「絶対にのらないで」国民生活センターが“異例の注意喚起”→失業者の不安につけ込む「給付金サポート」悪質手口の“実態”とは

失業保険の給付を受けられる権利があるなら、少しでも多く受給したいと考えるのは自然なこと。しかし、複雑な制度や手続きの中には悪質な業者が巧みに入り込み、契約者を不利益な状況に追い込み、不正受給の勧誘というリスクを伴う問題も存在します。

国民生活センターは2025年12月3日、公式X（旧Twitter）アカウントで、「失業保険」に関する注意喚起を投稿しました。

なぜこうした悪徳業者が後を絶たないのか？どうしたらトラブルを避け、安心して給付を受けられるのか？

本記事では、その背景と対策についてベリーベスト法律事務所齊田貴士弁護士に詳しく伺いました。

なぜ失業保険の受給サポートを装った悪質業者が存在するのか？

---失業保険の不正受給を勧誘する悪質業者が後を絶たない背景には、どのような手口や消費者心理の隙が利用されているのでしょうか?

齊田貴士さん：

「失業保険の受給対象者は、失業しており、経済的にも精神的にも不安定な時期にあります。

そのため、権利として受け取れる給付があるのであれば、多少のリスクや出費をしても、最大限のリターンを得たいという心理状況にあります。働かずにお金を受け取れるなら、なおさら、その恩恵に預かりたいという欲も介在すると思います。

他方、行政による給付手続きや制度は多種多様で、一見しても分かりにくいものばかりです。

このような状況をつけこみ、受給サポートと銘打って、契約者に不利な契約を締結させたうえで、失業保険の不正受給を勧誘する悪質業者が後を絶たないのだと思います。」

---どのような方法で悪質業者は契約者を騙し、トラブルを引き起こすのか、具体的に教えてください。

齊田貴士さん：

「失業保険の代行業務は、「社会保険労務士（社労士）」などの資格がないとできません。しかし、悪徳業者は「受給をサポートする」などと銘打って、以下のような手口でお金を巻き上げようとします。

成功報酬の一括請求、途中解約時の高額違約金、前金として預かっている金銭が返還されないなどのトラブルが発生する可能性があります。」

契約前に注意すべきポイントや、万が一トラブルに巻き込まれた時の対応策を教えてください。

齊田貴士さん：

「契約の内容を理解したうえで契約を締結している以上、その契約の取消しないし無効を主張する、また金銭の返還を請求することは容易ではないので、契約段階において十分な注意が必要です。

契約をする前に、自分に不利な記載は無いのか十分に確認し、判断に迷うようであれば、まずは周囲の第三者や弁護士に相談されたほうがいいと思います。

まずは、消費者センター又は弁護士に相談するとともに、不正受給を勧める業者から教わった内容が適切なのか、ハローワークや社労士に確認しましょう。

そして、もし不正受給を勧める業者の手口が違法であった場合に、当該手口に加担しないことはもちろん、捜査機関に告発しましょう。

あわせて、業者から違約金を請求されている、または業者が前金を返してくれないなどの事情があった場合には、弁護士などを通じて適切に対応することが大切だと思います。」

失業という厳しい状況にある時だからこそ、失業保険の給付には敏感になりがちで、悪質業者に狙われやすい状態であることが見えてきました。

契約の際には条件をしっかり読み込み、不利な点がないか慎重に確認し、わからない場合は弁護士や消費者センター、ハローワークなどの公的機関に相談することが最も大切です。

不正受給を勧める違法な手口には関わらず、業者の不当請求があれば専門家と連携して対応しましょう。こうした対応が、安心して給付を受けられる環境を作り出し、自分の権利をしっかり守ることにつながります。

監修者名：ベリーベスト法律事務所弁護士齊田貴士

神戸大学法科大学院卒業。弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M＆Aを含めた企業法務（中小企業法務含む。）、税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。