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「あり得ません」弁護士が断言。年末に急増するクレカ会社を装った“自動音声”…詐欺の「決定的な見抜き方」とは

  • 2025.12.11
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年末は買い物や支払いが増え、多くの方がクレジットカードを頻繁に使います。

しかし、その忙しさに乗じて、クレジットカード会社を装った自動音声による詐欺も急増しているのをご存じでしょうか。「なぜ年末にこのような詐欺が増えるのか?」「どう対処すれば被害を防げるのか?」と不安に感じている方も多いはずです。

今回は、寺林智栄 弁護士の見解をもとに、年末に増える自動音声詐欺の実態と、それに騙されないための実践的な対策をわかりやすく解説します。

年末に増える自動音声詐欺が私たちの心理を狙う理由とは?

---なぜ年末になるとクレジットカード会社を装った自動音声詐欺が増えるのでしょうか?どのように私たちの心理を突いてくるのでしょう?

寺林智栄 弁護士:

「年末に急増するクレジットカード会社を装った自動音声によるフィッシング詐欺では、犯罪者は人の心理の『弱点』を精密に突く手法を用いています。

まず顕著なのは、年末特有の慌ただしさや注意力の低下を前提とした時間的圧迫の演出です。自動音声は『不正利用を検知しました』『このままではカードが停止されます』など、重大なトラブルが今まさに起きているかのように告げ、被害者に冷静な判断をさせないよう追い込みます。

このように緊急性を強調することは、人が不安を抱いたときに冷静な思考よりも即時の解決行動を優先してしまう心理特性に付け込む典型的な手法です。また、カード会社名や具体的な金額、トランザクション情報などを読み上げることで、本物らしさを強く演出します。

人は、自分の生活に密接した情報が提示されると真偽を疑いにくくなるため、犯罪者はあえて細部まで既視感のある内容を盛り込んで信頼性を高めます。」

詐欺の自動音声が本物そっくりに感じる仕組みとは?

---なぜ自動音声の詐欺が、私たちに本物のコールセンターの案内のように感じられてしまうのでしょうか?そのからくりを教えてください。

寺林智栄 弁護士:

「さらに、機械的な自動音声そのものが『本物のコールセンターのシステムからの案内』という錯覚を生む点も利用されています。

人は無機質で事務的な音声を聞くと、公的・正式な手続の一部であると感じやすく、その権威性に従いやすくなります。加えて、正規のカード会社が日頃から不正利用防止のために自動音声による通知を行うことが一般化しているため、犯罪者の自動音声も容易に受け入れられてしまいます。

つまり、犯罪者は正規サービスの模倣という安心感を逆手に取り、違和感を抱く余地を与えないように仕組んでいるのです。また、詐欺の自動音声は『このまま番号を入力してください』『オペレーターにつなぎます』といった指示を短い間隔で繰り返し提示し、思考の余白を奪うように設計されています。

これは、心理学でいう『判断の即時化』の誘導であり、疑問を挟ませないことで被害者を誘導しようとする巧妙な手法です。特に年末は買い物や決済が増える時期であり、実際にカード利用に心当たりがある人ほど『もしかして自分のことかもしれない』と錯覚し、詐欺に巻き込まれやすくなります。」

詐欺被害を避けるための具体的な対策とは?

---自動音声詐欺に遭わないために、私たちはどのような点に注意し、どう行動すればよいのでしょうか?

寺林智栄さん:

「自動音声ガイダンスでカード番号や暗証番号の入力を求められた場合、詐欺を見抜くためには、まず『正規のカード会社は自動音声で暗証番号を要求しない』という大原則を思い出すことが極めて重要です。

どれほど巧妙なメッセージであっても、この一点に反する時点で詐欺と判断できます。犯罪者はあえて緊急性を煽る内容を読み上げ、『不正利用が発生しています』『カードを停止します』などと不安を誘発する文言を使ってきますが、そもそも企業が自動音声でそのような重大な対応を求めることはありません。

また、案内の流れが極端に速かったり、選択肢が少なく強制的に番号入力へ誘導する構成になっている場合も判断材料となります。さらに、発信元番号にも注意が必要で、正規のカード会社を名乗りながら一般的な携帯番号や非通知でかかってきた場合は不自然です。犯罪者は番号偽装技術を使うこともありますが、それでもコールバックした際に会社の正式窓口につながらないなど、不自然なことが多くあります。このため、突然の自動音声が届いた場合は、ガイダンスに従わず、いったん電話を切って、自分でカード会社の公式サイトに記載されたカスタマーサポート番号にかけ直す方法が最も確実です。

また、音声ガイダンスの日本語が不自然であったり、イントネーションや抑揚が機械的すぎて違和感がある場合も、詐欺の可能性を疑うべきポイントとなります。正規の企業の自動音声は整った音声データを使用し、聞き間違いがないよう配慮されていますが、詐欺グループの音声は急ごしらえで品質がばらつくことが多いからです。そして、ガイダンスの途中で突然『オペレーターにつなぎます』と言われ、出てきた人物が不自然なほど強い口調で手続を迫ってくるような場合も典型的な詐欺のサインです。正規のカード会社が利用者に圧力をかけて情報入力を急がせることはあり得ません。」

年末こそ実践!詐欺に騙されないための行動ルール

年末の慌ただしさによる判断力の低下や、カード利用に心当たりがあることで被害に遭いやすい時期だからこそ、シンプルで確実なルールを徹底することが重要です。

それは、「向こうからの電話やSMS、メールなどの連絡には情報を提供せず、必要な場合は必ず自分から公式窓口にかけ直す」という行動ルールです。これは詐欺被害の9割以上が、相手からの偽の連絡をきっかけに情報を盗まれる仕組みに基づいているため、とても効果的な対策です。

どんなに緊急を装われても、どんなに本物そっくりの自動音声であっても、一呼吸置いて電話を切り、公式サイトにある番号に自分で連絡を取る習慣をつければ安全が守られます。特別な知識は必要なく、今すぐ誰でも実践できる方法です。たとえ本当に不正利用があった場合でも正規の窓口に繋がるので安心ですし、詐欺の場合は公式窓口から否定されるため、被害を未然に防ぐことができます。年末の忙しい時期こそ、このルールを行動の軸に据え、確実なフィッシング詐欺対策を行いましょう。


監修者:寺林智栄 弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。2013年頃よりウェブ上で法律記事の執筆を開始し、Yahoo!トピックスで複数回1位を獲得。わかりやすく親しみやすい記事を心がけています。


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