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「水道代の請求書」を見て絶句。突然届いた“高額請求”…弁護士「知らなかったでは済まされない可能性」

  • 2025.12.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

水道料金が急に高くなって驚いた経験はありませんか? その原因、実は「気づかない漏水」かもしれません。

最近でもX(旧Twitter)で、「水道局からの請求を確認したら高額だった」という投稿が大きな話題になりました。

「身に覚えがないのに、全額支払わなければならないの?」「減額してもらえる制度はある?」 そんな疑問について、支払い義務や救済制度、そしてトラブルを未然に防ぐチェックポイントを、弁護士の寺林智栄先生に詳しく解説していただきました。

水道料金はなぜ漏水でも利用者が支払わなければならないのか?

---水漏れによる高額な水道料金について、利用者が気づかなかった場合でも全額支払い義務が生じるのか、法的な責任範囲の考え方を教えてください。

寺林智栄さん:

「水道料金は、市区町村(または水道事業者)と利用者との間の給水契約に基づく対価です。

多くの自治体の給水条例では、メーターを通過した水量=使用水量とされ、その水量に応じた料金は、実際に使用したかどうかにかかわらず利用者が負担するとされています。

そのため、利用者が気づかずに漏水していた場合でもメーターを回っていれば原則として「全額支払い義務あり」と判断されやすいのが実情です。

法的に問題になるのは、漏水箇所が誰の管理下にあったかです。
メーターより宅内側(私設配管)の漏水や老朽化・凍結・パッキン劣化、長期間にわたり異常使用が続いていたなどの場合、「通常期待される注意義務を尽くしていれば発見可能だった」と評価されやすく、過失ありとして利用者負担となります。

但し、以下のような場合は、利用者の全額負担が否定される可能性があります。
①メーターや本管の不具合
②水道事業者の施工・維持管理上の瑕疵
③明らかに利用者が管理できない場所での漏水

この場合は、不法行為責任や契約上の債務不履行責任が問題となり、全額または一部免除が認められることがあります。
また、法律論とは別に、給水条例や内部規程による減免制度が重要です。

多くの自治体では、以下の場合に限り、一定期間分や超過分の減額や一部免除などの救済措置を設けています。
①地中配管など発見が困難な漏水
②修理後すぐに申請した場合
③故意・重大な過失がない場合

ただし、申請期限や修理証明書の提出などの要件が厳格な点には注意が必要です。
単に「知らなかった」「使っていない」だけでは、免責理由としては弱いのが実情です。

評価ポイントは次の点です。
①請求額が通常と比べて著しく高額ではなかったか
②検針票・使用量の変動を確認していたか
③建物の管理状況(空き家・長期不在など)
④発見後の対応の速さ

これらから、やむを得ない事情があるか、管理として相当といえるかが判断されます。」

水道料金の漏水トラブルで免除や減免が認められるのはどんな場合?

---水道の使用者には設備の維持管理責任がありますが、目に見えない配管の水漏れなど自己責任の範囲が曖昧なケースでは、水道局へ減免申請できる可能性はあるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「水道使用者には、一般的にメーターより宅内側の配管等について維持管理責任があるとされています。そのため、私設配管の漏水や老朽化・凍結・破損は、法的には自己責任が原則です。

ただし、この「自己責任」は常時・完全な管理を求めるものではありません。

特に地中配管や床下・壁内配管といった 通常の生活では確認不可能な場所にあり、ここが「責任の限界」として実務上問題になります。
減免が認められる場合、その根拠は法律ではなく、各自治体の給水条例・減免要綱・内部基準です。

多くの自治体では、「利用者に管理責任はあるが、通常の注意では発見できない漏水まですべて負担させるのは酷である」と考えています。このため、不可視部分の漏水や善管注意義務を尽くしていたと評価できる場合に限り、政策的救済として減免が設けられています。

以下の条件がそろえば、減免の可能性は高まります。

①漏水の性質
地中・床下・壁内など目視できない場所
突発的な破損・亀裂
経年劣化による自然破損

②使用者側の対応
異常に気づいた後、速やかに調査・修理
修理業者による漏水証明・修理報告書あり
同様のトラブルを繰り返していない

③ 過失の程度
故意や重過失なし
長期間放置していない

このような場合、増加分のみ減免や一定期間分(例:2か月分)を上限に減免という扱いが多く見られます。

逆に、次のような場合は、自己責任と判断されやすくなります。

①水漏れが蛇口・トイレ・給湯器など目に見える設備
②使用水量の異常が検針票で明確だったのに放置
③長期間空き家・不在で管理を怠っていた
④過去にも同様の漏水で減免を受けている

このような場合は『発見可能性があった』と評価され減免は困難です。」

漏水トラブル時に利用者がとるべき具体的な行動とは?

---水漏れによる高額請求を受けた際、支払い義務の有無を確認するために、住民がまず最初に取るべき具体的な行動を教えていただけますでしょうか。

寺林智栄さん:

「以下の行動をとることが必要です。

① まずは止水・使用状況の即時確認

最優先は、被害の拡大を止めることです。この時点で、「現在も漏れているか否かを把握することが、後の責任判断・減免申請の前提になります。

・全ての蛇口・トイレ・給湯器が止まっているか確認
・水道メーターのパイロット(銀色の回転盤)が回っていないかを確認
・回っていれば、見えない場所で漏水が継続中の可能性が高い

② 水道局へ連絡し、検針データ・履歴を確認

次に行うべきは、水道局への連絡です。

・異常に増加した使用量の検針期間・数値を確認
・過去数か月〜1年分の使用量との比較
・使用開始日・空き家期間の有無

ここで、異常増加が「いつから始まったか」短期か長期かが明確になり管理責任や過失評価の材料になります。

③ 漏水箇所の調査と「修理」を最優先で実施

高額請求が出ている場合、 支払い義務の有無を検討する前に、修理が必須です。
以下の内容を記載した修理証明書を取得することが必要です。

・指定給水装置工事事業者に調査依頼
・地中・床下・壁内など漏水場所の特定
・修理完了後、漏水原因、発生箇所、修理日の特定

この書類がなければ、減免申請はほぼ通りません。

④ 請求の法的性質を水道局と確認

修理と並行して、次の点を確認します。

・漏水箇所はメーターより上流か下流か
・水道局設備の不具合の可能性はあるか
・給水条例上の減免制度の有無・要件

ここで初めて、「全額支払いが原則か」「減免・免除の可能性があるか」という法的整理が可能になります。

⑤ 減免制度があれば、期限内に正式申請

減免制度がある場合、申請期限を過ぎると一切認められない自治体が多い点に注意が必要です。
一般的な提出物は、減免申請書、修理証明書・領収書ですが、場合によっては写真・見取図が必要です。
多くの場合、超過分のみ減免、 一定期間分のみ対象という限定的救済ですが請求額が大きいほど実益はあります。

⑥ 支払いは「協議中」として扱えるかを確認

減免申請や原因調査中であっても、滞納扱いになると不利益が生じます。
そのため、納期限の猶予、分割納付または一部仮納付が可能かを必ず水道局に相談してください。
無断で支払いを止めるのは避けるべきです。」

漏水トラブル時は速やかな確認と正しい手続きが命

水道料金の漏水による高額請求は誰にとっても不安な出来事です。しかし多くの自治体で減免制度が用意されているため、正しい対応を知っていれば不合理な負担を減らせる可能性があります。

まずは水漏れの拡大防止、その後速やかに水道局への相談と修理を行い、漏水証明をもって期限内に減免申請をしましょう。自己管理責任がある範囲と自治体の救済制度の境界を正しく理解し、日頃から水の使用量にも注意することが大切です。

困ったときは専門家に相談しつつ早めの行動を心掛けてください。


監修者:寺林智栄 弁護士

2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。2013年頃よりネット上で法律記事を多数執筆。Yahoo!トピックスで複数回1位を獲得。わかりやすい記事を書くことを信条としています。


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