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「日本は割安な一等地…」海外勢が東京のタワマンを“狙うワケ”→外国人取得者が1年で倍増した「驚きの背景」とは

  • 2025.12.11

 

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※ChatGPTにて作成(イメージ)

近年、東京の新築タワーマンションに対する海外投資家の注目が高まっています。

11月25日に国土交通省が発表した『不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について』によると、東京都における「国外に住所がある者による新築マンション取得の割合」は、2024年の1.5%から2025年1~6月には3.0%へと倍増したことが明らかになりました。

なぜ今、日本の高級不動産が海外からこんなにも支持されているのか。

今回は、合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹さんに、海外投資家がなぜ東京の不動産を選ぶのか、そして日本の取引特有の留意点について詳しく解説していただきました。

なぜ海外投資家は東京の新築タワーマンションに注目するのか?

---海外から見て、東京の新築タワーマンションはどのような魅力があるのでしょうか?その理由を教えてください。

合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹さん:

「まず最大の要因は、円安の長期化による『価格の割安感』です。

例えば1億円のマンションでも、為替が1ドル150円前後であれば、海外投資家から見ると約66万ドル程度になります。これはニューヨーク、ロンドン、シンガポールといった主要都市と比べても、現在の東京の新築タワーマンションは『依然として割安な一等地不動産』と評価されやすい水準です。

次に、日本の不動産市場の安定性も強く評価されています。政治リスクが低く、法制度が整備され、突然の没収や極端な規制変更が起きにくい点は、海外投資マネーにとって非常に重要な判断材料になります。

制度面では、外国人でも日本の不動産を原則として自由に所有できる点が大きく影響しています。例えば中国では、土地は国有であり、個人が所有できるのはあくまで『使用権』に限られ、取得や譲渡にはさまざまな制限があります。
一方、日本では土地・建物ともに国籍による取得制限がなく、永住権がなくても購入できるため、海外投資家にとって参入ハードルが極めて低いのが現実です。

近年は、長く続いてきた日本の超低金利時代が転換期を迎え、金利のある環境へと移行しつつあります。とはいえ、欧米と比べれば金利水準はなお低く、海外資金から見ると、日本の不動産は依然として『価格変動が比較的穏やかで、安定した賃料収入が見込める運用先』と認識されています。
そのため、短期売買による値上がり益を狙うのではなく、『資産保全+中長期運用』という位置づけで購入されるケースが増えているのが、現場での実感です。」

海外投資家が日本の不動産取引で驚くポイントとは?

---外国人投資家が日本の不動産取引に参加する際、戸惑いや驚きを感じることはありますか?

合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹さん:

「最も大きなポイントは、『重要事項説明』の重さです。

日本では、売買契約を結ぶ前に、宅地建物取引士が法律に基づいて、物件の権利関係や法令上の制限、取引条件などを細かく説明する義務があります。このように、契約前の説明が制度として厳格に定められている国は多くないため、『なぜここまで詳細な説明が必要なのか』『なぜすぐに契約できないのか』と戸惑う外国人投資家は少なくありません。

また、日本では現在、『瑕疵担保責任』ではなく『契約不適合責任』が適用されています。これは、中古物件であっても、引き渡された不動産が契約内容と適合しない場合、売主が一定期間、修繕や損害賠償などの責任を問われる可能性があるという制度です。この考え方は海外の不動産取引とは大きく異なり、『中古でも売主の責任が問われる点』に驚かれる方も多いのが実情です。

商習慣の面では、手付金・中間金・残代金といった段階的な支払い方法や、融資特約・解約条件の仕組みが複雑である点も、日本特有の取引慣行と言えます。さらに、契約書類や重要書類の多くが日本語で作成されるため、内容を十分に理解しきれないまま契約が進み、後になってトラブルに発展するケースも実際に見受けられます。

加えて管理面では、修繕積立金・管理費・管理規約の拘束力を軽く見てしまい、購入後に『想像以上にランニングコストが高かった』『共用施設の維持費が重い』と感じられるケースも少なくありません。特にタワーマンションは共用施設が多く、将来的な修繕費も高額になりやすいため、この点は事前に必ず確認すべき重要なポイントです。」

賢く選ぶためのチェックポイントと購入時の心構え

---東京のタワーマンションを購入する場合、どのような点に注意して選べばいいでしょうか?また失敗しないための心構えは?

合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹さん:

「まず真っ先に確認したいのは、そのマンションの購入者層が『実需中心なのか』『投資目的が多いのか』という点です。外国人を含む投資家の比率が高い物件は、将来的に賃貸住戸の割合が増えやすく、『居住者が腰を据えて住むマンション』というより『資産として保有されるマンション』の色合いが強くなる可能性があります。その結果として、管理方針や日常の住環境、長期的な資産価値の安定性に影響が出ることもあります。

次に重要なのが、管理組合の運営体制と修繕積立金の水準・将来計画です。投資目的の所有者が多いマンションでは、『できるだけコストを抑えたい』という意識が強くなり、長期修繕のための積立金の値上げや大規模修繕の実施に、合意を取りづらくなるケースも見られます。現在の積立額だけでなく、長期修繕計画や将来の値上げ予定までチェックしておくことが大切です。

価格面では、『今が高すぎないか』という一点だけを見るのではなく、将来、自分が売却するときに“買い手がつきやすい価格帯かどうか”という視点を持つことが重要です。タワーマンションは通常のマンションに比べて市場での流動性は高い一方で、周辺で同規模の供給が増えすぎると一気に競合が増え、価格調整が進みやすい側面もあります。

最後に、自分の購入目的を明確にしておくことが何より重要です。資産形成を優先するのか、日々の暮らしの快適さを最優先するのか。この軸があいまいなまま、『周りが値上がりしているから』『今買わないと置いていかれそうだから』という理由だけで決めてしまうと、高値掴みになり、数年後に後悔するケースを現場では何度も見てきました。
まずは『自分は何のためにこのマンションを買うのか』を言語化したうえで、それに合う物件かどうかを冷静に見極めることが、失敗を防ぐ一番のポイントだと考えています。」

安定と割安感を備えた東京の不動産、成功のカギは「目的の明確化」

東京の新築タワーマンションが海外投資家から注目される背景には、長期的な円安による割安感や日本の法制度による安定性があります。また、自由に不動産を所有できる制度面の魅力も大きく影響しています。一方で、日本特有の取引慣行や管理面の複雑さには注意が必要です。

購入を検討する際は、物件の購入者層や管理体制、将来の修繕計画をしっかり確認し、自身の購入目的を明確にすることが大切です。これにより、高値掴みや思わぬトラブルを避け、資産としての価値を守りながら安心して暮らすことができるでしょう。


出典元:『不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について』(国土交通省)

監修者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹(宅地建物取引士、熊本市空き家相談員)

飲料メーカーを経て2014年に宅建士として不動産会社に転職。2019年に不動産ライター業を始める。2025年11月現在、不動産会社のコラムや不動産関連記事を1,000記事以上作成。現在は不動産会社とWebライター業の会社を経営。現役不動産屋ならではの経験から、不動産に関する「リアル」な記事を発信している。


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