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「130万円を超えたら扶養から外れる」は間違いだった。給与明細で確認すべき“3つのポイント”【社労士が解説】

  • 2025.12.9
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

社会保険の扶養に関する「130万円の壁」。よく「130万円を超えたら即扶養から外れる」と聞きますが、本当にそうなのでしょうか。

実際はどう判断され、どう対処すればよいのか、混乱や不安を抱えている方も多いはずです。

今回は、社会保険の扶養判定の基準や見方、また最新の法改正による特例について、あゆ実社労士事務所 加藤あゆみさんに詳しく伺いました。

社会保険の扶養判定は「130万円超えたら即アウト」ではないって本当?

---社会保険の扶養から外れる基準として「年収130万円がボーダー」という話をよく聞きますが、本当の判定方法はどうなっているのでしょうか?

あゆ実社労士事務所

「社会保険の扶養判定は、『130万円を超えた瞬間に自動的に外れる』という仕組みではありません。

正しくは“過去の実績”ではなく“今後1年間の収入見込み”で判断される点が最大のポイントです。

一般的な目安として、月収が108,333円(=130万円÷12)を継続的に超える状況が続くと、『年間130万円を超える見込みがある』と判断されやすくなります。ただし、判断基準は健康保険組合によって異なり、例えば2〜3か月の平均で見る組合や過去12か月累計で判断する組合など、独自の基準が存在します。

そのため、まずは加入している健康保険組合の基準を確認することが非常に重要です。」

給与明細から見る「扶養判定」のポイントとは?

---扶養判定を正しく理解するために、給与明細でどこをチェックすればいいのか教えてください。

あゆ実社労士事務所

「給与明細で確認すべきポイントは次の3つです。

  1. 総支給額(交通費や手当も含む)
    130万円判定では、基本給・残業代・非課税の交通費・各種手当等すべてを含めて判断します。
  2. 月々の収入推移(恒常的か、一時的か)
    継続的に基準を超えているのか、一時的な残業や賞与による増加なのかを確認しましょう。2023年10月からの法改正により、一時的な超過は、事業主の証明があれば“年1回の収入確認で連続2回まで”扶養継続できる特例があります。
  3. 社会保険料控除の有無
    給与明細に『健康保険料』『厚生年金保険料』が控除として載ったタイミングで、通常は本人が社会保険加入=扶養から外れた状態と見なせます。ただ、例外も稀にありますが、通常はこの判断で問題ありません。」

扶養判定は組合ごとに運用差が大きいため、迷ったときは早めに窓口に確認することをおすすめします。」

扶養から外れるタイミングや勤務先加入の「106万円の壁」とは?

---実際に扶養から外れるのはいつ?また、「106万円の壁」との違いは何ですか?

あゆ実社労士事務所

「扶養から外れるタイミングは『130万円を超えた月の翌月から』と一律に決まっているわけではありません。

健康保険組合の運用により、例えば基準超過が2〜3か月続いた時点、契約変更があった時点、あるいは過去12か月で130万円超えが判明した時点など、判断の仕方は異なります。まずは加入している組合の基準確認が最優先です。

また、『106万円の壁』は勤務先での社会保険加入要件に関わる別基準です。2024年10月からは、51人以上の企業で週20時間以上勤務し、月額賃金8.8万円以上(交通費・残業代を除く所定内賃金)が条件となります。これは130万円超過とは別の基準なので混同しないように注意しましょう。

つまり、『扶養から外れる=必ず勤務先で社会保険加入』ではありません。勤務条件や企業規模との兼ね合いもしっかり確認することが大切です。」

複雑な130万円の壁、押さえるべきポイントは3つ

社会保険の扶養判定は「130万円超えたら即アウト」という誤解が根強いですが、実際は「今後1年間の収入見込み」で判断され、組合ごとに運用や時期が異なるため一概には言えません。

給与明細や勤務条件を確認し、臨時的な収入増なら特例利用で扶養継続も可能となるなど、最近の法改正も踏まえて冷静に対処できます。複数の基準が存在し混乱しがちなので、まずはご主人の健康保険組合と勤務先へ早めに問い合わせて正確な情報を得ることが安心への第一歩です。

この記事で紹介した「扶養判定は年収実績ではなく収入見込みで判断」「一時的超過なら特例継続がある」「扶養から外れるタイミングは組合や勤務先で異なる」という3つのポイントを押さえ、慌てず着実に状況を整理しながら安心して次のステップを踏み出しましょう。


監修者:あゆ実社労士事務所
人材育成とキャリア支援の分野で約10年の経験を持ち、社会保険労務士・国家資格キャリアコンサルタントとしても活動。
累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1面談制度の設計やキャリア面談シート作成などを通じて、組織の人材定着と成長を支援してきた。
新入社員向け「ビジネスマナー」「マインドセット」「ロジカルシンキング」研修やキャリア研修では、企画・コンテンツ作成から講師まで一貫して担当。
人間関係構築や部下育成、効果的な伝え方に関する豊富な実務経験を活かし、読者や受講者が一歩踏み出すきっかけとなる関わりを大切にしている。