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「逆効果になってしまう」臨床心理士が警告。“受験期の子ども”のやる気を削ぐ…親がかけてはいけない「NGワード」とは?

  • 2025.12.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

受験を控えた子どもへの声かけに悩む親御さんは多いですよね。良かれと思って発した言葉が、かえって子どものやる気を削いでしまったり、表情が硬くなる経験をしたことはありませんか?

特に受験直前の時期は、親の言葉ひとつで子どもの心が大きく揺れ動きやすいものです。今回は、「どのような言葉が子どもの不安を増幅し、逆効果となるのか」、また「どんな声かけが子どもの自己肯定感を高め、安心して本番に臨めるのか」を、臨床心理士・認定専門公認心理師のaiirococcoさんに詳しく伺いました。

受験を控えた親御さんの不安を少しでも和らげるヒントが見つかるはずです。

受験前の子どもへのつい言ってしまいがちなNGワードとは?

---親としては『励まし』や『発破をかける』つもりで言っているのに、逆に子どもの足を引っ張ってしまう『NGワード』の代表例は何でしょうか? 特に、直前期だからこそ禁句となる具体的なフレーズを教えてください。

aiirococcoさん:

「受験前の子どもに、どんな声をかけるといいのか、悩んでいる親御さんは多いと思います。良かれと思って言った言葉で、子どもの表情が硬くなってしまった、逆にやる気を損なってしまった、なんてこともあるのではないでしょうか。まだ受験まで時間がある時期ならいいのですが、直前になって、逆効果になるような関わりは避けたいですよね。

例えば「みんなはもっとやってるんじゃないの?」「〇〇くんは塾で相当やってるみたいよ」という投げかけは、子どものやる気を損なってしまう言葉です。自分の子も同じように頑張って欲しいと思うがあまり、つい言ってしまいがちですが、逆効果になってしまうでしょう。

また「受からなかったらどうするの!?」という脅しは、やはり「NGワード」ではないでしょうか。合格できないと、人生が終わるようなイメージを抱かせてしまいかねません。特に不安を感じやすいお子さんにとっては、かなりの重圧になってしまうでしょう。

「もっと頑張れ!」「やればできるから!」と励ますことも、プレッシャーになってしまうお子さんもいます。特に、本人なりに頑張っている子に対して過剰な励ましをすることは、強い圧をかけて潰すことにつながってしまいがちです。」

受験直前の子どもの不安と親子の関わり方について

---受験直前、子どもにはどんな心理状態が多く見られますか?また、不安を増やさないために親が気をつけるべきことは?

aiirococcoさん:

「受験の直前は、それまですごく頑張っていた子も、最近になって頑張り始めた子も、同じようにある程度の不安を感じています。

「うちの子は、本当に受験生?と思ってしまうくらいだ」と頭をかかえる親御さんも結構います。でも、そういう子でも、話してみると、実は受験というものに対して不安を感じている様子が見られるものです。

そういう時に「NGワード」として挙げたような言葉掛けをすると、その不安を増強させてしまうことになります。大人だって、不安な時に何かに集中して取り組むのは難しいのではないでしょうか。子どもも同じで、不安が膨らんでしまうと勉強に集中できなくなったり、やる気が出なくなってしまったりするのです。受験直前で、それは悪影響でしかないですよね。

また、親が「あなただけ受からなかったらどうするの?!」と発破をかけ続けて頑張らせた結果、テスト当日に頭が真っ白になってしまって、普段の力の半分も発揮できない子もいます。追い込むことが功を奏する時期もあるのですが、受験直前まで追い込み続けることは、子どもの心を潰すことに繋がってしまいます。」

受験直前に親ができる大切な2つのこととは?

---つい余計なことを言ってしまうのは、親自身の不安の表れでもあると思います。親が自分の不安を飼い慣らし、試験当日に向けて子どもを『支える存在』に変わるために、今日からかけるべき『魔法の言葉』や接し方の正解を教えてください。

aiirococcoさん:

「受験生の親子と話していて、そして実際にわたし自身が受験生の親になって思うのは、親の方が不安が大きいということです。自分のことであれば、それなりに対処できるのですが、自分のことではないからこそ、どんどん不安が募っていってしまいます。

その膨らんでしまった不安を解消したくなってしまい、つい子どもを追い込むような言葉をかけてしまうということは、結構誰にでも起こることかもしれません。とはいえ、子どもの足を引っ張りたい親なんて居ないですよね。

受験直前の大事な時期、親ができることは、ふたつです。ひとつは「子どもの健康を保つこと」です。しっかりと栄養価の高い食事を用意することや、風邪をひいたりしないよう気を配ってあげることは、当然のことながら大切です。

もうひとつは「子どもの自己肯定感を上げること」です。「すごく頑張ってるね!」と褒めたり「難しい問題も解けるようになってきたね」と関心を示したりすることが効果的です。あまり頑張れていないと思っていても「最近前より頑張ってるように見える」と伝えることで、子どものやる気がアップします。人は褒められると、やりたくないことに対して腰が上がりやすくなる生き物です。

親として不安はあるでしょうし、思うところはたくさんあるかもしれません。でも、それは心の中にしまって、肯定的な言葉掛けをしていくことで、結果的に親の不安も軽減されると思います。そして当日、お子さんが自分の力をしっかりと発揮することにも繋がります。」

親の声かけひとつで子どもの受験力が変わる!

受験直前の子どもに対して、親がどのような言葉をかけるかはとても大切です。つい比較や脅し、過剰な励ましといった「NGワード」を言ってしまいがちですが、これらは子どもの不安をかえって増幅し、やる気を削いでしまう恐れがあります。子どもがどんなに不安を抱えていても、それを増やさず、安心感を与えられる声かけを心がけましょう。

そのために親ができることは、大きく分けて「健康管理」と「自己肯定感のサポート」の2つ。栄養のある食事を用意し、体調を気遣うことで子どものコンディションを整え、また「頑張っているね」「できるようになっているね」といった具体的な肯定の言葉で子どもの心を支えましょう。褒められることで子どもはやる気を取り戻しやすくなりますし、親の不安も和らいでいきます。

親自身の不安を内に秘め、前向きな声かけを積み重ねることが、受験本番でお子さんが持てる力を発揮しやすくする最大の秘訣と言えるでしょう。


監修者:aiirococco(note
臨床心理士・認定専門公認心理師。総合病院小児科、市役所の子育て相談で、子どもと親の相談を担当しています。大きな壁にぶつかっている親子が、少しでも笑顔で楽しく毎日を過ごすことができるよう、一緒に考えることが仕事です。私生活では、二人の男の子を子育て中。ちょうど我が家も受験生です。子どもの望みが叶うよう、親としてどんな表情で、どう声をかけるか、わたしも日々模索中です。