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「なぜ捕まらない?」1枚50万円、WBCチケット“高額転売”が野放しにされるワケ → 弁護士が明かす、「法の穴」とは

  • 2025.12.3
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

近年、スポーツやコンサートのチケットが高額転売される問題が後を絶ちません。

特に来年3月のWBCに大谷翔平選手が出場するというニュースで、チケットは日本戦の一塁側の内野指定席が1枚50万円を超える高額に値上がりし、注目を集めています。

多くのファンが「犯罪行為」「もっと厳しく摘発して」と憤りを感じる一方で、法整備が進んでいるにもかかわらず、なぜこうした行為はなくならないのでしょうか?

チケット高額転売の法的な問題点と、規制があってもなくならない背景について、アディーレ法律事務所 南澤毅吾 弁護士に詳しく解説していただきました。

チケット不正転売禁止法の実態と限界

---なぜチケットの高額転売が法律で禁止されているのに、いまだに横行しているのでしょうか?どんな法律の枠組みが存在しているのかを教えてください。

南澤毅吾 弁護士:

「日本では2019年6月14日から『特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律』が施行され、『興行主の同意なく定価を超える価格でチケットを販売または譲渡する行為』が禁止されています。

しかし、この法律はすべてのチケットを対象としているわけではありません。券面や購入時の契約で『転売禁止』が明示されており、かつ座席や日時、入場資格が指定されて購入者の氏名や連絡先の確認が行われているもの、いわゆる『特定興行入場券』のみが対象です。

さらに、『営利目的』の転売のみが処罰対象となっており、摘発事例は多額の利益を長期間にわたって上げた悪質なケースが中心です。こうした法的ハードルの高さが、転売を一律に規制できず転売サイトや転売ヤーの問題が根絶しない要因となっています。

主催者にとっては厳格な本人確認で転売チケットの入場を防ぐことが理想ですが、大量の入場者への対応では完璧な本人確認は難しく、転売チケットでもバレずに使えてしまうケースが多いのが現状です。

将来的には顔認証システムなどを活用し短時間で確実な本人確認を行うことが理想ですが、現時点では技術とコストの壁が高い状況です。」

転売チケット被害を防ぐ最も確実な方法とは?

---消費者として高額転売の被害を遭わないためには、どんな行動をとればよいのでしょうか?

南澤毅吾 弁護士:

「基本的でありながら最も確実なのは『転売チケットを買わない』ことです。転売チケットが売れなければ、転売をする側にとって最大の打撃となります。

たとえば大谷翔平選手が出場するというニュースで、WBCのチケットは一枚数十万円を超える高額に値上がりしました。

裏を返せば、それだけ高額でも購入を求めた人がいたということです。どんなに魅力的なイベントでも、消費者が『転売チケットは買わない』という姿勢を示さなければ、転売ヤーは出品をやめないでしょう。

我々一般消費者が転売チケットには価値がないと理解し、意識を共有することが重要です。WBCの公式では、有償譲渡されたチケットでの入場を断る場合があると明言しています。数十万円のチケットを買っても入場できないリスクがあり、特に話題性の高いイベントでは本人確認が厳格に実施される可能性が高いです。

こうしたリスクを正しく知って広めることができれば、多くの消費者は転売チケットを買わなくなるはずです。」

転売チケットの見分け方と安全な購入方法

---転売チケットを見分けるにはどうすればよいですか?安全にチケットを購入するためのポイントについて教えてください。

南澤毅吾 弁護士:

「転売チケットを見抜くのはシンプルで、定価を超える価格で販売されていれば転売品でほぼ間違いありません。

チケット不正転売禁止法でも『定価を超える有償譲渡』は禁止されています。

安全な購入方法は、まず『公式サイトや公式SNSで販売方法を確認する』ことです。公式が指定した販売方法以外では購入しないことが基本になります。不安があれば運営元に問い合わせるのが確実です。

個人間の購入はもちろんリスクが高いですが、チケット売買サイトでも安全とは限りません。一見『安心』『保証』と謳うサイトもありますが、あくまで個人同士の仲介にすぎず、チケットの有効性までは十分にチェックしていない場合も多いです。実際に入場拒否されたケースも報告されています。

つまり『業者やサイトで買えば安全』という思い込みは捨てる必要があります。また何よりも消費者自身が、転売チケットを買うことで違法行為を助長してしまう自覚を持ち、明確に『買わない』意思を持つことが大切です。」

転売被害を防ぐのは「買わない」意識と正しい知識から

今回の取材から分かったのは、日本ではチケット不正転売禁止法が施行され、一定の法的枠組みはできているものの、規制の対象や執行のハードルが高いため転売行為がなくならず、主催者側の本人確認も完璧には機能していない現状です。

消費者ができる最も確実な対策は、『転売チケットを買わない』という意識を持ち、そのリスクを正しく理解し共有すること。そして公式の販売ルートで購入することが安全の基本です。

転売チケットに手を出さなければ、結果的に業者の利益源を断つことになり、違法な転売問題の根本的な解決につながります。私たち一人ひとりの自覚と行動が、健全なチケット流通の未来を作っていくのです。


監修者:南澤毅吾 弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所北千住支店

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南澤毅吾 弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所北千住支店

「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

弁護士法人AdIre法律事務所(第一東京弁護士会)

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