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「なるべく避けてください」管理栄養士が警告。“味噌汁”の作り置きで食中毒に…意外とやりがちな「NG行動」とは?

  • 2025.12.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

家庭でよく作る味噌汁や煮物などの作り置きで、不安を感じたことはありませんか?

「熱いまま置いて大丈夫?」「粗熱を取ってから冷蔵庫に入れたほうがいいの?」など、実は見落としがちなポイントがあるのです。

特に「ウェルシュ菌」という細菌が原因の食中毒は、意外にも味噌汁などで起こりやすいという専門家の指摘があります。

この記事では、ウェルシュ菌の特徴と安全に保存するための正しい温度管理や保存方法を、管理栄養士の工藤まりえさんに詳しく伺いました。

ウェルシュ菌とは?味噌汁や煮込み料理で起こる食中毒の原因菌

---ウェルシュ菌が味噌汁などの煮込み料理で増殖しやすい理由は、どのような温度帯や酸素環境が関係しているのでしょうか?

工藤まりえさん:

「ウェルシュ菌とは、土や水、私たちの身の回りに広く存在する細菌で、カレーやシチューなどの煮込み料理による食中毒でよく知られています。実はこうした料理だけでなく、家庭でよく作る味噌汁でも起こり得る点が特徴です。特別な調理をしていなくても、条件がそろうと増殖してしまいます。

この菌の特徴のひとつが、酸素が少ない環境を好むこと。鍋の中は具材や汁に覆われて空気に触れにくく、ウェルシュ菌にとって増えやすい状態になりがちです。

また、増殖しやすい温度帯は20〜50℃前後。これは、調理後の味噌汁や煮物が冷めていく途中で必ず通る温度帯でもあります。味噌汁も量が多いと鍋の中心部がなかなか冷めず、この温度帯に長くとどまりやすくなります。

さらにウェルシュ菌は、熱に強い「芽胞(がほう)」という形で生き残る性質があります。そのため、しっかり加熱調理していても、調理後に温かいまま放置してしまうと、残った菌が増殖して、食中毒につながることがあります。」

「粗熱が取れたら冷蔵庫へ」は間違い?ウェルシュ菌増殖のリスクとは

---味噌汁の保存時に「粗熱が取れたら冷蔵庫へ」という方法を実践している家庭が多いですが、この温度帯での保存がウェルシュ菌増殖のリスクになるのでしょうか?

工藤まりえさん:

「味噌汁の保存時に「粗熱が取れたら冷蔵庫へ」という考え方自体は間違いではありませんただし、その“粗熱を取る時間”が長くなると、ウェルシュ菌が増殖するリスクは高まります。

というのも、ウェルシュ菌は20〜50℃前後の温度帯で活発に増殖します。調理後の味噌汁は、火を止めてから冷蔵庫に入れるまでの間、この温度帯をゆっくり通過しがちです。特に、鍋ごとキッチンに置いたまま冷ますと、表面は冷えていても中は温かく、菌が増えやすい状態が続いてしまいます。室温が高い季節や、暖房をかけて室内が暖かい場合は、味噌汁が冷めるまでに時間がかかり、ウェルシュ菌が増えやすい状態が長く続いてしまいます。

「粗熱」という言葉から、触って冷たいと感じるまで待つイメージを持つ方も多いですが、ウェルシュ菌対策では“粗熱を取ること”より“スピード”が重要です。長く置いて自然に冷ますより、できるだけ早く危険な温度帯を通過させることがポイントになります。

大切なのは、「粗熱を取ること」よりも、20〜50℃前後の温度帯をできるだけ早く通り過ぎて、冷蔵の温度(10℃以下)まで下げることです。湯気が落ち着いたら、保存容器に移す、鍋底を流水で冷やすなどして温度を下げ、早めに冷蔵庫へ入れることが、リスクを減らすポイントになります。」

安全な味噌汁の保存法と再加熱のコツとは?作り置きのリスクを減らす3ステップ

---味噌汁や煮物を作り置きする際のNG行動、ウェルシュ菌の増殖を防ぐために家庭で最も実践しやすい冷まし方と保存の手順を具体的に教えていただけますでしょうか。

工藤まりえさん:

「味噌汁や煮物を作り置きする際、温かいまま長時間放置することはなるべく避けてください。出来上がりお料理を、鍋にフタをしたままキッチンに置く、夜作って翌朝までそのままにする、といった行動は、ウェルシュ菌が増えやすい温度帯を長く保ってしまいます。また、大きな鍋のまま冷蔵庫に入れるのも、中心部が冷えにくく、リスクが残りやすいNG行動です。

増殖を防ぐために大切なのは、「自然に冷めるのを待つ」よりも早く冷やす工夫。まず、できるだけ小分けにして保存容器へ移すことで、熱が逃げやすくなります。次に、鍋底や容器の底を流水や氷水に当てて外側から冷却すると、効率よく温度を下げられます。このとき、フタは完全に閉めず、少しずらして湯気を逃がすのがポイントです。

人肌より少し温かい程度まで下がったら、30分以内を目安に冷蔵庫へ入れましょう。特に夏場は、「もう少し冷ましてから」と待たず、早めの行動が安心につながります。

保存後に食べる際は、全体がしっかり沸騰するまで再加熱し、温め直したら早めに食べ切ることも大切です。冷却・保存・再加熱の3ステップを意識するだけで、作り置きでも安全性は大きく高まります。」

ウェルシュ菌を防ぐ正しい味噌汁の作り置き法

味噌汁や煮物に潜むウェルシュ菌の食中毒リスクは、正しい温度管理と保存方法で大きく減らせます。

重要なのは「粗熱を取るよりスピード重視」で、調理後早めに熱を逃し、冷蔵温度まで素早く冷やすこと。鍋のまま長時間放置したり、大鍋のまま冷蔵庫に入れるのは避け、小分けにして外から冷やす工夫が効果的です。また、再加熱では全体がしっかり沸騰するまで温め、食べ切ることも忘れずに。

こうしたポイントを知って実践すれば、安心して作り置きを楽しめます。少しの意識で日々の食卓を安全にし、家族の健康を守りましょう。


監修者:工藤まりえ
大学にて栄養学と分析化学を専門とし、管理栄養士免許を取得。卒業後は都内飲食系会社にてフードコーディネーターとして勤務。また、管理栄養士としてはスポーツジムに通う方を対象に、体質改善・ダイエットのための栄養指導を実施。短期的な痩身だけではなく、健康的で太りにくい体質への改善を目指した、専門的かつ行動に移しやすいアドバイスを毎月100名程に対して行っている。