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6年間放置された賃貸物件の片付け…大家さんが抱え続けた「空き家問題」の現実と、壁の奥から現れた意外な光景

  • 2025.12.21
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

遺品整理や特殊清掃の現場を通して、現代社会が抱える「孤独」や「家族のあり方」を問いかけるYouTubeチャンネル「遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)」。

今回は、ある古い平屋の賃貸物件の片付け事例「【空き家整理のリアル】6年放置された賃貸住宅の片付け事例」をご紹介します。そこには、借主が亡くなった後も6年間手をつけることができず、一人で悩み続けていた大家さんの姿と、片付けによって明らかになった「建物の記憶」がありました。

法的な壁、親族との連絡不通…。現代の大家さんを悩ませるリアルな空き家問題の結末とは。

6年間、時が止まっていた元店舗兼住宅

今回の現場は、かつて店舗として使われていた平屋の賃貸物件です。玄関前は蔦(つた)で覆われ、まるで植物が家を飲み込もうとしているかのような外観。

依頼主である大家さんによると、ここは6年前に借主との間で退去の合意の契約が交わされていた場所でした。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

しかし、借主の方はその後亡くなられ、親族の方々も相続や片付けに関与せず、連絡が途絶えてしまったといいます。

「契約書があっても、勝手に荷物を処分するわけにはいかない」

そんな法的なジレンマと責任感の板挟みになり、大家さんは6年もの間、この空き家を抱え込んでいました。

室内から蘇る「昭和の記憶」

室内は電気がつかず薄暗い状態でしたが、メモリーズのスタッフによる迅速な作業で、少しずつ光が差し込み始めます。この物件は、玄関を入ってすぐの場所が元店舗(古物商)でした。

片付けを進めると、ショーケースの中からは、値札がついたままの筆やウサギの置物、そしてレトロな灰皿など、昭和の息吹を感じさせる品々が次々と発見されます。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

さらに、古い棚や隙間からは、かつて流通していた旧紙幣(500円札や100円札)も出てきました。「ゴミ」として処分されてしまいそうな物の中にも、昔ここで商いをし、生活していた人々の確かな息遣いが残っていました。

スタッフたちは、それらを丁寧に仕分けながら、埋もれていた床を少しずつ露出させていきます。

見積もり時には気づかなかった「隠し部屋」の正体

作業も中盤に差し掛かったころ、スタッフがある違和感に気づきます。

壁だと思っていた場所の奥に、不自然な空間があったのです。見積もり時には荷物が積み上がっていて確認できなかったその場所。荷物を慎重に搬出していくと、そこには驚きの光景が待っていました。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

なんと、荷物に隠されていたのは昔懐かしい「五右衛門風呂」。

窓を塞ぎ、収納スペースとして使っていたため、一見するとただの押し入れのように見えていたのです。

「まさかこんなところに…」

スタッフの間にも驚きの声が上がります。予期せぬ発見もまた、長い年月を経て開けられる空き家整理ならではの出来事といえるでしょう。

約900万戸の空き家問題と「行政の壁」

この現場には、空き家サポートセンターの理事長も訪れていました。

理事長によると、現在日本国内の空き家は約900万戸。その中には、今回のように「所有者がいても片付けられない」「相続問題で身動きが取れない」というケースが数多く存在するといいます。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

大家さんはインタビューで、「どこに相談しても解決策がなく、行き詰まっていた」と語りました。

片付けや解体には費用がかかります。しかし、そのまま放置すれば近隣への迷惑や資産価値の低下を招くことに。適切なタイミングで専門家に相談し、決断することの重要性が、この現場からは痛いほど伝わってきます。

大家さんの「心のつかえ」が取れた日

約4時間半の作業を経て、部屋の中は空っぽになりました。長年、心の重荷となっていた荷物がなくなり、がらんとした部屋を見た大家さんは、安堵の表情を浮かべました。

「私の長年の苦労も、やっと軽減する」

その言葉には、単に部屋が綺麗になったことへの感謝だけでなく、6年間抱え続けてきた責任と不安から解放された喜びが込められていました。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

一人で抱え込まず、共に進むために

動画内で語られた「全国900万戸の空き家」という数字。それは、空き家問題が決して個人の怠慢ではなく、誰もが直面しうる社会全体の課題であることを物語っています。

しかし、今回の大家さんが見せた安堵した様子と、それを支えたスタッフや専門家たちの姿は、その重荷を一人だけで背負う必要はないのだと教えてくれました。誰かの手を借りることは、自分自身と建物の未来を守るための、前向きな選択です。

機が熟したその時、プロというパートナーと共に一歩を踏み出す。そうすることで、止まっていた時間はきっとまた、穏やかに動き出すはずです。



動画:【空き家整理のリアル】6年放置された賃貸住宅の片付け事例

取材協力:「遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)」、「公式Webサイト

参考:内閣府NPOホームページ「特定非営利活動法人空き家サポートセンター」

※本記事は動画の権利者に許諾を得た上で記事の制作・公開を行っています


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