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「退職日1日ズラすだけで、手取りが数万円増える…」ボーナス満額もらうなら「月末退職」はNGだった…【社会労務士が解説】

  • 2025.12.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「ボーナスをもらってから辞めたい」と考える方は多いはず。しかし、退職日をどの日に設定するかで、受け取る手取り額が思った以上に変わってしまうことをご存じでしょうか?

その理由は、社会保険料の計算方法に隠されています。どうしてたった数日の違いで数万円も手取りが減ってしまうのか、4〜6月の残業が翌年の手取りに影響を与えるのはなぜか―。

今回は、社会保険制度の仕組みや、賢い退職日の決め方や働き方のポイントを、あゆ実社労士事務所 加藤あゆみさんに詳しく伺いました。知っておくことで無駄な手取り減少を防げる情報にご期待ください。

退職日は「月末の前日」が賢明?ボーナスの手取りに影響する社会保険の仕組みとは

---多くの人が「ボーナスをもらってから退職したい」と考えますが、退職日のタイミングによってボーナスの手取り額が変わるのはなぜですか?どうすれば損をせずにボーナスを受け取れますか?

あゆ実社労士事務所:

「『ボーナスをもらってから辞めたい』と考える方は多いですが、実は退職日をいつに設定するかによって、ボーナスの手取りが大きく変わることがあります。

その理由は、社会保険料の計算方法にあります。社会保険料は、「その月に給与や賞与をもらったかどうか」ではなく、その月の末日に社会保険の資格があるかどうかで決まります。

たとえば、退職日を30日や31日などの「月末」に設定すると、月末時点ではまだ会社に在籍しているため、その月分の健康保険料・厚生年金保険料が発生します。この社会保険料は、月給だけでなく賞与からも差し引かれるため、「ボーナスを満額もらえると思っていたのに、想像以上に引かれてしまった」というケースが少なくありません。

一方で、退職日を「月末の前日(29日や30日)」に設定すると、月末時点ではすでに社会保険の資格を喪失している扱いになります。その結果、原則としてその月分の社会保険料はかからず、ボーナスからも引かれません。たった1日の違いですが、社会保険料は1か月単位で計算されるため、この差が数万円単位になることもあります。

損をしないための基本的な考え方は、「退職日は月末を避ける」ということです。特にボーナス支給月に退職を予定している場合は、退職日をどこに設定するかを事前に確認することで、無用な手取り減少を防ぐことができます。」

春の残業が翌年1年間の社会保険料水準を決める?「標準報酬月額」の落とし穴とは

---ボーナス月とは別に、春(4〜6月)の働き方が1年間の手取りを左右する『標準報酬月額』のルールも意外と知られていません。この時期に『残業』をして稼ぎすぎると、結果的に年間でどれくらい損をしてしまう可能性があるのでしょうか?

あゆ実社労士事務所:

「社会保険料を決めるうえで重要なのが、「標準報酬月額」という仕組みです。

これは、毎月の給与を一定の幅(等級)に区分し、その等級ごとに社会保険料を計算するための基準となるものです。この標準報酬月額は、毎年4〜6月の給与平均をもとに決定され、9月から翌年8月までの約1年間適用されます。

そのため、4〜6月に残業が多く、一時的に給与が高くなると、その水準が「通常の月収」と判断されてしまいます。たとえば、繁忙期で月に3〜4万円ほど残業代が増えただけでも、標準報酬月額の等級が1つ上がることがあります。等級が上がると、毎月の健康保険料や厚生年金保険料が数千円増え、その状態が1年間続くことになります。

結果として、春先に一時的に収入が増えたにもかかわらず、年間で見ると5万〜10万円以上、手取りが減ってしまうケースも珍しくありません。短期間頑張って働いたつもりが、気づかないうちに1年分の社会保険料負担を押し上げてしまう。この仕組みは、会社から詳しく説明されることも少なく、知らないまま損をしてしまう人が多いポイントです。

もちろん、残業自体が悪いわけではありませんが、「この時期の働き方が1年間に影響する」という前提を知っておくことが重要です。」

転職や退職の前に必須!毎月の保険料チェックとカレンダーシミュレーションで損を防ぐ方法

---制度が複雑で難解ですが、私たちが『搾取』されないために、給与明細のどこをチェックすべきでしょうか? 転職や退職を考えている人が、会社と交渉する際やスケジュールを組む際に、絶対に確認しておくべき『カレンダーのポイント』を教えてください。

あゆ実社労士事務所:

「社会保険制度は非常に複雑で、残念ながら「知らなかった」というだけで手取り額で損をしてしまうケースが多くあります。

制度の落とし穴にはまらず、賢く家計を守るために、まずは毎月の給与明細にある「健康保険料」と「厚生年金保険料」の欄を毎月チェックする習慣をつけましょう。
特に注意したいのが、多くの会社で10月の給与から反映される「9月分」の保険料の変化です。ここで金額が以前より上がっている場合、春(4〜6月)の残業代などが影響して等級(ランク)が上がったことを意味します。「なぜ手取りが減ったのか」の原因を特定することは、対策の第一歩です。

さらに、人生の転機となる転職や退職を検討する際は、会社任せにせず、カレンダー上で以下の3つのポイントをシミュレーションしてください。
・退職日は「月末」ではなく「月末の前日」に設定できないか
・賞与支給月と退職月が重なる場合、手取りへの影響を考慮しているか
・4〜6月に極端な残業をしていないか(翌年の負担増や転職時の等級への影響)

こうしたカレンダー上のポイントを事前に押さえるだけで、避けられる損は確実にあります。
ほんの1日の違いで数万円の手取りが変わったり、春の働き方が毎月の手取り減少につながったりするのが社会保険の怖いところでもあり、知っていれば対策できるところでもあります。不安をあおるわけではありませんが、仕組みを正しく理解し、ご自身のライフプランに合わせて賢く選択していくことが、結果的に自分を守ることにつながります。」

退職日の賢い設定と働き方の工夫で、ボーナスの手取りを守ろう

社会保険の仕組みを理解することで、退職日ひとつでボーナスの手取りが大きく変わることがわかりました。

特に「月末の前日」に退職日を設定すれば、余分な社会保険料の負担を避けられます。また、4〜6月の働き方が翌年1年間の社会保険料に影響を与えるため、残業の増減にも注意が必要です。

まずは毎月の給与明細をチェックして、なぜ手取りが変わったのかを把握しましょう。さらに、賞与支給月と退職月、退職日のカレンダー確認も忘れずに。これらのポイントを押さえるだけで、大きな損を避けることができ、計画的なキャリア形成に役立ちます。

賢く自分の収入を守っていきましょう。


監修者:あゆ実社労士事務所 加藤あゆみ
人材育成とキャリア支援の分野で約10年の経験を持ち、社会保険労務士・国家資格キャリアコンサルタントとしても活動。
累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1面談制度の設計やキャリア面談シート作成などを通じて、組織の人材定着と成長を支援してきた。
新入社員向け「ビジネスマナー」「マインドセット」「ロジカルシンキング」研修やキャリア研修では、企画・コンテンツ作成から講師まで一貫して担当。
人間関係構築や部下育成、効果的な伝え方に関する豊富な実務経験を活かし、読者や受講者が一歩踏み出すきっかけとなる関わりを大切にしている。