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「特に危険なNG行動」一級建築士が警告。“暖房”と“加湿器”を同時に使うと…壁の中で起きる「恐ろしい異変」とは?

  • 2025.12.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

冬になるとよく聞く「暖房は乾燥の元」という話。しかし、その認識には大きな落とし穴があります。

なぜ暖房を使うと空気が乾燥して感じるのでしょうか?また、加湿器を使うことは果たして効果的なのでしょうか?実は知らずに行う湿度調整が、家の結露や耐久性に深刻な影響を及ぼす危険性があるのです。

今回は、冬の暖房時に適切な湿度管理のポイントと結露対策について、一級建築士のyukiasobiさんに詳しく伺いました。これを知れば、寒い冬でも安心して過ごせる住まい作りにつながるはずです。

暖房はなぜ「乾燥」して感じるの?暖房と湿度の真実とは

---なぜ暖房をつけると空気が乾燥しているように感じるのでしょうか?その原因と誤解について教えてください。

yukiasobiさん:

「『暖房=乾燥』というイメージは強いですが、実はここには大きな落とし穴があります。

空気が乾燥しているように感じるのは、温度が上がって「相対湿度」が下がっただけで、家の中の水分の絶対量(重さ)が減ったわけではありません。

特に危険なNG行動は、「石油やガスなどの開放型ストーブ」を使いながら、さらに「加湿器」をガンガン回すことです。

開放型ストーブは燃料を燃やす際に、大量の水蒸気を室内に放出します。そこに加湿器を足すと、室内は目に見えない「大量の水蒸気(湿気)」であふれかえります。その湿った温かい空気が、冷えた窓や壁際に触れた瞬間、一気に「結露」へと変わります。

「喉が痛いから」と湿度を上げすぎると、部屋を暖めているつもりが、実は家のあちこちに「水をまいている」のと同じ状態になってしまうのです。」

暖房器具と加湿器の使い方で起きる結露の危険性とは?

---暖房器具を使いながら加湿器を併用すると、どんなトラブルが起きやすいのでしょうか?注意点を教えてください。

yukiasobiさん:

「最も恐ろしいのは、目に見える窓の結露ではなく、壁の中で起きる「内部結露」です。

温まった湿った空気は、コンセントの隙間や壁紙の継ぎ目から壁の裏側へと侵入します。外気に冷やされた壁の内部で結露が起きると、断熱材が水を吸って重くなり、ずり落ちてしまいます。

こうなると、家は「濡れたダウンジャケット」を着ているような状態になり、断熱性能はガタ落ちします。さらに湿った状態が続くと、木材を腐らせる「腐朽菌」が繁殖し、家の骨組みである柱や土台をボロボロにしていきます。

最悪のシナリオは、腐った木材を好む「シロアリ」を呼び寄せること、そして湿気によるコンセントの漏電火災です。大きな地震が来た際に、腐朽が進んだ家は本来の強度を発揮できず、倒壊のリスクが飛躍的に高まります。」

冬の湿気対策で守るべき家の健康と安全のポイント

---暖房を長時間稼働させる『お正月』こそ気をつけるべきポイントはありますか? 今すぐ家具を動かせない場合でも実践できる、換気のコツや点検すべき場所(コンセント周りなど)を教えてください。

yukiasobiさん:

「家族が集まり、料理や暖房で湿気が急増するお正月こそ、以下の「3つのチェック」を実践してください。

1.家具の裏に「空気の道」を作る 
大きな家具を動かすのは大変ですが、壁から「5cm」だけ離すことはできるはずです。このわずかな隙間が空気の通り道となり、家具の裏でのカビ発生を劇的に抑えます。

2.コンセントの「ホコリ」を払う 
冬は静電気でホコリが溜まりやすく、結露の湿気を吸うと「トラッキング現象」という発火を招きます。特に家具の裏に隠れたコンセントを、乾いた布やモップでサッと拭くだけでも火災予防になります。

3.「お風呂の換気扇」を回し続ける 
人が集まると二酸化炭素と湿気が充満します。窓を開けるのが寒ければ、家中の一番強力な換気扇である「お風呂」の換気扇を、お正月期間中だけでもフル稼働させてください。これだけで家全体の空気のよどみが解消されます。
お正月は「家も働き詰め」の状態です。少しだけ空気を逃がしてあげる意識を持つことが、大切な住まいを長持ちさせる秘訣です。」

冬の湿度管理で家も健康に!結露対策の3つのポイントを実践しよう

冬の暖房使用時に「乾燥している」と感じるのは、水分の絶対量が減っているわけではなく、相対湿度が変化しているだけです。開放型ストーブと加湿器の併用は結露のリスクを高め、家の耐久性や安全性を損なう恐れがあります。

そこで実践したいのが、家具を壁から少し離して空気の通り道を作ること、コンセントのホコリ掃除で火災予防に努めること、そしてお風呂の換気扇を使って換気をしっかり行うことの3つのポイントです。

特に人が多く集まるお正月は湿度が上がりやすいため、この対策が家と家族を守る鍵となります。少しの意識と工夫で、冬の住まいを健やかに保ちましょう。


監修者:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、住宅都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。