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新車の軽より「150万も安い」総額100万円以下で「レクサス」が買えてしまう“怪奇現象”

  • 2025.12.14
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

10年連続で軽四輪車の新車販売台数でNo.1を獲得し、日本で圧倒的な人気を誇るホンダ「N-BOX」。その完成度は凄まじく、上級グレードは今や乗り出し200万円を超えます。

一方で、かつて主要グレードの新車価格が400万円を超えていた「レクサスIS(2代目)」は、中古車であれば100万円以下の個体が見つかることもあります。

250万円の予算の使い方として、最新の軽か、熟成の中古高級車か。対極にあるこの選択肢の価値を紐解きます。

250万円の使い道は、「新車」だけなのか?

週末のディーラーで、新車の見積もりを見て言葉を失った経験はありませんか?

いまや日本の国民車とも言える軽スーパーハイトワゴン。その王者であるN-BOXのカスタムモデルなどは、オプションを含めると総額250万円に迫ることも珍しくありません。

「軽自動車に250万円」という時代。

もちろん、それに見合うだけの素晴らしいスペース効率と、最新の安全装備が備わっていることは間違いありません。しかし、その見積書を一度閉じ、少しだけ視点を変えてみてください。中古車市場という広大な海には、新車市場の常識では測れない「市場の盲点」とも呼べる現象が起きています。

かつて「打倒・BMW3シリーズ」を掲げ、トヨタが技術の粋を集めたスポーツセダン、2代目「レクサスIS」が、総額100万円以下というプライスタグを掲げて並んでいるのです。(※車両の状況による)

安さの理由は、シンプルに「年式」が10〜15年落ちだからです。ですが、過走行でくたびれた車ばかりではありません。市場を見渡せば、週末にしか使われていなかったであろう走行距離2〜3万キロ台の車が、この価格帯で見つかることもあります。

新車の軽自動車を買う予算の「2分の1以下の価格」で、かつて憧れたレクサスが手に入る。これは単なる「古い中古車の安物買い」なのでしょうか。それとも、お金の使い方の「賢い選択肢」なのでしょうか。

この意外な2車種を比較検証してみたいと思います。

「L」の紋章を身にまとう、という選択

まず誤解のないようにお伝えしておきますが、N-BOXの実用性は軽自動車の中でも最高レベルです。あの限られた規格の中で最大限の空間を生み出す技術は、素晴らしいものだと筆者も感じています。ですが、車に求める価値の軸を、「広さや便利さ」から「濃密なドライブフィール」や「五感に響く質感」へと移した瞬間、見える景色は変わるのではないでしょうか?

シートに身を沈め、ハンドルに輝く「L」のマークを見つめる。

レクサスに乗るということは、単に移動手段を得るだけでなく、「レクサスというブランドを身にまとう」ことでもあります。

ドアを閉めた瞬間の「バスッ」という重厚な密閉音。分厚いドアと豊富な吸音材によって外界の喧騒が遮断されたとき、あなたは「守られている」という深い安心感に包まれるはずです。これは、軽量化を重視せざるを得ない軽自動車では、物理的に再現するのが難しい領域です。

走り出せば、その差はさらに歴然とします。

搭載されるV6エンジンは、高速道路の合流や長い登り坂でも悲鳴を上げることなく、「フォーン」という粒のそろった快音とともに滑るように加速していきます。N-BOXが「生活を便利にする広大な部屋」なら、レクサスISは「移動の質を高めるタイトなスーツ」です。

どちらが優れているかではありません。「同じ予算で、全く異なる価値観を選べる」ということに意味があるのです。

「古い=壊れる」の誤解と、賢い付き合い方

ここまで読んで仮に心が動いたとしても、最後に残る不安があるはずです。

「そうは言っても古い中古車。維持費がかかるし、すぐ壊れるのでは?」という懸念です。

ここは正直にお伝えしましょう。燃費や税金といった維持費は、軽自動車に比べて間違いなく高くなります。また、もちろん製造から10年以上が経過した車ですので、センサー類やエアコン、パワーウインドウといった細かな故障に関しては、新車と比べて頻繁に起こりうるのが現実です。

ですが、「致命的な故障リスク」に関しては、少し冷静になる必要があります。もしこれが「激安の輸入中古車」であれば、私も強くはお勧めしません。修理費が数十万円にのぼるトラブルのリスクが高いからです。

しかし、2代目ISの中身は、信頼の塊である「トヨタ・クラウン」や「マークX」と多くの部品を共有しています。エンジンの耐久性は折り紙付きで、10万キロを超えても定期的なメンテナンスさえしていれば、エンジンブローのような大きなトラブルは稀です。万が一故障しても、輸入車と比較すると安価に修理が可能というメリットもあります。

新車ほどの保証はありませんが、浮いた車両代の一部をメンテナンス費としてプールしておく。それが、この車との「賢い付き合い方」です。

おすすめは、「IS250 バージョンL」

では、実際にこの「中古のレクサス」という世界に飛び込むなら、どの個体を選ぶべきか。

筆者としては、「IS250 バージョンL」をおすすめします。

新車当時は高嶺の花だった最上級グレードを、中古ならではの価格で手に入れるのがこの遊びの醍醐味です。「バージョンL」の内装には、セミアニリン本革シート、そして「本木目パネル」があしらわれています。さらに「8Way電動パワーシート」でミリ単位の調整が可能で、その快適性は今の高級車にも劣りません。

唯一の注意点は「ダッシュボードのベタつき」です。20系ISの“持病”ですが、ここが対策済みか、綺麗な個体を探すことだけは忘れないでください。

250万円の使い道は、一つではない

もちろん、最新の軽自動車には新車ならではの清潔感と安心感があります。それを否定するつもりはありません。しかし、手元に「250万円」という予算があったとき、その使い道は決して一つではないのです。

あえて熟成された中古のセダンを選び、浮いた100万円以上の予算をメンテナンスやガソリン代、あるいは趣味の旅行や食事に充てる。そんなお金の使い方も、大人の賢明な選択肢の一つなのではないでしょうか。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析などを手がけ、実務に基づいた視点での解説を行っている。


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