道や悪路での頼もしさは健在です。「エコになっても、走りの楽しさは捨てない」という姿勢が、クルマ好きの選考委員たちの心を掴んだのではないでしょうか。

「加害者にさせたくない」という妥協なき良心

そして、30〜50代のファミリー層にとって重要なのが「安全思想」です。 今回のCOTYで特筆すべきは、フォレスターの安全性能が「乗員を守る」だけでなく、「相手を守る」領域まで踏み込んでいる点が高く評価されたことです。

「安全意識の高さがポイントです。例えば自転車エアバッグなどは、法規制のためでもなく販売のためでもなく、本当にユーザーを守りたい、『加害者にさせたくない』という意識が非常に高い。これは他のメーカーも学ぶべきところです」

また、別の選考委員もこう断言しています。「やっぱり安全装備。その時代にあった歩行者保護、そしてサイクリスト保護というすごい安全装備に的を絞って1位に選びました」

新車価格が高騰し、一台を長く大切に乗る時代。 自分たちの家族だけでなく、万が一の時に相手の命まで守ろうとするフォレスターの設計思想は、ライバルひしめくSUV市場において、選ぶべき「決定的な理由」となり得ます。

「知人に勧めるならコレ」という究極の結論

今回の受賞理由を象徴する、ある選考委員のコメントがあります。

「いろんな人に幅広くお勧めできる車。知り合いから『何買ったらいい?』と言われた時に、お勧めできる車を考えて選びました」

パッケージング、安全、価格、そして走りの質感。 すべてにおいて妥協なくバランスが取れているからこそ、プロは「知人にも自信を持って勧められる」と判断したのです。

ミドルサイズSUV市場には、RAV4やエクストレイルといった強力なライバルが存在します。 しかし、2025年の自動車シーンにおいて「最も優れた一台」という称号を得たフォレスター。その「王道の安心感」は、迷える車選びにおける間違いのない指針となるのではないでしょうか。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析などを手がけ、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。


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