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「病院をトイレ代わりにしないで」“ライブ客”のマナー違反に非難殺到…「言語道断」→弁護士「損害賠償請求されるリスクも」

  • 2025.12.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

施設のトイレを無断で使用する行為、どこまでが許されるのか疑問に思ったことはありませんか?

特にライブ会場の近くにある病院や公共施設で、「トイレ利用はご遠慮ください」と掲示されているのに無断使用が続くケースも少なくありません。

特に11月、ライブの参加者が、近接する医療センターの中で目撃され、SNS上では「マナーを守って」「言語道断」と厳しい声が上がりました。

このようなトラブルは、法律的にはどのように判断されるのか、施設管理者はどんなリスクを負うのか知る人は意外と少ないでしょう。この記事では、ベリーベスト法律事務所 齊田貴士 弁護士の解説をもとに、無断利用者の法的な問題点や施設側が取るべき有効な対応策についてわかりやすく解説します。

無断使用は建造物侵入罪に?法的リスクを整理

---施設のトイレを無断で使用することは、法律的に問題になるのでしょうか?具体的にどんな刑事責任や損害賠償リスクがあるのか知りたいです。

齊田貴士さん:

「無断使用者は、当該施設の立ち入りについて、建造物侵入罪(刑法130条前段)が成立する可能性があります。また、無断使用により、施設管理権者の施設管理権が侵害され、実損(水道代、備品代、トイレの破損等)が生じた場合、損害賠償請求されるリスクもあります。

病院側が『トイレ利用はご遠慮ください』と掲示しているにもかかわらず、ライブ客が無断で使用を続ける行為は、明らかに『他人の看守する建造物に管理権者の意思に反して立ち入ること』、すなわち『侵入』に該当するため、建造物侵入罪が成立する可能性があると思います。

このように、積極的に明示していない場合であっても、建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立ち入りの目的などから見て、当該立ち入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、建造物侵入罪が成立するという判例があります。それゆえ、仮に積極的に明示していなくても注意が必要です。

一方で、トイレを無断使用するだけでは、業務を妨害したとまでは言えないので、業務妨害罪の成立は難しいと思います。」

施設管理者側の抱えるリスクとは?

---施設を管理する側には、無断使用によりどんなリスクが生じるのでしょうか?施設利用者や管理者への影響について教えてください。

齊田貴士さん:

「施設管理者には、部外者の立ち入りについて十分な責任を果たしていないとして、正当な利用者からの信用、信頼が失墜することによる利用者の減少、これによる売上利益の減少、利用者からのクレーム対応、施設内の治安の悪化というリスクを背負うことになります。

こうした問題が続くと、施設の評判低下や経営面でのマイナス影響も避けられません。」

効果的な掲示や対応策で無断使用を防ぐには?

---無断使用を防止するには、具体的にどんな掲示や対応が有効でしょうか?施設管理者としてできる工夫や対策を知りたいです。

齊田貴士さん:

「『トイレ利用はご遠慮ください』と一般的な文言で書かれていても、抑止力は弱いと思うので、例えば、ライブ会場利用者など、対象を限定することで、自分のことを指していると意識付けさせる表記は有効かと思います。

また、単に『ご遠慮ください』ではなく、これに加え、『発見した場合には通報します。』とか『使用料として●●円いただきます。』とか更に一歩踏み込んで記載し、どのようなペナルティがあるのか意識付けさせるのもいいかもしれません。

さらに、こうした表記をトイレの前だけではなく、建物の入り口にも設置し、二重の物理的・心理的バリアを作ることも有効かもしれません。

加えて、施設管理者側に人的資源、コストに余裕があるのであれば、建物入口やトイレに施設側の人間を立たせておく、巡回させることも有益かと思います。」

法律リスクと管理責任を理解し、適切な防止策を講じよう

施設のトイレを無断利用することは、法律的には建造物侵入罪となる可能性があり、また実際の損害があれば損害賠償請求されるリスクも含んでいます。

施設管理者としては、部外者の立ち入りを防げなければ、利用者の信頼低下や売上の減少、治安悪化などの問題を抱えることになるでしょう。

そのため、「ご遠慮ください」といった一般的な掲示のみならず、対象を限定した明確な注意書きや、ペナルティを示す表記、入口とトイレ前に複数掲示する方法、そして人的な巡回などの複合的な対策が有効とされます。これらを組み合わせることで、無断使用を抑止し、安心して利用できる施設環境を守っていくことができます。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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