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トヨタを避けていたはずが「悪くない…」40代男性がハマった“沼”、結局『ハリアー』に乗り換えたワケ

  • 2025.12.10
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出典:トヨタ自動車株式会社

「俺は、トヨタだけは買わない」

以前、筆者の友人(40代・男性)は、そう断言していました。彼は、よくある「面倒くさい」タイプの男性です。身に着けるものへのこだわりは並大抵ではありません。例えば革靴なら、有名ブランドのロゴ入りではなく、革のなめしにこだわる職人が手がけたものを選ぶほどの徹底ぶりなのです。

若い頃から豊富な経験と同年代よりも多くの資金を手にし、モノ選びに独自の基準を持つ彼にとって、街中に溢れる「トヨタ エンブレム」の車は、いわば“天敵”のような存在でした。「走る家電」「個性がない」……そんなレッテルを貼り、あえて少し手のかかる輸入車や、ニッチなSUVを乗ることに美学を感じていたはずでした。

しかし先日、そんな強固だったはずの彼の美学が、音を立てて崩れ去るのを私は目の当たりにしました。彼が選んだのは、トヨタの『ハリアー』だったのです。

この見た目で、400万円台なのか…

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出典:トヨタ自動車株式会社

彼になぜその選択に至ったのかを尋ねると、きっかけは家族からの「もっと広くて快適な車にしてほしい」という要望で、しぶしぶ立ち寄ったディーラーでの出来事だったといいます。

「どうせ、プラスチックだらけの安っぽい内装だろう」

そんな偏見を持ってハリアー(80系)の運転席に腰を下ろした瞬間、彼は意表を突かれました。予想していた「安っぽさ」が、そこにはなかったからです。

もちろん、彼がこれまで好んできたメルセデス・ベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドのような、重厚なラグジュアリー感とは違います。

しかし、ハリアーの車内には、それらとは違う種類の「良さ」が漂っていたと彼は熱弁します。

欧州車を超えた!? 日本的な「緻密さ」

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出典:トヨタ自動車株式会社

彼が「特に意外な発見だった」と語ってくれたのが、操作系の感触についてです。

ウインカーレバーのタッチや、スイッチの「カチッ」とした節度感。これらに関しては、彼いわく「欧州車よりも日本メーカーのほうが一枚上手かもしれない」とのこと。日本人の感性に寄り添うような、緻密で繊細な操作フィールに、こだわり派の彼も舌を巻いたようです。

そして実車を見た際、彼がしきりに感心して触れていたというのが、馬の鞍をイメージしたというセンターコンソールでした。レザー調の素材で覆われたその造形は、派手な加飾こそありませんが、つい触れたくなるような美しい曲面を描いています。

「……悪くない。いや、むしろ落ち着くな」

運転席で一人、思わずそうボソッと漏らしてしまったといいます。おそらく彼が感じ取ったのは、派手なライトで誤魔化すような演出ではなく、真面目な素材選びと緻密な建て付けで勝負する、日本メーカーらしい「実直な質感」だったのでしょう。

そして、営業マンから見積もりを受け取った時、彼の中で決定的な変化が訪れます。最上位に近い「Z」グレード(ガソリン車)でも、諸経費を含めた乗り出し価格は500万円以下。

「この見た目で、400万円台なのか……?」

彼は我が目を疑い、何度も数字を確認したそうです。もしこれが輸入車のSUVなら、同等の装備をつければ600万円、いや700万円は下らないでしょう。ハリアーが纏(まと)っているのは、それほど圧倒的な「高見え」のオーラなのです。

これを「安っぽい」と切り捨てるのは簡単です。しかし、この価格でこの仕立てを実現した企業努力、いや「商売の上手さ」を認めることこそ、ビジネスを知る大人の態度ではないか。見積書を見つめながら、彼はそんな風に妙に納得してしまったと、苦笑いしながら話してくれました。

最後の砦を崩したのは「リセールバリュー」

内装の質感に納得しつつも、まだ「トヨタに乗る」という心理的抵抗は残っていたといいます。「みんな乗っているし……」。

そんな心理的抵抗を崩したのが、ハリアーの持つ「リセールバリュー」でした。

彼は過去、こだわりの輸入車を手放した際の「絶望」を語ってくれました。半値を割り込むこともザラ。昔は勉強代だと割り切っていたものの、教育費や住宅ローンのある家計にとって、その負担は重くのしかかってくるといいます。

一方、ハリアーはどうか。特にガソリン車「Z」グレードの人気は凄まじく、3年後も驚異的な残価率を維持しています(※市場相場による)。納期も短縮された今、彼はハリアーを移動手段ではなく、流動性の高い「資産」と捉え始めたのです。

「俺は主義を曲げたんじゃない。賢い買い物として利用してやるんだ」

そう言い聞かせた時、彼の中でハリアー選びは「妥協」から「戦略」へと変わりました。故障や維持費におびえ「こだわり」を貫くか、高いリセールを担保に家族と美味しい鮨を食べるか。どちらが本当に「カッコいい大人」なのか?

リアリストとして、彼が出した答えは明白だったようです。

ようこそ。「トヨタ沼」へ

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出典:トヨタ自動車株式会社

結局、彼は契約書にハンコを押しました。

納車されたハリアーで街に出ると、信号待ちで隣に同じハリアーが並ぶこともあります。ですが、彼いわく「以前のような嫌悪感は不思議とない」とのこと。むしろ「お前も、賢い選択をしたんだな」という、奇妙な連帯感すら覚えるそうです。

周囲の反応も上々なようです。車に詳しくない知人や部下からは「高級そうな車ですね」「やっぱりハリアーはカッコいいですね」と称賛されるとか。

「乗り出し400万円台で買ったとは、誰も思わないんだよ」

そう語る彼の顔は、どこか得意げでした。これが彼が言っていた「400万円のハッタリ」の威力なのでしょう。

かつては「退屈だ」と切り捨てていたその乗り味も、仕事で疲れた今の彼には「安らぎ」として響いているようです。

「こだわりを捨てたわけじゃない。こだわりを『モノ』から『生き方』へとシフトさせたんだ」

そうやって見事な自己正当化を完了させ、彼は今日も満足げにハリアーのステアリングを握っています。そんな彼の姿を見て、私は思わず心の中で呟いてしまいました。

ようこそ。間違いなく賢くて幸せな、「トヨタ沼」へ……と。


出典:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト(https://global.toyota/jp/)



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析などを手がけ、実務に基づいた視点での解説を行っている。