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「増額する必要はない」お金のプロが断言。インフレ時代の『お年玉問題』…大人こそ守るべき「お金の価値観」とは?

  • 2025.12.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

お正月の風物詩、お年玉。年々物価が上がる中で、「お年玉の金額も上げるべき?」と疑問に思う人は多いでしょう。果たしてお年玉の価値は、物価と同じように単純に上げるべきものなのでしょうか?

お年玉の意味や、家計への影響、さらには子どもへの金融教育の観点から、どう考えるべきなのか。お金のプロの柴田充輝さんが、お年玉にまつわる誤解と、本当に大切にすべきポイントを語ってくれました。この記事を読めば、肩の力を抜いて、真心のこもったお年玉のあり方について理解が深まります。

お年玉の本質とは?金額を物価に合わせて変える必要は?

---昭和・平成から続く『小学生は3,000円、中学生は5,000円』といった“相場”は、令和の物価高を考えると、実質的な価値が目減りしていると思います。今の子供たちが昔と同じ『喜び』や『購買力』を得るために、大人はこの定額相場をアップデートすべきなのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「お年玉の金額相場を、物価上昇に合わせて機械的にアップデートする必要はないと考えています。

そもそもお年玉の本来の意味を振り返ってみましょう。お年玉は元来、新年を祝う神事に由来するもので、年神様からの賜り物として餅を分け与えたことが起源とされています。つまり、お年玉の本質は「金額の多寡」ではなく、「新しい年を迎えられたことへの祝福」であり、「子どもの健やかな成長を願う気持ち」を形にしたものなのです。「昔と同じ購買力を維持しなければならない」という発想自体が、本来の趣旨からやや外れているとも言えるでしょう。

確かに、消費者物価指数は上昇しており、かつて3,000円で買えたものが今は買えないという現実はあります。しかし、お年玉を「子どもが欲しいものを買うための資金」と捉えすぎると、金額のインフレが際限なく続くことになりかねません。また、お年玉を受け取ったことに対して、きちんと感謝の気持ちと言葉を伝えられないような子どもに対しては、一切渡す必要はないでしょう。

もちろん、ご自身の経済状況に余裕があり、子どもを喜ばせたいという純粋な気持ちから金額を増やしたいとお考えの方は、ご自由になさればよいと思います。それは個人の価値観や家庭の方針の問題であり、正解も不正解もありません。ただし、周囲との横並び意識や「こうすべき」という義務感から無理に増額するのは本末転倒です。大切なのは、贈る側の真心であり、その気持ちは金額では測れないものです。」

物価高の時代におけるお年玉の金額と家計の関係

---物価高はあげる側の家計も直撃しています。『子供には夢を与えたいが、財布は厳しい』というジレンマの中で、角を立てずに総額をコントロールする、あるいは現金の代わりに『体験』や『投資(NISA)』を贈るといった、インフレ時代の新しいお年玉の渡し方はありますか?

柴田 充輝さん:

「物価高の影響は、お年玉を受け取る子ども側だけでなく、渡す大人の側の家計にも確実に及んでいます。このような状況下で最も重要なのは、まず自分たち自身の生活基盤をしっかり守ることです。他者への贈り物のために自らの生活を犠牲にするのは、長期的に見て誰のためにもなりません。

お年玉を渡す場面の多くは、お正月の帰省時に発生します。しかし、この「帰省」という行為そのものを冷静に見つめ直してみてはいかがでしょうか。年末年始の帰省には、想像以上のコストと負担が伴います。新幹線や飛行機の繁忙期料金、高速道路の渋滞による時間的・精神的消耗、手土産代、そして何より親戚との付き合いにおける気遣いや気疲れ。これらを総合的に考えると、帰省のデメリットは決して小さくありません。

「子どもには夢を与えたい」という気持ちは理解できますが、その夢を与えるために大人が疲弊してしまっては本末転倒です。昔から「遠くの親戚より近くの他人」という言葉があります。年に一度か二度しか会わない親戚に義理を果たすために無理をするよりも、日常的に関わりのある身近な人間関係を大切にする方が、人生の幸福度という観点では合理的かもしれません。

お年玉の総額をコントロールしたい場合、最もシンプルな方法は「会う機会を減らす」ことです。帰省の頻度を下げれば、必然的にお年玉を渡す回数も減ります。もちろん、これは親族関係を軽視せよという意味ではありません。電話やビデオ通話で新年の挨拶をすることも立派なコミュニケーションですし、お年玉は郵送で少額を送るという選択肢もあります。

「体験」や「NISA」をお年玉として贈るという新しい形も話題になっていますが、これらは必ずしも万人向けではありません。体験型ギフトは具体的な計画や手配が必要ですし、ジュニアNISAへの投資は受け取る側の理解や口座開設などのハードルがあります。こうした「新しいお年玉の形」を模索するのも良いですが、それ以前に「そもそも無理をしてまでお年玉を渡す必要があるのか」という根本的な問いを自分自身に投げかけてみることをおすすめします。義務感から解放されれば、お年玉に対する心理的負担も軽くなるはずです。」

お年玉を賢く渡すために知っておきたいポイントと金融教育のヒント

---逆に、このインフレをお金の教育(金融教育)のチャンスと捉えることはできますか? 子供に対して『なぜお年玉の額が変わらない(あるいは増える)のか』、その背景にある『お金の価値の変化』をどう伝えれば、将来役立つ金銭感覚を養うことにつながるでしょうか?

柴田 充輝さん:

「インフレという経済現象を子どもへの金融教育の好機と捉えることは、確かに可能です。ただし、その効果が得られるかどうかは、お子さんの年齢、知的好奇心、そして物事を論理的に考える力に大きく依存します。率直に申し上げれば、こうした教育が響くのは、ある程度の知的素養を持った「賢い子ども」に限られるでしょう。

インフレとは、お金の価値が相対的に下がり、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減少する現象です。これを子どもに説明する際には、具体的な事例を用いるのが効果的です。たとえば、「去年3,000円で買えたゲームソフトが、今年は3,500円になっている」「お気に入りのお菓子の値段は変わっていないけれど、中身の量が減っている」といった身近な例を挙げることで、抽象的な経済概念を実感として理解させることができます。

お年玉の金額が変わらない場合、「同じ5,000円でも、去年より買えるものが少なくなっているよね。これがインフレだよ」と教えることができます。逆に金額を増やした場合は、「物の値段が上がっているから、同じものを買えるように金額を増やしたんだよ」と説明できます。どちらのケースでも、「お金の額面」と「お金の実質的な価値」は異なるという重要な概念を伝える機会になります。

ただし、繰り返しになりますが、このような教育が効果を発揮するのは、経済や社会の仕組みに興味を持ち、抽象的な概念を理解できる知的能力を持った子どもに限られます。すべての子どもがインフレの説明を聞いて「なるほど」と思えるわけではありませんし、興味のない子どもに無理に教え込もうとしても逆効果になりかねません。

金融教育は、子どもの発達段階と関心に合わせて、無理なく自然に行うのが理想です。お年玉をきっかけにインフレの話ができれば素晴らしいことですが、それが難しければ、まずは「お金は大切に使おうね」「貯金も少しはしておこうね」といった基本的なメッセージから始めればよいでしょう。

また、金銭教育だけでなく「マナー」の面も教育しましょう。親戚からお年玉を受け取った際に、きちんと感謝の言葉と気持ちを伝えることも、金銭教育以上に重要です。」

お年玉の真の価値は「心」にあり

物価の上昇や社会の変化に左右されがちなお年玉の金額ですが、本来の意味は「新年の祝福」と「子どもの健やかな成長を願う気持ち」の表れです。だからこそ、金額を無理に物価に合わせて増やす必要はなく、何よりも大切なのは贈る側の真心です。

また、親子間でお金の価値やインフレについて話す機会と捉えられる一方で、無理強いは禁物。お年玉は感謝の気持ちを伝えるマナーの教育にも役立ちます。

十分に考えた上で、自分たちの生活基盤を優先しつつ、心にゆとりを持ち、お年玉という伝統と向き合うことが、ストレスなく、意味ある贈り物に繋がるでしょう。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。